継がれた旋律
今日2回投稿したので明日の投稿免除してもらいます
災異《同調型》との初交戦は、
これまでのどの災異とも違う“違和感”から始まった。
「ねえ、白木裕也くん。
君の音って、懐かしいね」
——その言葉に、裕也の心臓がひとつ跳ねた。
(……何だ? 今の響き……俺の名前を……知っていた?)
「……お前……俺のことを、知ってるのか?」
少年の姿をした災異は、にこりと笑った。
「うん、知ってるよ。君の“中”にいるものも。
あの人は優しかったからね……あの“音”は、今も覚えてる」
災異は静かに手を上げた。
空間が揺れる。
何も触れていないのに、空気が一気に震え出した。
「こいつ……“自分の音”を使っていない。
——他人の音で攻撃してる」
シンが解析を叫ぶ。
「それも、白木の音波構造に限りなく近い!
こいつ、裕也の“音律”をコピーしてる!!」
朱音が咄嗟に壁を叩き、《脈爆》でノイズを発生させる。
だが災異はそれにすら“干渉”し、ノイズを旋律に変えた。
「音って面白いよね。
狂気も哀しみも、音にすれば……ほら、美しいでしょ?」
空間が反転した。
反響が逆流し、五感を狂わせる音の渦が一帯を包み込む。
(まずい……!)
裕也は咄嗟に反響の円を最大展開し、《音律干渉》を起動。
——だがその瞬間。
何かが“割り込んだ”。
(っ!?)
脳裏に、誰かの“声”が重なる。
『……君が、この時代を選んだのか……』
『なら、僕はもう……君に託すしかないんだね』
聴いたこともない旋律。
だが、体の奥に焼き付いている記憶——過去の残響。
——これは、かつて“誰か”が災異に語りかけた音。
(……この音……これは……)
次の瞬間、裕也の掌から放たれた反響波が、災異の“音波構造”を破った。
空間が一気に収束する。
災異《同調型》の身体がひび割れ、黒い波形が断裂し始める。
「君の中にある音は……やっぱり……“あの時のまま”だ……」
そう呟きながら、災異は空気に溶けていく。
◆
戦闘後。
封印区の再調査中、裕也はふと、崩れかけた壁面に刻まれた歌詞の断片を見つける。
《その音は、誰にも届かなくても——》
《きっと誰かの中で、ずっと響き続ける》
「……音が……生きてた」
それは、百年前の“善良な災異”が好んで口ずさんでいたという旋律の一節。
そして、その記憶こそが今——裕也の中に宿っている可能性を示していた。
(俺の力は、偶然じゃない。
……誰かが、“この音”を……)
——選んで、残した。
その確信が、裕也の中で芽吹き始めていた。




