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もう一つの視点

 模擬戦場の終了音が響くと同時に、裕也はその場に膝をついた。

 肩で荒い息をしながらも、最後まで立っていられたことに安堵する。


 神代がゆっくりと歩み寄る。

「……最後の二手は悪くなかったな。だが——」

 言葉を切り、冷たい目で見下ろした。

「予測に頼りすぎれば、予想外の動きに弱くなる。常に“もう一手”の余裕を持て」


「……はい」

 裕也は息を整えながら短く返事をする。


 その背後から、別の足音が近づいた。

 現れたのは、長身で無精ひげを生やした男——漆黒のジャケットを着た、教官の一人だった。


「おい、神代。このガキ、俺に貸せ」

「……お前が?」

「スピードだけじゃ伸びねぇ。動きを殺す訓練も必要だ」


 神代が渋い顔をするが、男は構わず裕也に視線を向けた。

「白木裕也だな。明日から俺の課題を受けろ」


「……課題、ですか?」

「“速さを封じられた状態”で戦う。足も封じるし、視界も制限する。お前が本当に生き残れるか試してやる」


 不穏な言葉に、裕也の背筋がわずかに冷える。

 しかし、その男の眼差しは、奇妙な熱を帯びていた。


 訓練は、まだまだ終わらない。


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