17.ブラッド・ブルムス
夜になって王が談話室にやってきた。
金髪碧眼、背が高くて男前の42歳。王でなくてもモテにモテそうな男だ。
それにしても金髪、銀髪、明るい茶だの赤だのと、明るい髪の色だらけの国だ。
俺の雄大はふんわり黒髪。ユリリーアスは黒の超ロングストレート。さっき会った精霊ケイティも黒のウェーブヘアだった。神様界隈は黒って限定されているのか?
雄大は神枠だから違和感ないな。さすが俺の推し。
そんな推し、雄大は、王に跪かれてカチコチになっていた。
俺は頬と頬をくっつけてスリスリしてやった。俺で癒される推し、で癒される俺。もはや無限ループ。
「大神官様、勇者様。私の不始末で、今回の襲撃があったと判明いたしました。如何様にもご処分を」とブルムス王。
「まずは、話を聞こうか」イカロスの言葉で全員着席して、長い話し合いが始まった。
どうやら、ソフィ第二王妃が王族だけの極秘事項を故郷のロードエ国の使者に話したようだ。
王曰く、ソフィはお世辞にも優秀とは言い難い人物なので、謀に手を貸したというよりは、使者の誘導に乗せられて話してしまったのではないかという。
今後は使者共々監視対象に入れることと、重要事項には一切関わらせないと約束をしているが、俺としては全く納得がいかない。
雄大に矢が刺さったシーンを思い出すだけで、しっぽが膨らむ思いや!
あんな事は二度とあってはならないし、情報を漏らした人間がのうのうと生きているとかあり得る?いや、あり得へん。
俺が脳内でロードエへの報復をシュミレーションしている間にも話し合いは進んでいる。
反教会勢力の勢いは止まらず、クランジ国、カシム国、ロードエ国、つまりはブルムス聖教国以外のすべての国は、アンチ聖教会、アンチジュード王国で結束を固めつつあるようだ。
「第二妃として娘を嫁がせたロードエは大丈夫だと思っていた私が甘かったのです」と項垂れる王を見る皆の目は冷たい。
イカロスたちは、極秘事項は精鋭の5人だけ、厳重に隔離された談話室で行っているというのに、アホな女が極秘情報に触れることが出来る王宮が唯一のパートナーだって。なんの冗談だか。
「ブラッド・ブルムス。あなたの脇の甘さに思う所はありますが、今現状、ユリリーアス神からの『人類みなで魔物を減らせ』というお言葉に適っていないのは我らも同じです。今後は唯一の希望である、勇者様の、絶対の安全を担保しつつ、魔物討伐を進めていきます。王宮からも支援を出していただくことになるでしょうが、情報の管理は、分かっていますね?」
「はい。勿論、万難を排して事にあたります」
どうやら、王はちょっと甘ちゃんなだけで、問題なさそうや。
これだけ、周辺国と対立姿勢がはっきりしたなら、今すぐ他国との政略結婚がどうたらという話は進まないだろうが、雄大の優良物件度合いが高まったのは確かだ。
細々した詳細まで話が固まった後、王は、
「勇者様。まもなく建国祭がございます。神が遣わしてくださったあなた様をぜひともこの機会に王宮にて国民にお披露目させてはいただけませんか?反対勢力への牽制になり、聖教会勢力の巻き返しをはかるよい機会にもなるかと思います。いかがでしょうか?」と雄大に話しかけた。
「あ、僕、みなさんの役に立てるなら頑張ります。で、でも、僕、平民なので、お姫様たちとは話が合わないかなって……、そう思います」尻すぼみになりながらも、言うことは言った。
俺の雄大は頑張った!
王は、ちらりとイジーの方を見ただけで、深くは突っ込まず、
「心得てございます」とだけ言って頭をさげた。




