13.公式認定
イジーが、起きたのなら談話室にどうぞと、呼びに来た。
俺は、雄大の頭の上で光の精霊魔法を発動させた。綺麗に塞がっている腕の傷だが、跡形もなく消したかったからだ。
雄大もイジーも何が起こったか分かっていない。服に隠れた傷だから、風呂に入る時に気づくくらいだろう。
功績を誇らない男。それが俺。
さ、格好よく決まった所で談話室へ行こう。
「この度の不始末は私の責任です。責任を取って聖教会追放処分が妥当なところかとは存じますが、四面楚歌のこの状況で私が抜ける訳にもまいりません。ですので、」
「あの!ウーゾさん。処分、いりません。本当に。教会には敵がいるってよく分かったし。これから気を付けていきましょう。お互いに。ね?」と雄大はウーゾの言葉を遮って、土下座していたウーゾを立たせながら話をまとめた。
ウーゾは複雑な顔をしながらも、
「ありがとうございます。母や妻が殺されたのは、外国の神殿へ、闇の精霊の地位回復の布教に行っていた時でしたので……。まさか、大神殿のお膝元の、ここブルムス聖教国の中心地に近い森で襲撃されるなどとは、思ってもおりませんでした。私の甘さです。治癒魔法で回復できる程度の怪我で、みなが無事だったのが不幸中の幸いでした」
「治癒魔法……。僕、使えなかったですよね。僕の魔法が何を使っても聖魔法になるせいのようです。聖魔法って魔物を滅することしか出来ない魔法なんだそうです。だから僕、魔物退治以外は何のお役にも立てなさそうです。すみません」
恐縮する雄大。皆は、驚いている。
「何をおっしゃるの!?聖魔法こそが、我らに必要な魔法なのですよ。『滅することしか』なんておっしゃらないで!」
「そうです。馬にお乗せしたときにも話しましたが、ダークスポットの前線は一進一退です。あなたは希望なんです!」と、神官長マリーヤと、その補佐で雄大を馬に乗せてくれた大柄な男エンロが、すかさずフォローに入った。
いい反射神経や。推しが地の底までズトーンと落ち込む前に援護に入っている。素晴らしい二人組やな。
聖教会では、イカロス、ウーゾ、イジーは、神の声が聞ける血脈ということで別格扱いだ。なので、実質、聖教会を運営しているのは、このマリーヤとエンロなのだろう。
「きゅ~きゅっきゅきゅ!(俺とニコイチって言うてや!)」
髪を引っ張りながら、アピールする。
「あ、そうでした。僕は聖魔法しか使えないから、キオルとニコイチで、と、神様が言ってくれました」
「ニコイチ?」イカロス達には聞きなれない言葉のようだ。
「二個で一個。二人で一人?とかそんな感じでしょうか。まあ、一緒に居れば問題は無いよってことだと思います」
雄大の説明に、俺は大いに悶えた。雄大と二人で一人。やばい。
雄大が生まれてはや18年。ストーカーと言われたこともあったわなぁ。遠い目。
遂にとうとう!めでたく公式に!推しに!側にいることを!認定されたで!
「きゅっきゅーきゅきゅっきゅ!(酒やー酒もってこいや!)」
『黙れストーカー!シリアスな話しとるんじゃ、ボケ!』
俺にだけ聞こえるように、念話してきたユリリーアス。俺の関西弁がうつっている。ウケる。
今の俺は大変気分がいいので、言い返すこともしない。
大きな心で、ボケとか言われても気にせえへんよ。うはっはっはっ!
 




