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魔力調整

 クラウスと話をしたその日の夜、パパと久しぶりに夕食を食べることになって喜んだけど、パパの顔は大分疲れていた。

 

 大丈夫かなと心配になっていると、運ばれてきた料理に早速ら貰った食器が使われていた。毒の検知をどういう風に知らせてくれるのか分からないけど、出されたってことは大丈夫なんだろうと思ってパパと一緒に食べようとしたら、ストップをかけられた。



「何故食器が変わった」

「お昼に大魔法使い様から毒を検知する機能がついた食器だと言って皇女様に使うよう渡されました」

「ああ、なるほど。シア、止めて悪かった。食べて構わない」



 びっくりした…と思いながら、改めて料理を口に運んだ。相変わらず美味しい。


 食べながらクラウスから貰った食器を眺めて、どうやって毒が盛られているか教えてくれるんだろうと考えた。一番分かりやすいのは食器の色が変わるとかだろうけど、パパと考えが似ているクラウスならしなさそう。


 考えが似ているパパに聞くのが早いかもなと思って呼びかけると、パパはすぐにアルベルトとの会話を中断してこっちを向いてくれた。



「どうした?」

「この食器毒が入っていたら教えてくれるらしいけど、どうやって教えてくれると思う?」

「毒を盛った奴の元に料理を飛ばして探す手間を省けさせるとかじゃないか?食器の色を変えるだけなんて面白味のないことをあいつはしないだろ」

「…クラウスとパパってそっくりだね」



 一緒にするなみたいな顔をしていたパパだけど、騎士とメイドの皆は頷いて同意してくれた。執事長なんて何回も頷いて同意していたから、パパとクラウスの二人で何か物騒なことでも話し合っていたんだろうなと予想した。


 その後は魔力調整の授業の話や、誘拐計画が企てられていることは事実だけど、何も気にせずいつも通り過ごすようにパパに言われて、夕食を食べ終えるとパパは執務室へまた向かってしまった。


 過労で倒れないかなと心配になりながらも私は寝る準備をして、時間になればベッドに横になって眠った。



「光属性の魔法を使う時は、相当綿密な魔力調整が必要になる。だから、まずはお前がどれだけ魔力調整ができるか把握する」

「どうやって?」

「そこに木があるだろ。あれを凍らせてみろ」



 いや、だからどうやって??と内心でツッコミながら、どうやって凍らせればいいんだろと考えた。パパもアルベルトもフィリアもジェシカも皆、簡単に魔法を使っていた。だけど、私は一度も魔法を使ったことがないから感覚的なことはよく分からない。


 そんな状態で凍らせることなんてできるのかと思いながらとりあえず、木を凍らせるイメージを浮かばせると、バキッバキッと凄い音がして小さい木が凍っていた。



「やりすぎだろ。何だこの氷山みてぇな凍らせ方は」

「魔法なんて使ったことがないからイマイチ使い方が分からないんだもん…」

「あー……だったら初歩中の初歩から入らないとか。ちょっと待ってろ」



 思っていた以上に凍らせてしまって、その場にいた皆を驚かせてしまった。私自身も驚いたけど、一番驚いていたのは意外にもアルベルトだった。


 クラウスはいいとこ取りの私だから、魔法も簡単に使えるだろうと思っていたみたい。だから、自分の中で立てていたスケジュールを組み直して、何かを取りに部屋へ戻って行った。

 

 その間に、氷山のようになってしまった氷を火属性持ちのアルベルトがせっせと溶かしてくれた。



「これを使って魔力の調整を覚えろ」

「何それ?」

「俺が作った魔力が今どれだけ流れているのか教えてくれる魔道具だ。白が少ない、オレンジが丁度いい、赤が多すぎと分かりやすいように針が示してくれる。触って魔力を流してみろ」



 手渡された魔道具に触れて魔力を魔道具に流すイメージをすると、針が一気に赤のメーターに行ってしまった。だから、今度は弱くさせるイメージをすれば少しずつ針がオレンジのメーターへ向かっていって、数分もすれば針は真ん中で止まった。



「やっぱいいとこ取りだな。もう調整ができてる」

「でも、魔力を流してる感覚なんてないよ」

「は?」

「クラウスは魔力を使う時、どんな感覚なの?」

「氷属性を使うなら冷たい感覚が体中に流れる。雷属性ならビリビリする感覚、火属性なら熱い感覚という風に分かるのが普通なんだけどな」

「別に冷たい感覚しなかったよ」

「よりにもよってお前、魔力無感知症かよ……」



 頭を抱えたクラウスに、よっぽどその魔力無感知症は深刻な問題なんだろうと察した。パパを呼びに行ってしまったし、騎士とメイドの皆の顔が心配そうな顔をしていた。



「本当に魔力無感知症なのか?」

「間違いねぇよ。氷属性の魔法を使った時に冷たい感覚なんかしなかったって本人が言ってる」

「よりにもよって……」



 クラウスのように頭を抱えたパパは、眉間に深いシワができていた。魔力無感知がなんなのか、クラウスに聞けば魔法を使うためには、自分の魔力を感知できなきゃいけないらしい。氷属性の魔法なら、冷たい感覚が強ければ威力が増すし、弱ければ威力が弱いといった具合に、その感覚で魔力の調整をして魔法を使うのが当たり前とのこと。


 だけど、私はその感知ができないから魔力の調整ができないため、魔法を上手く使うことは不可能なんだとか。



「でも、さっき調整できてたよ?」

「それは魔道具があったからだ。分かりやすい指標があったからできたことで、それがなきゃまた氷山ができあがる。試しにやってみろ」



 小さな木に向かってまた凍らすイメージを浮かばせると、バキッバキッと音をさせてさっきと同じような氷山ができあがった。


 これじゃあ、せっかく複属性の魔法が使えて魔力量が多くても宝の持ち腐れじゃないか。運命は残酷だ、酷すぎる……と悲しがっていると、アルベルトがまた氷山を溶かしてくれているのが見えた。



「魔力無感知症だとウェザリア国が知ったら誘拐計画はなくなるんじゃないか?」

「別の問題が発生する。魔力無感知症の皇女は皇帝に相応しくないと言い出すバカが現れて王位継承権争いが起きかねない」

「……魔力を自動で調整してくれる魔道具があれば解決するか?」

「そんなものあるのか?」

「作ればいいだろ。年単位かかるだろうが作れないことはない。多分な」

「だったら作れ。必要な物があれば言え。金は一切惜しまない。お前達はシアが魔力無感知症なことは絶対に隠し通せ。漏らすなよ」

 

 

 予想外の魔力無感知症だと分かったから、今日の授業は時間になっていないけど終わってしまった。パパは私を抱き上げて「何も心配しなくていい。誘拐なんかさせないし、次の皇帝はシアだ。魔力無感知症も気にすることはない」と言って慰めてくれた。

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