47.推し活のススメ
宝の持ち腐れとはこの事か。
人に「精霊にダメ元で図太く厚かましく、お願い事をぶちかませ!」とはっぱをかけるよりも、精霊たちには推し活のススメを説くべきか?
頼まれなくとも推しの為なら、火をくぐり、激流をのぼり、魔物を倒す。それこそがファン。
俺なんか、見てみぃ。世界を渡って来とんねんで!
この美学を精霊に教えたら万事解決な気がしてきたで!
「え~、ごっほん。精霊諸君、俺は、この世界に、推し活をするためにやってきたんや。推しは当然、このプリティー可愛い雄大や。魂が綺麗すぎてこの世界の勇者に引き抜かれて連れて行かれるのを知って、俺は、自らの神の地位を引き換えにして、精霊として無理やりついて来たんや。分かるか?今でこそ雄大と会話ができとるけど、それまでは、一切会話もできず、姿も見せられず、ただひたすら一方的に見守るだけやった。それが、奇跡的にこうやって一緒に居れるんや。分かるか?この凄さが。推しをつくれば、未来が開けるんや。推しを作って、身を捧げろ!」
格好よく、長口上を締めくくった俺に、パッコーンと響く突っ込みで頭をはたいてきたのは、光の精霊王ケイティだ。
「キオル、あなたね。なんてこと教えてんのよ。みんな気にしちゃだめよ。この子はね、よその世界からきて、頭のネジがぶっとんでるのよ!」
普段ののんびり口調とは打って変わって、シャキシャキお姉さんキャラで言い放つケイティ。
「「「あ!精霊王様お久しぶりです~!」」」暢気な声で応じるジュードからきた精霊たち。
「とりあえず、場所を移すわよ」と言って、不思議空間を作り出した。
「雄大!ちょっと俺、ケイティの所、行ってくるわ~」と説明して、移動した。
*****
キオルはお気楽な様子で手を振ったかと思ったら何もない空間に精霊の靄たちと共に消えて行った。
「えっと……、ケイティって誰?」という僕の声が響いた。
キオルは、精霊との会話の通訳をしてくれていたんだけど、何故か超恥ずかしい演説を始めて、僕がいたたまれなくなった頃、ひと際輝く光の靄がキオルをひっぱたいた、ように見えた。
あの靄がケイティなんだろう。高位の精霊は異空間に個室が持てるって言っていたはず。そのケイティの所へ行くというのだから、ケイティは高位精霊なのだろう。
うむうむと考えこんでいたら、大神官様が話し出した。
「キオル様の言葉だけしか聞こえませんでしたが、精霊様は頼めば何か協力してくれそうな雰囲気に思いましたね」
「そうですわね。特にジュードの精霊様は光も闇もそろっていらっしゃるから頼もしいですわね。ブルムスにも闇の精霊様が戻っていただけいるように、神殿の立て直しなども頑張っていかなければいけませんねぇ」とマリーヤさんもしみじみ言っている。
その後は、建国祭の謁見でキオルにビビらされたり、脅されたりと散々だった三国(カシム、ロードエ、クランジ)とも同盟を結んだ。
それぞれの国の王たちは、帰国せずブルムスに残っていたのでちょうど良かったようだ。キオルに会えるかとウキウキしていたクランジ国王は、がっかりしていたけど、竜巻で吹っ飛ばされたロードエは明らかにホッとしていた。
『魔王』の称号、今後は、キオルに与えられそうかも。
*****




