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継環省・異能ランク戦(前編)

継環省――その名のもとに異能を管理し、運用する組織には、一つの明確なルールが存在していた。


 


「異能の力は、必ず比較される」


 


そのために設けられている制度が、《ランク戦》。


異能者の能力・戦闘技術・応用性・精神耐性などを総合評価し、

S・A・B・C・D・Eの六段階で格付けされるこの制度は、

ただの名誉でも、勝ち抜き試合でもない。


 


——これは、生き残るための“現実”だった。


 



 


「今日からお前たちは“初期ランク査定戦”を受けてもらう」


 


講義棟のホール。

演壇に立つのは、継環省の査定官・神代かみしろ礼司。


黒髪スーツに白手袋、無表情の美青年。

だが彼の周囲の空気は、どこか重い。


 


「勘違いするな。これは“昇格戦”ではない。お前たちの“基準点”を決める査定だ。ここでのランクが今後のお前たちの待遇、任務内容、予算、教育内容に直結する」


 


裕也は小さく息を呑んだ。


(つまり……ここで、俺の“価値”が決まるってことか)


 


「なお……」


神代がわずかに視線を流す。


「今回は特例で、既に戦闘訓練を受けた白木裕也も査定対象に含まれる」


 


「え、もう出るのか裕也」


志摩が横で驚きの声を漏らす。


中原ミナは無言のまま、何かを読み取るように裕也を見た。


 


神代は続ける。


「初期ランクは“2対2”の小規模戦にて評価する。チーム構成はシステムによるランダムマッチング。異能の相性、戦術、個人評価すべてを記録する」


 


大型のスクリーンに、参加者とチーム名が映し出される。


《第3試合:白木裕也 × 高取カエデ vs 三木駿 × 君嶋レオ》


 


「……高取?」


裕也は首を傾げた。見知らぬ名前だ。


 


直後、声が背後からかかる。


「よろしく、白木くん。私、高取カエデっていいます。異能は《軽重環》ってやつ」


 


現れたのは、細身で物腰の柔らかい少女。


一見、戦闘向きとは思えないが——


 


「自分の周囲の“重力場”を制御する異能。スピードタイプの白木くんとは、悪くない相性だと思う」


 


(重力操作……なるほど、“加速”と“制動”が補える……)


裕也は軽く頷く。


「……頼りにしてる」


 


控え室から出ると、模擬戦区画B。

そこに立っていたのは、対戦相手となる2人の訓練生。


一人は長身の青年・三木駿みき しゅん。異能は《地鋼牙》。

地面から“金属刃”を生やす攻撃特化型。


もう一人は筋肉質な体格の君嶋レオ。異能は《音盾》。

“聞こえた音”を反射して防御力に変換する特異型。


 


「よぉ、話題の新入りじゃねえか」


三木が不敵に笑いかけてきた。


「初戦で俺らと当たるとはツイてねぇな。“自称天才”はすぐ潰れる」


 


「……自称じゃない」


裕也は淡々と返した。


 


彼の手の中で、小さな“指の鳴る音”が響いた。


 



 


戦闘開始のアナウンスとともに、視界がスモークで覆われる。


それは、音と気配の“演出”でもあった。


 


「いくよ、白木くん!」


高取の周囲に重力の輪が走り、裕也の足元の空間が一気に“軽く”なる。


「(足が……跳ねるように軽い!)」


 


白木裕也、踏み込み開始。


 


——疾走。

——音速をなぞるように。


 


その刹那、三木の異能が地面を裂く。


《地鋼牙》

——無数の金属刃が地面からせり出す!


 


(……出る!)


 


裕也は音の“乱れ”を読んで、次の一歩をずらす。


刃の狭間をすり抜け、跳躍。空中で音波を放つ。


 


《音律干渉・第四形》

——「残響檻エコー・ケージ


 


相手の周囲に反響音が乱立し、空間認識を妨害する。


そこに重力を操作したカエデが“空中制止”の状態を作り、

レオの音盾の反応タイミングをずらす。


 


(いま!)


 


《反響する自我・第一式》

——「響破きょうは


 


――衝撃音が“盾”を打ち抜く。


反射速度を超えた異能が、レオの防御を貫く。


 


審判の判断により、勝敗決定。


白木裕也、高取カエデ組、勝利。


 



 


試合後。


査定官・神代は静かに書類にペンを走らせていた。


 


【白木裕也:初期査定Bランク】


 


「ただし……」


彼は独り言のように呟いた。


「この能力。おそらく……“他者由来”」


 


——神代は気づいている。


裕也の異能が、ただの訓練生のものではないと。

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