53.ミッション終了
その後は、ダークスポットで戦いに次ぐ戦い……。という訳もなく、雄大無双の聖魔力水をばら撒きに出かけるだけの簡単なお仕事になった。
それでも広大な土地だ。ブルムス、ジュードの二か国がメインになり、他三国が協力してもなお、四か月ほどかかってほぼ全てのダークスポットが浄化された。
『全て』と言い切れないのは、必ず淀みはできるからだ。だから、安全宣言が出されるようなことはない。
それでも、ダークスポットは、聖教会の預かりとして、それに協力する形で各国が軍をだして定期的に聖魔力水を撒いて出来るだけ安全に保とうと努力をしている。
そんな場所でも、商魂逞しい者たちは、未知の素材があるのでは?と、雄大の聖魔力水の入った堀の水を護身用に樽に詰めて突撃していった。淀みに耐性のあるジュード人の護衛が人気で民間交流も進みつつある。
聖魔力水が混ぜられた堀は一か月ほど放置しても問題が無い事が確認されたので、ひと月に一回、聖魔力水の瓶を届けて現地で注いでもらうことになった。
ジュード王国も外壁の外側に堀を作り同じように運用を始めた。何かあったら堀の水を撒けば大丈夫だという安心感は、長年に渡って魔物と戦ってきたジュード人にとって、神からの恵みに他ならない。
【神使の勇者・雄大様】フィーバーがえげつない。しばらくはジュードには行かんとこう!と心に決めた。
ダークスポットほどではなくても、各国にある、小さなダークスポットにも漏れなく雄大の聖魔力水の瓶が贈られた。
遠い場所で、噂に聞く浄化ではなく、身近な場所での浄化を目の当たりにして、アンチ聖教会の一派は完全に消滅した。
アンチジュードは、どうやろ?表立って声高に叫ぶような輩はいなくなった。
そしてある晩、ユリリーアスが俺と雄大の前に現れた。
「大変良くやってくれましたね」とねぎらいの言葉をかけた後、最初に言っていたもう一つのお願い事の件を口にした。
「私は、あなたが矢に射られた時に、これはもう無理かもしれないと、この世界をあきらめたのですよ。でももう大丈夫でしょう」
謎かけのようなセリフの後に、重々しい声で問いを口にする。
「雄大、あなたに問います。私は出来損ないの世界を創ったため、破壊しようかと思いました。別の世界から呼んだあなたが、残す価値があると言ってくれるなら思いとどまろうと決めていました。あなたが残すというなら、このままこの世界で生きてください。残さないというなら、私が責任をもって元の世界の輪廻の輪にあなたの魂を送り届けましょう。さあ、この世界の価値を!」
雄大は、驚きに目を丸くした後、ユリリーアスの本気の顔をみて、表情を引き締めた。
空気の読める俺は、「おい、ちょっとまて、勝手に俺の雄大だけ輪廻の輪に戻すとかどういうこと?俺の扱いは?」と思ったが口を閉じておいた。
「僕は勿論、この世界は残しておいて欲しいです。びっくりするようなことも、嫌なことも、無いとは言いませんが、それってどこでも一緒です。僕も元の世界では色々あったけど、神様がぶっ壊してやる!って思ってたら悲しいです。僕も出来るだけ頑張りますから、どうかこの世界を残してください!」と言って頭を下げた雄大。
「流石に言わせてや!雄大が頭を下げる事なんて一ミクロンもあれへんで!おい、ユリリーアス、俺の雄大に何てことを押し付けるんや。そもそも、じゃあ壊してくださいなんて言う人間じゃないって分かってて連れてきてるやろ。悪質や!」
盛大なクレームも、サクッとスルーされる。
「雄大、感謝します。これからも見守っているからね」といって消えて行った。
しばらく沈黙した後、雄大は、
「なんだったんだろう?あんまり気にしなくていいのかな?」と言った。平常化スキル高すぎないか?
「そうちゃうか?いままで通り過ごしたらいいだけちゃうか?」俺の方が、どきまぎしながらも平静を装って答えた。
俺の推しは、この世界を救ったが、あんまり気にせず過ごすようや。
「キオルはずっと一緒に居てくれる?」
「当たり前やろ!輪廻の輪にまでついて行くつもりやで!安心しとき!」と言った俺にユリリーアスが念話で、
『安定のストーカーっぷりですね。でも頼もしいですよ』と茶化してきた。
ストーカーちゃう。ファンなの。推し活中。ちょっと熱烈なだけやで!
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キオルのストーカーっぷりはこの後、学校、職場、精霊友達、お見合い?なんて場でも炸裂すること請け合いですが、それはまた今度。ひとまず、『ストーカーじゃない!ファンなんだ!』は、ユリリーアスのミッションクリアにて、完結です。
最後までお付き合いいただいて、ありがとうございました。今後の励みになりますので、良ろしければ星を寛大な心で(笑)つけていただければ幸いです。これからもよろしくお願いします!




