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追跡者たち

翌朝。

訓練棟の第七演習場。


 


「もっと速く! 足が鈍ってるぞ!」


久世の怒号が響き、裕也は息を切らしながらも動きを止めなかった。

今日は機動戦特化の模擬戦。敵役として訓練生二名と同時に戦っている。


 


裕也は瞬間的に床を蹴り、二人の間をすり抜ける。


(正面突破は無理——なら、音で惑わせる!)


 


《反響する自我》を発動し、床の足音を複製して左右から迫るように響かせる。

敵役が一瞬、動揺した隙に背後へ回り込み、木刀で肩を叩いた。


 


「一本!」


 


久世が腕を組み、ようやく口元を緩めた。


「……よし。動きは悪くない。だが昨日の件を忘れるな。実戦じゃ相手が何を仕掛けてくるか分からん」


 


裕也は頷いたが、頭の中では別のことを考えていた。


(もし、相手がまた“あの方法”で能力を封じてきたら……?)


 



 


同じ頃、街の外れ——廃工場群。


黒いローブをまとった二人組が、地図を広げていた。


 


「宿主はここ、中央区の訓練施設にいるらしい」


「警備は?」


「厳重だが……夜間なら侵入経路はある。問題は、迎撃班が動く前に確保できるかだ」


 


二人の背後には、鉄骨の影からゆっくりと姿を現す金属の災異。

その目の奥に宿る赤い光が、不気味に明滅していた。


 


「……命令は“確保”か?」


「いや——」


闇の奥から、別の声が割り込む。


「生け捕りは不要だ。優先は排除だ」


 



 


夜。

裕也は食堂で夕食を終え、寮の廊下を歩いていた。


窓の外には、いつもより濃い闇。

その中で、一瞬、赤い光が瞬いた。


 


(……今の、何だ?)


 


警戒心が全身を駆け巡る。


次の瞬間、窓ガラスが粉々に砕け、黒い影が飛び込んできた。


 


「——ッ!」


 


咄嗟に床を蹴り、廊下の端へ飛び退く。


影は人の形をしていたが、腕は金属の刃に変わり、床を切り裂いて迫ってくる。


 


(……来やがった!)


 


裕也は反射的に《音律干渉》を発動し、刃の振動を乱して軌道をずらす。

だが、相手はすぐに立て直してきた。


 


「宿主——排除」


 


あの声だ。

胸の奥に、冷たい何かが広がっていく。


 


(……逃げ場は、ないか)


 


裕也は構えを取り、全身の力を解き放った。


「来いよ……!」

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