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共鳴 ――記録と即興のあいだで

沈黙が、張りつめる。


御神楽奏が放つ“記録音”は、実戦で得たあらゆる音響戦術のコピー。

対する白木裕也は、“誰かの記憶”に宿る旋律を、無意識に呼び出しているにすぎない。


——だが、その音は「生きて」いた。


 


「行くよ、白木裕也。

 僕の音は計算され尽くしてる。再現性も、精度も、すべて君を超えてる」


 


奏が足元を蹴る。

その瞬間、周囲の空気が“音で満たされた檻”へと変化した。


 


《記録音型・音響結界〈リプレイ・ドーム〉》


 


「……反響が封じられる!?」


裕也の身体が一瞬、反応を遅らせた。


音が跳ね返らない。リズムが消える。


——それは、彼の“戦闘本能”を封じるための完璧な“無響空間”。


 


(この空間じゃ、《音律干渉》も使えない……!)


 


奏の手が素早く振るわれ、

低音を帯びた“衝撃波”が真横から放たれる。


「……くっ!」


裕也はギリギリでそれを見切り、背を低くして回避。


すぐさま逆手で床を蹴り、反転。


 


——その瞬間、ほんの僅かに空間が“歪んだ”。


 


「……あった、響きの“残り香”」


裕也の目が、ひとつの震えを捉えた。


完全な無響空間ではなかった。


誰かの“記憶された音”が、わずかに壁に染み付いていたのだ。


 


「……《反響する自我エコーセルフ》、起動」


裕也が呼吸を整え、震える床に手を当てる。


音の“記憶”が指先から脳に流れ込む。


 


――誰かが戦っていた音

――誰かが傷ついた音

――誰かが、守ろうとした音


 


「そうか……お前が、ここで戦ってたのか……」


 


“何者か”の記憶に共鳴した瞬間、裕也の背中に“もうひとつの意志”が重なった。


次の一歩。

次の呼吸。

次の跳躍。


 


全部が「誰か」と同じリズムだった。


 


「即興で共鳴を……!? そんなこと、計算できるわけが……!」


奏の目が、初めて動揺を見せた。


 


「これは“計算”じゃない。……これは、“残響”だ」


 


床を蹴る。


音が、地を鳴らす。


 


《音律干渉・型:リバーブ・カウンター》


 


拳が空気を割り、御神楽奏の肩を弾いた。


同時に、反響がドームを揺るがし、結界を崩す。


 


「ッ、しまっ——!」


御神楽が身を引くが、響きは止まらない。


裕也の足音、呼吸、心音――それらすべてが“生きた旋律”として空間に染み込む。


 


「君の音は……予測できない……!」


 


——音が破れた。

——音が生まれた。


 


そして、ふたりの戦闘は“ある一点”で同時に止まった。


 


奏が軽く息をつく。

裕也はまだ、構えを解いていない。


 


「……合格だよ、白木裕也。

 君は、継環省で戦っていける」


 


そう言って、奏は薄く笑った。


 


「次は、実地で見せてもらうよ。君の“旋律”を、世界に」

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