失踪者の武器
翌朝、裕也は訓練場の片隅に呼び出された。
そこには神代教官と、黒いケースを抱えた装備担当の女性・御影が立っていた。
「お前に合わせた武器を用意した」
神代が短く告げると、御影がケースを開けた。
中には、銀色の短い双剣が収まっていた。
刀身はわずかに湾曲し、刃先は鋭く、重量は極端に軽い。持ち手の中央には、振動を抑えるための特殊素材が埋め込まれている。
「名前は《裂羽》」
御影が淡々と説明する。
「スピードタイプ専用に作られた軽量武器。切れ味と耐久性は高いが、威力を出すには高速で振り抜く必要がある」
「……軽いな」
裕也は試しに握り、数度振ってみる。腕の延長のように扱える感覚があった。
「だが注意しろ」
神代が言葉を重ねる。
「この武器は、お前が全速で動くことを前提にしている。立ち止まっての打ち合いには向かない」
裕也は無言で頷くと、両手に《裂羽》を持ち、構えを取った。
その瞬間、足元の感覚が変わった。武器の軽さが、さらに動きを加速させる。
「今日からは、この武器を使った実戦形式の訓練だ」
神代の口調はいつも通りだが、その目は獲物を見据える獣のように鋭かった。
訓練場の対面に、二体の戦闘用人形が起動する。
赤い光が目に灯り、金属の軋む音が響く。
(これが……俺の戦い方を変える)
裕也は深く息を吸い、次の瞬間、地面を蹴った。




