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話し合い

 視察から帰って皆にお土産を渡すと、喜んでくれた。視察は楽しかったか聞かれて、鉱山の話やクラウスとドレスを買ったこと、王都で暮らしている人達の様子を見てきたこと、足湯に入ったこと等、この一週間の出来事を話した。


 皆最後まで聞いてくれて、魔物に襲われたことを話した時は怪我はしなかったか心配されたから大丈夫なことを伝えるとホッとしたり、ドレスが今朝大量に届いた理由が分かってなるほどと納得したりとリアクションもしてくれた。


 届いたクラシカルなドレスを開けて見た時は「このドレスもきっと皇女様によくお似合いになりますね。早速、明日着てみましょうか?」と中々に好評だった。


 そして次の日、クラシカルなドレスに着替えてクラウスとアルベルトと一緒にパパの執務室に行くと、三人に迎えられた。



「…俺が買ったドレスじゃないな」

「ウェザリアで買ったんだよ。気づかなかったのか?」

「それどころじゃなかった」

「変かな…?」

「どこも変じゃない。よく似合っている」

「なら、よかったぁ」



 部屋に入ってすぐ、私の服に気づいたパパは片眉を上げた。どうやら、私達がウェザリア国でドレスを買ったことを知らなかったらしい。


 不満そうな顔をしているパパに、ひょっとして似合っていないのかなと思って似合っているか聞けば、即答で似合っていると言われた。


 だから、クラウスと買ったことが気に入らないのかなと察して、これ以上機嫌が悪くならないように話題を逸らすことにした。



「今日は何で呼んだの?」

「バーネット公爵家との面会の日が決まったのでその報告です」

「おじいちゃんとはウェザリア国で会ったよ」

「伺っております。今回の面会では前公爵家当主のグレイク様と現公爵家当主のアリオス様、そのご息女のソルフィール様とお会いになる予定です」

「令嬢の歳は?」

「皇女様の三つ上です」

「…大丈夫なのかよ」

「問題ない。ソルフィール嬢は礼儀を弁えている」



 まさか叔父と従姉にまで会うと思わなくて驚いていると、クラウスが怪訝そうな顔で従姉のことを聞いていた。


 異母兄と同じような人柄かもしれないと思ったんだろう。だけど、その心配は杞憂で、パパから何も心配はいらないことを伝えられて、それならとクラウスは引いた。


 面会の日は、パパがおじいちゃんにウェザリア国の政務を任せたせいで一週間延びて、二週間後の午後に決まったらしい。


 補佐官が頭を抱えながら「前公爵様に政務を丸投げなんて…!前代未聞ですよ!」と怒っていたけど、パパは知らんぷりしていた。


 そして、お茶会の日も一ヶ月半後に決まったそうで、テーブルクロスやお茶の種類、お菓子にお花と私が決めなければいけないことがあるらしく、それは後日カタログを持って聞きに来ることを伝えられた。



「それと、これは皇女様が視察に行っていた間に決まったことなんですが、皇子様に婚約者ができました」

「は?皇帝の許しもなく?」

「そうなんです…相手はマライア・ネルソン侯爵令嬢で、皇子派の家の人間です」

「まだ俺は許可を出していないのに婚約を結んだと思っている挙句、令嬢の方は未来の皇后になるんだと言いふらしているらしい」

「許可出すのかよ」

「ネルソン侯爵家は元々潰す気でいたから一緒になってくれたのなら潰すのが楽でいいし、許可する予定だ」



 胃が痛い…と胃を押えながら嘆いている補佐官を横に、悪い顔をしているパパは許可する気満々だ。


 こっちに変なヘイトや絡んで来たりするようなことがなければ異母兄が婚約しようがどうでもいいし、異母兄の年齢で婚約者ができるのは何もおかしいことはない。


 貴族の令嬢、令息は幼い頃に婚約を結ぶことが多い。いい家の令嬢、令息を早いうちに確保して家のさらなる発展や繁栄をさせるためだ。


 だから、帝国ではデビュタントの年齢で婚約者がいない令嬢、令息は問題があるのではないかと怪訝な顔をされたりする。


 私も結婚しなくてもいいとパパに言われてする気がないから、デビュタントの時は怪訝な顔をされたりするんだろうか。


 王族相手にしなさそうな気はするけど、裏では色々言われそうだ。貴族社会ってめんどくさいことが多いなと前世のOL時代の社会を思い出して、いかにOL時代が楽だったかを実感した。



「くれぐれも元老院が騒ぐようなことをしないでくださいね」

「騒がせておけばいいだろう」

「全然よくないですよ!!会議の度に嫌味を言われますよ!!」

「その時は二度と嫌味が言えないようにするだけだ」



 白目を向いて今にも倒れそうな補佐官に、毎度毎度可哀想だと思いながら見守ることしかできなかった。補佐官に優しくすると、パパが機嫌を悪くして余計に補佐官に当たり散らすから仕方ないとはいえ、胃が穴の開きすぎでなくならないか本気で心配になった。


 もし本当に、穴の開きすぎでなくなったなんてことになったらどうしよう?


 その時に光属性の魔法を使っても遅いだろうし、カタログを持ってくるって言っていたからその時に使ってあげようかな。練習台になってと言えば、補佐官も遠慮はしないだろう。


 もう私に話すことはないのか会話の途中だったけど聞くと、最後に一つ…と補佐官から予想外の話をされた。



「護衛騎士なんですが、大魔法使い様が基本皇女様のそばにいらっしゃるのでアルベルト様以外の護衛騎士は、いつまでかはまだ分かりませんが皇后様の護衛についてもらうことになりました」

「え!?」

「どうやら、皇子派はまだ皇后様を暗殺することを諦めていないようで、お金等で懐柔されることのない信頼のできる者を皇后様のそばに置いておきたいんです」

「食事に毒が盛られていたり、食器自体に毒が塗られていたり、燃やすと有毒な煙が出る植物を香の中に混ぜられていたりしているらしい」

「殺す気満々じゃねぇか。食器類なら、レイシアに渡した毒を感知する魔道具の食器が一セット残ってるけど要るか?」

「本当ですか!?ぜひお願いします!!」

「んじゃ、取ってくる」



 自分勝手な人達がありとあらゆる手を使って理不尽にママを殺そうとしていることに、酷く腹が立った。それと同時に、私の周りが静かで平和なのはママの方に集中しているからだと分かって平穏な日々に喜べなくなった。


 護衛騎士の件は了承して、メイドの皆にも言う必要があるからアルベルトと先に部屋に戻ってメイドの皆にも言うと、残念がっていた。


 重い荷物とか運んでくれてたり、楽しく話していたから当然だよねと思いながら、私もフィリア、オリビア、グレース、ジェシカの四人がしばらくいないことを寂しく思った。

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