早さの代償
模擬戦場の照明が一斉に落ち、薄暗い赤光が広がる。
耳障りな駆動音とともに、六体の人形兵が円を描くように裕也を取り囲んだ。
「今回は連続戦闘だ。倒した瞬間、次が襲う」
神代の声は淡々としている。
「休む暇はない。——始めろ」
号令と同時に、一体が正面から突進してきた。
裕也は左に身をかわし、背後を取って斬りつける。
——だが、その瞬間、右側から別の一体が腕を振り下ろした。
「っ……!」
反射的にしゃがみ、刃を突き上げて防御する。
金属と金属が衝突し、耳鳴りが走る。
速度で翻弄する戦い方は有効だ。
しかし、視界の外から同時に攻められると、回避に意識が割かれ、攻撃の精度が落ちる。
三体目が足元を狙い、四体目が肩口へ跳びかかる。
裕也は無理に回避しようとして着地が崩れ、呼吸が乱れた。
「……はぁ……っ!」
額に汗が滲む。速度を維持するために、心拍も酸素消費も限界に近づいている。
神代の声が飛ぶ。
「速さは刃だが、同時に鎖にもなる。——お前は、自分を追い詰めすぎている」
その言葉が、戦場の空気をわずかに変えた。
裕也は一瞬目を閉じ、次の動きの予測に集中する。
動き出す前に、敵の配置と次の軌道を——頭で先に走らせる。
刹那、五体目と六体目が同時に襲いかかった。
裕也は一歩も動かず、タイミングを見計らって一閃。
二つの金属音が、ほぼ同時に止んだ。
——速さだけじゃない。読みと間合いも、自分の武器だ。
そう実感した瞬間だった。




