2.交渉
「それで?頼み事とは?」
早速ユリリーアスの前に土下座した俺は、頼み事を聞いてくれと頭を下げている。
「雄大の事や。俺もついて行く!あいつを一人にはさせへん!せやから、俺も一緒に転移させてください!」
「……。えっと、私の世界の神は私一人で十分でして、あなたの席はございません。悪しからず」すげなく断られた。
「まってって!せやったら、神じゃなくてもええし。なんか他にあるやろ?精霊王とか、大妖精とか、無理やったら天使とか神使とかでもええし!」
「ほお。私の可愛いしもべたちの大切なポジションを、「とかでもええし」とのたまうものに与えたくはありませんね」
「ごめん!ごめんって。俺はな、雄大と引き離されとうないだけなんや。なんでもかまへんから、一緒におらせてえな」慌てる俺。ユリリーアスはその美貌に怪しい笑みを浮かべて、
「そうですね。雄大には特別な使命を与えるつもりですから、光の精霊としてそばに漂うことくらいは許しましょう。それで、困りごとが発生した時に私との連絡役くらいの役には立ってもらいましょう」と言った。
特別な使命?勇者として転移先に連れて行かれるはずじゃ?
なにやら嫌な予感を振りほどけないまま、俺の体は光に溶けて、ユリリーアスの世界の空間に漂うこととなった。
なんだか一瞬だった。これが神格の違いってやつか。ちょっと凹む。
「さあ、それでは雄大君にお越し願いましょう!」
空間がピカーっと光る。凹んでいる場合じゃなかった、雄大の一生に一度の大事な場面だ、この目に焼き付けておかねば!
光が収まると、そこには、血まみれの雄大が横たわっていた。
「雄大!」駆け寄っても抱き起す腕はない。ただ、傍に漂っているだけの俺。
「雄大!」じれったくて、じれったくて、でも叫ぶしかできない。
「ちょっと落ち着いたらどうですか?彼は事故にあう運命でした。魂だけ、転移させます」と言ったかと思うと、虹色の魂が雄大から浮かび上がってくる。
事故にあう運命?力のある神にはそんなことまで分かるのか!?と愕然とする。
目まぐるしく変わる状況と次々に訪れる衝撃体験に翻弄されるが、
「彼の体は適当に私が構築します」という言葉には、脊髄反射した。
「なんやて、適当ってなんや!雄大の可愛いくりくりお目目は絶対に変えたらあかんで!18歳になっても子供っぽい顔だって本人は気にしてたけどやな、あれがええんや、可愛いマックスや!それにな、ちょっと低いって気にしてた身長もあのままでええんや。背の高い友達に髪をくしゃくしゃってされた時のあれ、最高やねん!~~~」
実体があったなら唾を飛ばして行われただろう、長い長い演説を、
「ストーカー怖い」の一言でぶった切ったユリリーアス。だが、面倒に思ったのか、雄大を完コピした体を作ってくれた。
わりかし、ええやつかも。