対戦の影
ランク戦まで残り数日。
裕也は訓練場で一人、音の感覚を研ぎ澄ませる反復練習を行っていた。
《裂羽》を握り、振り抜くたびに床の振動を拾い、空気の微細な波を感じ取る。
スピードだけではなく、間合いと反響の精度を高める訓練だ。
黒瀬が背後から声をかける。
「調子はどうだ?」
裕也は振り返り、息を整えながら答えた。
「順調です。音の感覚は昨日より確実に掴めてます」
黒瀬は視線を遠くに向け、低く言った。
「ランク戦、甘く見るなよ。お前の対戦相手は、単なる新人じゃない」
スクリーンに映された映像。
そこには、他班の異能者たちの動きが解析映像で流れていた。
鋭い反応速度、異なるタイプの異能、戦術的に連携するチーム——どれも新人レベルを超えていた。
「……俺、どう戦えば……」
裕也の胸に不安がよぎる。
黒瀬は少し間を置き、口角を上げた。
「——音を感じろ。お前の異能は速さだけじゃない。反響する自我と音律干渉だ。敵の動き、心の動きまで、音は逃さない」
裕也は頷く。
(そうだ……俺は一人でも、音で戦える。相手の異能も、間合いも、全部——響きで掴む)
そのとき、隣で少女が笑った。
「白木、楽しみにしてるよ。初戦でどこまで行けるか」
軽く肩を叩かれ、裕也は無言で微笑む。
——ランク戦は、ただの試練じゃない。
自分の音と、自分の限界を試す場でもある。




