連携という壁
翌日。訓練場に入った裕也は、見慣れない二人の隊員と向かい合った。
一人は小柄で素早そうな少女、もう一人は背の高い青年で、手には模擬武器を持っている。
黒瀬が無造作に指を鳴らす。
「今日からは“連携”だ。お前一人じゃねぇ。仲間と呼吸を合わせて敵を落とせ」
裕也は眉をひそめる。
「仲間……?」
「そうだ。敵は三体。制限は昨日と同じだ。
足枷、視界の制限、暗闇。そして——仲間の動きを乱せば失格だ」
少女が軽く手を上げた。
「わたしは速攻型。囮もやる」
青年は短く名乗る。
「俺は防御寄り。時間を稼ぐ」
二人とも、既に呼吸を合わせる準備ができているようだった。
開始の合図と同時に、闇の中からターゲットが襲いかかる。
少女が先陣を切り、青年がその後ろで壁のように立ちふさがる。
裕也は……足が止まった。
(どう動けば……)
これまで、自分の音だけを頼りに戦ってきた。
だが今は、仲間の足音、息遣い、武器の風切り音。
それらが混ざり合い、正しい軌道を見失わせる。
「白木! 左に一体!」
少女の声が飛ぶ。
だが裕也は反応が遅れ、青年が身を張って受け止めた。
鈍い衝撃。青年が呻く。
黒瀬の声が闇に響く。
「一人で速くても意味はねぇ。連携は音の重なりだ。響きを無視する奴は、必ず孤立する」
裕也は拳を握りしめた。
仲間と呼吸を合わせる——それは、彼にとって最も苦手なことだった。




