16.精霊友達
とりあえず、王が味方かどうかだ。そこを疑っていては王宮なんぞに雄大は行かせられない。
幸い皆も同じ意見だったようで、まずは王とだけ、秘密裏に会談することとなった。
談話室の近くにある秘密の部屋の隠し扉の向こうは、王宮の王専用の小部屋に繋がっているらしい。そこに合図を置いておくと、その晩、王がやってくる仕組みだそうだ。
昔作ったシステムなんだろう、当時の上下関係がはっきり分かる。
今の王が、このような呼び出し方法を良しとしているかは、今晩の会談で分かるだろう。
単純な光の精霊としてなら、神出鬼没でスパイ活動ができたのだろうが、いかんせん、リスの実体を持っている今は動きがかなり制限されている。幽体離脱よろしく、出たり入ったり出来れば都合がいいのだが、それが出来ない。神力が戻れば出来るのかもしれないが、戻ったなら神力は念話に使いたい。
推しとの会話!最優先!
でも、雄大の為なら……うぬぬぬ~!とやっていると、
「私が見てきてあげようか~?」と、少女の声が頭上からする。見上げると、ふんわりウェーブの黒髪をなびかせた少女がクスクス笑いながら浮いている。
「うわー!なに?光の靄?」と雄大が驚いている。
「光の精霊様です!」とイジーがすかさず訂正した。
「光の精霊様!こんにちは、はじめまして山内雄大です!」と雄大は礼儀正しく頭を下げた。
「うふふ。こんにちは!」と少女は返すが、雄大達には声が聞こえていないようだ。どうやら少女の姿も、光の靄としか認識出来ていないようだ。
俺が光の精霊だと認識している雄大達は、俺の仲間が、話がしたいとやって来たんだろうと思ったのか、隣の部屋に案内されて、ごゆっくりお話しくださいと言われてしまった。
「俺の言葉って分かる?(きゅっきゅうきゅー?)」
「ええ!分かるわよ~。精霊同士じゃないの」
「そうなんや、良かった。この世界で精霊って初めて見たわ。人類にはモヤっとしか見えへんし、話されへんねんなぁ」
「モヤっとも見えないわよ、普通はね。隣の部屋にいる人たちには、見せようとして出てきたら見せられるの。ユリリーアス様の寵愛の厚いものばかりだから特別なのよ~。ま、でも光って見せられるだけで、会話はできないけどね。寂しいでしょ~。それに、闇の精霊は一般人に目の敵にされて、居づらいって言ってどんどんジュード王国に移住しちゃったでしょう。最近では、闇のパートナーがいないと力が思うように振るえないからって、光の精霊も移住するものが出てきちゃって~、」
おしゃべり好きな精霊のようで、どんどん長くなりそうなので、申し訳ないが、ぶった切った。
「そうなんや。で?スパイ活動してくれるって?」
「そうそう、王宮の様子が知りたいなって話していたでしょう。私、そういうの好きかも~。王様のところがいい?それとも別の人?」
「王は今日会うからええわ。王女が二人おるんやろ。そこの情報探ってきてくれへん?こっそりな」
「うふふふふ。こっそりもなにも、あの二人は魂が綺麗じゃないし、万が一にも私の姿が見えることは無いわよ~」
そんな、システムなんや。勉強になるな。異世界にあっては、先住の者の話を聞くのが大事やったか。
雄大の為の情報が楽に手に入りそうだ。
「俺はキオル、よろしゅうたのむわ。あんたは?」
「私は、ケイティ。よろしくね」
この可愛らしい見た目の精霊が、なかなかの曲者だと知ることになるまで、あと少し。




