廊下の死闘
刃の軌跡が闇を裂く。
裕也は腰を沈め、刃の下を滑るように回避した。
(速い……! でも、負けるか!)
足音を意図的に複製し、左右から迫るような錯覚を作る。
敵は一瞬、目線をずらした——その瞬間、裕也は床を蹴った。
木刀の先が敵の脇腹を狙う。
しかし金属の装甲が弾き返し、衝撃が腕に響いた。
「硬ぇな……!」
敵は無言のまま左腕を振るい、壁ごと裕也を押し潰そうとする。
ギリギリで横に跳び、廊下の端へ転がった。
(攻撃は単調……だが、一撃が重すぎる)
相手の刃が床を削り、火花が散る。
その瞬間、《音律干渉》を発動——刃の振動を一瞬だけ崩し、切断力を奪う。
「……!」
敵の動きがわずかに鈍った。
裕也は間合いを詰め、側頭部へ渾身の蹴りを叩き込む。
金属音と共に敵がよろめく。
だが次の瞬間、背後の窓が割れ、もう一体が飛び込んできた。
「二体……!?」
狭い廊下で二体の災異が挟み込む。
息が白くなるほどの緊張感。
(……突破口を作るしかない!)
裕也は深く息を吸い、全身を低く構えた。
「——全部、振り切る!」
足元の床板が軋み、次の瞬間——残像を残して前方へ疾走。
一体目の脇をすり抜け、後方から首元へ木刀を叩きつける。
金属が軋む音と共に、一体目が膝をつく。
二体目が振り向くより早く、裕也は廊下の窓を蹴破り、夜の空気へ飛び出した。
背後で、赤い光が追ってくる。
(まだ……終わってねぇ!)
裕也は屋根を駆け、追撃をかわしながら暗闇の中へ消えた。




