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夜の屋根上
夜風が頬を切り裂くように冷たい。
裕也は瓦屋根を蹴り、闇の中を一直線に駆け抜けた。
背後では、赤い目を光らせた災異が屋根を破壊しながら迫ってくる。
金属の脚が瓦を粉砕するたび、火花が散った。
(速さじゃ……負けてねぇ!)
裕也は意図的に屋根瓦を踏み外し、破片を舞い上げる。
その音を複製し、あたかも左右に分身したかのような錯覚を作った。
災異の足が一瞬、迷う。
その隙に裕也は左へ大きく跳び、屋根の稜線を滑るように降下した。
下には細い路地。
裕也は壁を蹴って反動を得ると、その勢いのまま裏通りへ飛び降りる。
着地と同時に、右手の木刀に微細な音を溜めた。
《音律干渉》——災異の金属装甲の振動数を乱し、脆くする。
次の瞬間、屋根を突き破って降りてきた災異の肩を狙い、渾身の一撃。
金属が悲鳴を上げ、装甲が剥がれた。
「……通った!」
だが災異は怯まず、長い腕を振るい狭い路地を塞いだ。
赤い光が、獲物を逃すまいとじっと裕也を照らす。
(こいつ……倒し切らないと終わらねぇ)
裕也は再び構えを低くし、足先に全身の重心を乗せた。
鼓動が速くなる。耳の奥で、自分の呼吸と敵の振動音が混ざり合った。
——勝負の間合い。
「来い……!」
闇の中で、二つの影が同時に動いた




