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ランク戦

継環省・戦闘人材育成局・第二訓練ホール。


 


その日、訓練班全体に通達が下った。


「特例昇格評価ランク戦」実施決定。

対象:第九訓練班。

内容:模擬対人戦を通じた、戦闘力・連携力・異能制御の総合評価。

成績上位者には“実戦戦力”としての暫定認定が与えられる。


 


ホールに集められた訓練生たちの中、ざわめきが走った。

誰もが知っている。この“ランク戦”が、ただの評価試験ではないことを。


 


「……事実上の“振るい”だよ」


 


第七訓練班の上級訓練生がぼそりとつぶやいた。


 


「ここで実戦昇格の見込みがなきゃ、戦線には出られない。

 戦力に足るか、使い物にならないか……その“線引き”だ」


 


裕也の隣で、加賀谷蓮が拳を握る。


 


「チャンスってことだろ。俺は出る。全力で勝ちにいく」


 


鳴海朱音はいつになく沈黙していた。

「……蓮、あなたの“前に出る癖”、今日だけは抑えなさい」


「へいへい」


 


一方、裕也の中では“静かな炎”がともっていた。


 


(力だけじゃ足りない。今の俺は……どこまで通用する?)


 



 


ランク戦は個人戦と小隊戦の二部構成で行われる。

第一試合は、白木裕也 vs 第五訓練班所属・一ノ瀬朔いちのせ・さく


 


「音系ね。やりにくいけど、正面から潰す」


 


朔は“空気硬化”の異能を持つ防御・反射型。

拳を振るうたび、周囲の空気が金属のように硬化し、攻防一体の戦術を展開する。


 


裕也は冷静に構える。


 


(防御型……なら、まずは距離を取って“響かせる”)


 


試合開始。


 


朔が突進。拳が空気の壁を作りながら迫る。


 


裕也は反響波を展開し、**“干渉空間”**を構築。

そこに入った瞬間、朔の動きが一瞬だけ鈍る。


 


「——遅い!」


 


裕也のステップが切り込む。

すれ違いざまに、低音の波を打ち込むと、朔の体がぐらついた。


 


「なっ……」


 


「《音律干渉》——」


 


一拍遅れて、鋭い無音波が朔の耳と脳に衝撃を与える。

反応が鈍った隙を逃さず、裕也は一気に間合いを詰めた。


 


「“音”が読めた時点で、もう勝負は決まってる」


 


そのまま背後を取り、反響の“刃”を首元に突きつけた。


 


試合終了。


 


静寂の後、観戦者たちの間にざわめきが走った。


 


「アイツ……あれが訓練班か?」


「動きの読みが早すぎる……完全にプロの領域だろ」


 


裕也は静かに息を整える。

確かに、初めて「自分の異能で“戦った”」と実感した瞬間だった。


 



 


その後、朱音も勝ち進み、シンは惜しくも初戦敗退。

だが、それぞれの異能特性が評価され、第九訓練班全体の実力が認知され始めた。


 


ランク戦後の控室で、蓮がふと呟いた。


 


「……なあ、裕也。あの災異、あん時のお前……

 なんか別人みたいだったよな」


 


裕也は答えない。


 


心の奥に、ずっと残っている違和感がある。


——戦うたび、何かの“旋律”が、自分の中で覚醒していく。


 


(俺の力は、本当に“自分のもの”なのか……?)


 


だが、その答えはまだ遠い。


 


今はただ——この戦場に、音を残すしかない。

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