視察三日目
ラングフォード公爵家の別荘で身体を休ませて、起きたらまた馬車の中だった。馬車の中ということはまだウェザリア国に着いていないようだから、今日は昨日と違ってお昼前に起きれたようだ。
昨日と同じで服は着替えさせられていて、起きたことに気づくとジュースの入った小瓶とチョコパンを手渡された。
「あと二時間もしねぇうちにウェザリアに着くぜ」
「ウェザリアに滞在している間は宿を借りるの?」
「いいや、ラングフォード公爵家所有の屋敷で過ごす」
「ウェザリアにも屋敷があるのかよ」
「鉱山の管理を任せる時にいなくなった貴族の屋敷と領地を与えたんだ」
「ああ、なるほど」
そんなことをしていたんだと話に耳を傾けながらパンを食べた。別荘にいたシェフがこのパンを持たせてくれたんだろう。チョコが練り込まれたふわふわのパンは美味しくて、2個目をおかわりしてしまった。
そうして、パンを食べ終えて二人と話しているとあっという間にウェザリア国が見えてきた。
すると、二人が手早くイヤリングをつけ始めた。私にもイヤリングをパパがつけてくれて、検問のために馬車が停まるまでにバケットやらを片付けた。
そして、ナバール王国の様に検問を受ければ問題なしと判断されて許可が下りた。馬車が動き出して外の様子を見れば意外と普通の暮らしをしていた。
つい最近戦争をしてウェザリア国の王族が全員亡くなったことを知っていたから、こんなにも普通に生活しているなんて思わなくて驚いた。
「普通に生活してるんだね」
「王族がいなくなっても困らないように手は回してるからな」
「残ってる貴族は確か帝国と商談をしたりしてるよな」
「宝石関係の商談は契約がもう結ばれている。他のものも近いうちに契約が結ばれるはずだ」
そんなに話は進んでいたのか。でも確かに、帝国の領土になったんだから新しい商談の話を進めないと生きていけなくなっちゃうよね。
馬車の窓から焼いたお肉料理やスイーツ、野菜、果物に花や雑貨と色々なお店があって、それらを見ながら買い物をしたりしている人や広場で子ども達がはしゃぎ回って遊んでいる姿をボーッと見ているうちに、ラングフォード公爵家が所有している屋敷に到着した。
「すっげぇ豪華な屋敷だな」
「綺麗…」
「ウェザリアは屋敷の豪華さでその家の権力を表しているらしい。王城の豪華さを見たら分かるだろ」
「じゃあ、ここ公爵の屋敷か?」
「いいや、侯爵」
「この豪華さでか!?」
屋敷の前で馬車が停まって、馬車から降りて屋敷を見て思ったことはキラキラしているだった。真っ白い屋敷は掃除が行き届いていて、汚れている場所がないくらい綺麗で庭も庭師が丁寧に手入れしているんだろう、枯れた植物や雑草は全くなかった。
豪華絢爛という言葉がまさに相応しい屋敷で、クラウスと一緒にポケーっと眺めていると、執事とメイドの人達が屋敷から出てきた。
「お待ちしておりました。皆様馬車での移動でお疲れでしょうし、すぐにお部屋へご案内させていただきますね」
「ああ」
「お昼はどうされますか?」
「軽いものでいい。恐らく全員すぐに寝る」
「かしこまりました。では、サンドイッチをご用意させていただきます。出来上がり次第お部屋へお持ちいたしますね」
執事長であろう初老の人とパパが少し話してすぐ、部屋へ案内された。私は変わらずパパと同じ部屋で、部屋に着いてすぐにパパがメイドの人達に私を寝る服に着替えさせるよう命令した。
奥の部屋でメイドの人達にネグリジェを着せてもらってパパの元へ戻ると、サンドイッチがちょうど運ばれてきた。
水が入ったグラスを渡されて、喉を潤してからツナのサンドイッチを手に取って食べると、多くもなく少なくもないちょうどいい量のマヨネーズがいい仕事をしていて美味しかった。
「お、まだ起きてたな」
「お前は寝ないのか?」
「寝るわ。ただ、まだ眠れるほどの眠気じゃねぇから来ただけ」
「眠れないのなら目を閉じて羊でも数えろ」
「そんなので寝れねぇよ」
サンドイッチを食べ終えて、疲れ切った体を休めるために昼寝しようとパパとベッドに入れば、扉がノックされてクラウスが入ってきた。
眠気はあるけど寝るほどの眠気ではないから寝るまで話し相手になってほしいみたいで、クラウスは寝ている私の横に腰掛けた。
そんなクラウスを邪険に扱うパパに、相変わらずだと二人の言い合いに耳を傾けながら思った。
クラウスは邪険に扱われても全然気にしていないようで、パパに何を言われても居座る気満々な様子をパパも察したのか最終的に「もう好きにしろ」と言って折れた。
してやったり顔をしたクラウスは、私に何を話してほしいか聞いてきた。
急にそんなことを言われても…と困りつつも考えて、初代皇帝の話が聞きたいと言えばノリノリで話し始めた。
「イアンは争っていた国達を一つにまとめてウォーカー帝国の初代皇帝になるまでガキらしいことをあんまりしていなかったからか、皇帝になってから時々悪ガキみたいなことをしていたな。主な被害者は元老院と気に入らない貴族連中だった」
「歴史の授業では凄い人みたいな扱いされてたのに…?」
「ああ、あれな。初めて読んだ時美化されすぎて死ぬほど笑ったわ」
「えぇ……」
初代皇帝が悪ガキみたいなことをしていたなんてびっくりした。歴史の授業で初代皇帝のことを教えてもらった時は争っていた国を一つにまとめ上げて、帝国を豊かにさせた凄い人と教わったのに、美化されまくっていたなんてちょっとショック。
それでも、皆が知らない初代皇帝の一面が知られたのは嬉しくて、ワクワクした気持ちで話の続きを聞いていると、パパが静かなことに気づいた。
どうしたんだろうとパパの方へ首を向けると、なんと眠っていた。珍しい…と思いつつ、それだけ疲れていたんだなとパパの寝顔を少しの間見ていると、反対側でボフッと音がした。
何だ?と今度はそっちの方へ首を向ければ、クラウスが眠っていた。初めて見たクラウスの寝顔に、綺麗な寝顔だと見つめていると、気づけば私も眠ってしまった。




