5.神使様
「なんと、ご不安だったことでしょう。我らが神は、少々言葉足らずでございましたか。私共が誠心誠意サポートいたしますので、これより先はご安心くださいませ」とイカロスは頭を下げた。
偉い人っぽい老人に、その信奉する神の悪口になるようなクレームを入れたことに気づいた雄大は、その言葉を聞いて、ハッとして、深々と頭を下げた。
「ごめんない!僕、嫌な事言っちゃって」
ええやん!雄大全く悪くないんやで!頭なんて下げんでええやん!
俺は頭に来たが、どうすることもできない。鼻息も荒く、雄大の肩で、足を踏み鳴らしていると、雄大にそっと地面に降ろされてしまった。
「ちょっとの間だったけど、一緒にいられて心強かったよ。ありがとう」と、お別れを言われる。
いやいや、絶対に離れる気はない!足元から一気に頭の上に駆け上がった。髪の毛にうずくまってテコでも動かない構えをとる。
「あれ?一緒に行きたいのかな?」
「まあ、可愛らしい。連れて行かれますか?」と、優しいおばあちゃんって感じの人が雄大に話しかけている。
俺はぶんぶんと首を縦に振る。
「まあ、なんて凄い。この子、言葉が分かるのね。勇者様、このリス様も神様の御使い様でしょうか?」
「どうなんでしょう?僕、さっき会ったばっかりで」相変わらず、なにも分からない事に恐縮する雄大だ。
ユリリーアスの不手際に噴飯ものだが、今は雄大の頼れる相棒のポジションをゲットできるかどうかの大事な場面だと、心を落ち着かせた。
光の精霊よろしく、光ってみせようとしたが、薄っすら光ってすぐに消えてしまった。精霊としての力が溜まっていない感じだ。
「今、一瞬でしたが光りましたよね!やはり神使様ではないでしょうか。神使である光の精霊様が、勇者様の為に現世で体を得られたのでは?」
「まあ、それは素晴らしことね。ですがなぜまたリスの御姿で顕現なさったのかしら?」
「「「さあ?」」」
神官5人は俺を見て、盛り上がったり、首を傾げたり忙しいが、どうやら、流れ的に俺は雄大と離されることはなさそうだ。よしよし。
「なんにせよ、ここで話していても仕方ありません。大神殿に移動しましょう。勇者様はこちらの馬をお使いください」と言って、馬を進められた。
「すみません。僕、馬に乗ったことがなくて……」
「……」気まずい沈黙が流れる。
まさか、『馬に乗れない勇者なんて』とか思ってる?勝手に連れてきておいて、俺の雄大に肩身の狭い思いをさせるなんて、天罰ものや!
俺が神のままやったら、あたり一面焦土と化してるところや!