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封印記録 ――残響する旋律

継環省本庁舎・記録管理局。


 


裕也は、隊長代理の朱音と共に、災異関連の過去記録映像を確認していた。


「白木、お前には“例外的な閲覧許可”が出た。……これがどういう意味か、わかってるな?」


「……ああ」


 


壁一面に広がるホログラムスクリーンに、映像が再生される。


——記録日、約98年前。

都市郊外、廃棄された集落での記録。


 


荒廃した街並みの中、映像は一体の災異を映し出していた。


それは他の災異と違い、攻撃的な挙動を見せない。


むしろ、人間の子どもたちに囲まれ、歌を口ずさんでいる。


 


「……これは?」


「“善良な災異”と記録された唯一の個体。

 継環省が正式に“対話”を試みた、最初で最後の災異だ」


 


歌声は聞こえない。だが、映像に映る子どもたちは確かに笑っていた。


 


「数ヶ月にわたってこの災異は共存を試みた。

 だが——」


 


映像が切り替わる。

焼け落ちる施設、逃げ惑う職員。


 


「……同族の災異が現れた」


 


襲来した“敵性災異”が善良な災異を攻撃し、灰のように打ち砕いていく様子が記録されていた。


「この事件を以て、“災異との共存計画”は中止。

 映像も機密指定となった」


 


裕也は、画面に焼き付いた最後のフレームに目を止める。


 


——そこには、歌うように“手話”で何かを訴える災異の姿。


 


「……最後に、何か伝えようとしていた」


「その通りだ。……この映像の解析ログがある」


 


朱音は端末を操作し、古い記録を呼び出す。

そこには、災異が最後に示した“手話”の意味が記されていた。


 


 《ぼくの音を、未来に残して》


 


裕也は息を呑んだ。


それは、どこかで聞いた“音”と、重なっていた。


 


——“彼”は、ただ滅ぼされたわけじゃなかった。

 自らの音を、誰かに託した。


 


(じゃあ……それが……俺の中に……)


 


「白木、お前に問う。

 ——お前の中にいる“音”は、誰のために響いている?」


 


朱音の問いかけに、裕也は答えられなかった。


だが、心の奥で“旋律”が脈打つ。


まるで、封じられた誰かの想いが、いま目覚めを告げているかのように。

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