模擬戦の洗礼
訓練場のアリーナに、観客席のように並んだ隊員たちの視線が集まっていた。
今日の裕也の課題は、初の模擬戦。相手は同じ新人班の中でも屈指の実力者——二階堂。武骨な体格と鋭い眼光、持ち前の膂力が売りのパワー型だ。
「お前、速いって話だが……そんなもん、ぶっ飛ばせば終わりだろ」
二階堂が不敵に笑い、両腕を鳴らす。
開始の合図が鳴った瞬間、裕也は床を蹴った。
視界が一気に流れる。高速移動からの斬撃——しかし二階堂は予想以上に反応が速い。分厚い前腕で刃を受け止め、そのまま押し返す。
(硬い……! しかも、押し負ける!)
裕也は力比べを避け、旋回して死角を取ろうとする。しかし二階堂は地響きのような踏み込みで追いすがり、拳を叩きつけてきた。風圧だけで頬が切れる。
「どうした? 速さだけじゃ勝てねぇぞ!」
——その瞬間、裕也は一歩引いてから大きく踏み込み、二階堂の攻撃の間合いをギリギリで回避。すれ違いざまに【音律干渉】を発動し、二階堂の足元で床板をわずかに震わせた。
その微振動が一瞬だけ体勢を崩し、裕也の回し蹴りが脇腹に突き刺さる。
二階堂は呻き声を上げつつも踏みとどまった。
審判役の教官が手を挙げ、
「そこまで!」
勝敗はつかず、引き分け扱い。
しかし周囲からは「やるじゃねえか、新入り」といった声が漏れた。
裕也は肩で息をしながら、心の中で拳を握った。
(速さだけじゃない……技術も身につけなきゃ)




