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響きを合わせる

 暗闇の訓練場。

 少女の靴音、青年の踏み込み、そして迫るターゲットの金属音が入り乱れる。


 裕也は耳を塞ぎたくなる衝動に駆られた。

 (音が、多すぎる……俺一人なら整理できるのに……!)


 次の瞬間、青年の声が飛ぶ。

「白木! 右、抑えろ!」

 反応が遅れ、また仲間が庇う。

 鈍い衝撃音。青年が膝をつきそうになる。


 少女が苛立ちを隠さず叫ぶ。

「合わせろって! あんた一人で戦ってんじゃないんだよ!」


 その言葉に、胸の奥が強く揺さぶられた。

 (……俺は、また一人で戦おうとしてる……?)


 深く息を吸い込む。

 雑多に思えた音の群れを、改めて聴き直した。

 少女の靴音は細かく軽いリズム。青年の動きは重く、間を取るリズム。

 そしてターゲットは無機質で乱雑なノイズ。


 (これは……合奏だ。俺の音だけじゃなく、三つの音が混ざって——響きを作ってる)


 瞼を閉じ、響きに身を委ねる。

 少女の足音に合わせて踏み込み、青年の衝撃に合わせてタイミングをずらす。

 その瞬間——動きが自然と流れに乗った。


 「今だ!」

 少女の声と同時に、裕也は音を操る。

 ——《音律干渉》。

 少女の蹴りの衝撃音を増幅させ、ターゲットの体勢を崩す。

 そこへ青年が盾のように押し込み、最後に裕也が無音の一撃で仕留めた。


 ターゲットが崩れ落ち、訓練場に静けさが戻る。


 少女は汗を拭いながら笑った。

「やればできるじゃん」

 青年も短く頷く。

「ようやく噛み合ったな」


 裕也は肩で息をしながらも、心の底に奇妙な充足を覚えた。

 (……俺は、一人じゃない音の中で……動ける)


 黒瀬が低く呟いた。

「そうだ。それが“連携”だ。孤独な音は響かねぇ。——覚えとけ」


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