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ティータイム

 今日もクラウスに色々と試された後、アルベルトとメイド達を引き連れて、庭園でクラウスとスイーツを味わってティータイムを過ごしていると、パパがやって来た。二日ぶりのパパに喜んで駆け寄れば、抱き上げられて頬にキスされた。



「やっとお仕事終わったの?」

「いいや。休憩しろと追い出された」

「まだ忙しい日が続くの?」

「二ヶ月もすれば落ち着く。これ以上問題が降って湧いてこなければな」



 疲れた様子のパパに、忙しい原因の何割かは私の気がした。……いや、間違いなくそうだ。


 五歳の誕生日に属性魔法と魔力量が分かってから、襲撃されて高熱を出したり、クラウスが戻ってきて魔力無感知症だと分かったり、魔力無感知症なのに光属性の魔法が使えると分かったりで、絶対裏で苦労をかけているはずだもの。


 そう考えると、とても申し訳なく思ったからチョコクッキーを口に入れてあげた。目を見開いてめちゃくちゃびっくりされたけど、大人しく食べてくれた。


だから、パパのお仕事は頭を使うし、糖分摂取してこの後のお仕事も頑張ってほしくてマカロンやマドレーヌもあーんして食べさせてあげていると、クラウスが突然魔道具を使って結界をはった。



「いきなり何だ」

「聞かれちゃマズイから遮断したんだよ」

「…シアの魔力無感知症のことか」

「大正解。結果から言えば光属性の魔法は問題なく使えそうだ。解毒までできるかは分からねぇけど、怪我は問題なく治せた。結界の方も強度をあげるよう言ってはらせてみたらバッチリ強度の上がった結界をはれていたから、ウェザリア国の奴が攫おうとしてもまず無理だな」

「何故、魔力無感知症なのに上手く魔法が使えている?」

「それに関してはハッキリとした理由は分からねぇ。本人が言うには、結界をはる時は自分を結界で覆うイメージをしているらしい。だから、具体的なイメージから上手く使えている可能性が今は一番高いけど、体が他と作りが違うからって可能性も、他に理由がある可能性も十分ある」



 難しい顔をしたパパに、また私のせいで負担をかけてしまうことになったなと顔を俯かせた。


 ウェザリア国のことや、皇妃達のことで人手が足りないのかクラウスに護衛役まで任せてアルベルト以外の騎士の皆は別の仕事をさせているみたいだし、あと二ヶ月もこんな多忙な日々が続くなんて、近いうちにパパが倒れそうだ。


 もしそうなったら、皇妃と義兄が皇帝には自分が相応しいと思わせるチャンスだと嬉々として政治に関わるか、パパの邪魔が入らないからと私に何かしてきそう。


 パパの疲れを魔法で取れたりしないかな?そうすれば、少しは役に立つからただのお荷物にならずに済むのに。


 そんなことを考えていると、急にパパが俯いていた私の顔を上へ向かせてパパと強制的に目が合った。



「今、何をした?」

「……??」

「光属性の魔法を使ったのは分かったけど、何か変化があったのか?」

「疲れが取れた」

「えっ?」



 疲労が取れたりしないかなと思ったけど、まさか本当に疲労が取れるなんて思っていなかったから、驚きのあまり声が出てしまった。


 パパは疲れが取れて驚きつつも、離れた場所に雷を落として調子がいいことを確かめていた。



「あー、なるほど。分かった」

「何だ?」

「レイシアは自分が魔法を使っていることが分からねぇから何か思ったりイメージすると魔法を使ってしまうみたいだな」

「それは、いいものか…?」

「何とも言えない。時と場合によって悪い時もあればいい時もあるだろうな」



 二人の会話を聞いて、クラウスの言う通り、時と場合によって悪い時があるのは間違いなさそうだから注意が必要そうだと感じた。

 

 パパの疲れが取れたのはよかったけど、迂闊にこういうことができないかなと想像するのは今後控えよう。まあ、パパの仕事疲れを取ることをやめる気は無いけど。



「護衛とメイドの奴らには言ったけど、魔力無感知症なのに光属性の魔法が使えるなんて、他国にとっては魔力無感知症を治すヒントになる貴重な研究素材でしかねぇから気をつけろよ」

「研究素材…?」

「具体的なイメージに加えて、体の作りが他と違うから魔法が使えているのかも、なんて思う医者や研究者は山ほどいる。そうなったら、バラすか様々な実験を行うためにレイシアを攫おうと考えるぞ」



 眉間に深いシワを刻んだパパに、また新たな問題を湧かせてしまった…と落ち込んだ。ただでさえ、皇妃と異母兄が私を殺そうとしていて、他国が誘拐計画を企てているっていうのに、研究素材として狙われる可能性があるなんて、私ならどう対応すればいいのか分からない。


 現に今、私は今後どういった振る舞いをして生活すればいいか分からなくなっている。パパ達は今まで通りに過ごせばいいと言ってくるだろうけど、私だけ呑気に過ごすなんてできそうにない。



「……やっぱり、仕事をさっさと終わらせるしかないか」

「あ?何で仕事?」

「今は離れている時間が多いからそんなバカが増えているんだろ。なら、俺がそばにいれば抑止力になるはずだ」

「まあ、確かに。お前に喧嘩売るヤツはよっぽどの死にたがりかバカ以外いねぇな」

「仕事に戻る。シア、また時間を見つけて会いに来るからもう少しだけ我慢してくれ」

「大丈夫だよ。お仕事頑張ってね、パパ」



 パパとぎゅっと強めに抱き合って、私の額にキスをすると、クラウスに私を預けて執務室に戻って行った。


 疲れが取れたからか、その足取りは軽そうだったから倒れる心配はしなくてよさそうだと安心して、ティータイムの続きを再開させた。

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