23.王子様
建国祭は、大いに盛り上がっていた。
いつもは、大神殿から政治を任された為にできた国という事情から、大神殿の例大祭より派手にならないように気づかいされた祭りらしい。それが今年は、神から遣わされた勇者様がお出ましという事で、ド派手にやってもどこからも横やりが入らないと、はっちゃけているようだ。
雄大は一時間に一回、バルコニーでお手振りするという役割があるので、祭りの雰囲気を楽しむこともなく、休憩室とバルコニーを行ったり来たりしている。
イカロスは、このスケジュールを見て、流石にクレームをいれたが、雄大がいつもの、『大丈夫。頑張ります』を連発して引き受けてしまった。
今日は、王子のアルスが、妹王女たちから雄大を守る盾約だ。休憩室はアルスと雄大の二人部屋だし、甲斐甲斐しくお茶だお菓子だと気をまわしてもくれる。
「アルス王子、すみません。いただきます」と言う雄大に、
「勇者様、王子は無しでってお願いしましたよ」とアルスは微笑みながら言う。
「あ~、すみません。偉い人を呼び捨てにすることって経験なくって」
「すみませんも、なしで、ね?よろしいでしょう?」
なかなかの、人たらしの王子のようだ。
顔をほのかに染めて、もじもじしながら、
「あ、あ、アルス……」とつぶやく、俺の推しは超絶可愛い。
「じゃ、じゃあ、勇者様もやめてくれます?あと、普通に話してって王子様にお願いしてもいいことでしょうか?」
「公式の場じゃないときは、お互い普通に話そうか?いいね!」とキラキラエフェクトのかかった笑顔を振りまくアルス。
出来がいい王子という評判は伊達やないな。
バルコニーでの、王女たちを寄せ付けない巧みなさばき方も一目置ける。
歯ぎしりが聞こえてきそうな王女たちだったが、あんな姿を見せたら雄大はますます萎縮するだろう。ざまーみろ!
それにしても、出来すぎなくらいな王子さまや。
「同じ年だし、気楽にやろうね!本当なら、講習会にも一緒にどうかと誘いたかったんだけど、お勤めが一番大切だろうし、妹たちが……あんなんだしねぇ。ごめんね」と苦笑いしている。
「あ、いえ、そんな。お誘い嬉しいです。でも、ダークスポットに行く方が楽、……、大切ですから」
雄大よ。思いっきり『楽』って言うとるで。おちゃめさんめ!
「ありがとう。それにしても神使に選ばれるって凄い事だよね。この世界に永住するって聞いているけど、ご両親とか心配しなかった?」と、コミュ強のアルスが、純粋な瞳で聞いている。
分からないでもない、特殊な立場の友人が出来たら、いろいろ聞きたくなるわなぁ。でも、それ、地雷や~!
「あ、僕、両親のこと覚えてなくって……」
「そうなの?孤児かなにかだったの?」強い。この世界、魔物とかいるしか?
この手の話は、しんみりしないのか?グイグイくるやん。
 




