戦闘データ
模擬戦から数時間後、裕也は訓練施設の解析室に呼び出された。
壁一面のスクリーンには、先ほどの模擬戦の映像が何度も再生されている。動きはすべて数値化され、速度や反応時間、攻撃精度まで細かく表示されていた。
「お前の移動速度は、新人の中でもトップクラスだな」
教官の神代が淡々と言う。短く刈り込んだ髪、鋭い目つき。言葉に余計な飾りはない。
「だが——速さに頼りすぎだ」
神代は指で画面を示す。
そこには裕也が二階堂の拳を避けた直後、距離を取りすぎて反撃のチャンスを逃す瞬間が映っていた。
「スピードタイプの弱点は、空振りした時の隙と、攻撃の軽さだ。お前の一撃は当てやすいが、止めを刺せるほどじゃない」
裕也は無意識に拳を握る。
「……じゃあ、どうすれば」
「二つだ。まず、一撃の質を上げるために全身を使う打撃を覚えろ。次に、速さの中で“間”を作れ。止まる勇気があれば、相手の動きはもっと読める」
スクリーンが切り替わり、分析データが赤と青のラインで示される。赤は攻撃機会、青は無駄な移動。その差は予想以上に大きかった。
「明日からは座学と体術訓練を組み合わせる。——お前に求めるのは、速くて重い、そして読めない動きだ」
教官の声には妥協がなかった。
裕也は静かに頷き、心の中で決意を固める。
(速さは俺の武器だ……でも、それだけじゃ足りない)




