表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/45

狙われた宿主

夜。

市街地第三区の後方支援拠点。


裕也は応急治療を受けながら、未だに頭の奥に残る“声”を反芻していた。


 


『……排除セヨ……宿主……』


 


(やっぱり、あれは俺に向けて……)


 



 


作戦会議室では、前線班からの報告が続いていた。


「敵個体は機動性が高く、接近戦を主軸に行動。武器は両腕一体型の湾刀。通常の物理攻撃は有効だが……」


「……ただし、撤退判断が異常に早い。まるで指令を受けて動いているようだった」


 


桐生局長は腕を組み、スクリーンに映る影の輪郭を睨みつけた。


「災異に“戦術判断”……。やはりリーダー個体の存在は確定と見ていいだろう」


 


そこで、情報局員の一人が口を開く。


「……それと、被害現場近くにいた白木訓練生が、敵から直接狙われた可能性があります」


 


室内の空気が一瞬で変わった。


 


桐生「白木。何か心当たりはあるか?」


裕也「……ありません。ただ——」


 


裕也は言葉を飲み込んだ。

“宿主”という単語を口に出すことに、なぜか本能的なためらいを感じた。


 


桐生は鋭い視線を向けたが、無理に追及はしなかった。


「……まあいい。白木、お前はしばらく前線支援任務は外す。訓練と警戒に専念しろ」


 


裕也は頷いたものの、胸の奥のもやは晴れない。


 



 


その夜。

寮の屋上で一人、街を見下ろす。


 


(……宿主。あの声。そして、俺の《反響する自我》が効かなかった理由……)


 


風が頬をかすめたとき、背後から足音。


振り返ると、訓練棟の鬼教官・久世くぜが立っていた。


 


「よ、ずいぶん深刻そうな顔してるな」


「久世さん……」


「昼間の件、聞いた。お前、反応は悪くなかった。だが——」


久世の目が鋭く光る。


「相手は、お前の能力を知っていたかもしれねぇぞ」


 


裕也は息を呑んだ。


「……どういう意味ですか?」


「攻撃の“音”を打ち消す。あれは偶然じゃない。お前の《反響する自我》を封じる手段を、最初から用意してたように見えた」


 


久世は煙草をふかし、夜空に煙を吐く。


「敵が“お前を狙う理由”はまだ分からん。だが——そういう奴らは、一度狙った獲物は諦めねぇ」


 


裕也の背筋に冷たいものが走った。


 


(じゃあ……また来る、ってことか)


 



 


同じ頃——

廃ビルの地下。


金属の災異が片膝をつき、暗闇の奥にいる“何か”に報告していた。


 


『——宿主、確認。排除、未完了』


 


闇の奥から、低く響く声。


 


『……良い。まだ時期ではない。だが、確実に捕らえろ。“あれ”は我らのものだ』


 


災異の兜の奥の光が、不気味に明滅した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ