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改めて自己紹介

 大魔法使い様のお兄さんが帰還した翌日、パパが部屋に連れて来た。なんでも、私の魔力調整や属性魔法の使い方に、帝王学を教える講師になったらしい。本当に扱き使われていた。


 お兄さんを連れて来た後、パパはすぐに執務室へ行ってしまったからまた仕事が忙しくなったんだろう。過労死しないといいな。



「クラウス・ヴィクター。属性魔法は全部使えて魔力量も申し分ない。これからよろしく、皇女様」

「レイシア・ウォーカーです。光と氷の属性魔法を持っていて魔力量は帝国一多いです。こちらこそよろしくお願いします」

「そんなに畏まらなくていい。立場はそっちが上だからな」



 ツッコミどころがある自己紹介をされて呆気に取られてしまいながらも、何とか自己紹介をした。カーテシーをするか迷ってしなかったけど、しなくて正解だったみたいでよかった。


 改めてお兄さんを見れば、パパと同じ綺麗系な顔をしていて大変顔がいい。それに、気さくな性格なのか話しやすくて緊張がいつの間にか解けていた。


 そして、いくつか質問をしていいか聞くと、快く了承してくれた。



「お兄さんは人なのに何でそんなに長生きなの?」

「クラウスでいい。長生きな理由は魔法や魔力の研究をし続けて自分の体をいじりまくった結果、自分の時間を止めたから。初代皇帝のイアンは大激怒してたな」

「全属性の魔法が使えるって最初から備わってたの?」

「ああ、最初から備わってた。流石に他人から属性魔法を奪ってものにするなんてことはできねぇよ。できたとしても、それは禁忌に該当する」

「今までクラウス以外で全属性の魔法が使える人が生まれたことはあったの?」

「知っている中では一人いたな。環境が悪かったせいで使い潰されて結構若いうちに死んだけど」



 属性魔法を複数持っている人は希少。貴族であれば家族が守ってくれるが、平民の場合は常に身の危険が隣り合わせにあると、クラウスは教えてくれた。闇オークションで売られて、買い手先で使い潰されて死ぬのが大体らしい。



「ああ、そうだ。自己紹介ついでに言うことがあった」

「言うこと…?」

「魔法の授業は明後日の昼から毎日二時間行われる」

「毎日…?それは陛下が許可を出したんですか?」

「こいつの置かれている現状がヤバくて早急に自衛ができるようにさせたいから渋々って感じで出したぞ」

「……皇妃様がまた何か仕出かす気でいるんですか?」

「それは知らん。俺が知っているのはウェザリア国が皇女誘拐計画を企てていることだけだ」



 クラウスの言ったことに、質問していたアルベルトだけじゃなく、その場にいた全員が目を見開くほど驚いて固まった。クラウスが言っていることが本当なら、箝口令を敷かれたのに誰かが情報を他国に流したことになる。しかも、もし誘拐が成功してしまったら、私はその国で使い潰されて死ぬ。


 騎士の皆だけじゃなく、メイドの皆の顔まで険しくなってしまった。



「ただ、これからずっと毎日するわけじゃねぇから安心しろ。魔力調整の仕方を覚えて光属性が使える魔法の一つ、結界魔法が使えるようになったら週一回に切り替わる」

「あ、ずっとじゃないんだ」

「できなきゃずっとだけど、いいとこ取りしたお前ならできるだろ」

「あの、皇女様の誘拐計画はどれぐらい進んでいるのですか?」

「そこら辺は皇帝が調査中。俺はここに帰る時にウェザリア国を通ったら誘拐計画を企てていることを知っただけで、具体的なことまで知らない。分かり次第お前らに詳しい情報を伝達するだろ」



 知ってすぐに伝達しなかったということは、そこまで切羽詰まった状況じゃないのだろう。まだ計画を立てて間もない状態であれば、今すぐ警戒する必要もない。ひょっとしたら、何も分からないから調べた後に伝達する気なのかもしれないけど。


 それでも、パパが調査しているなんて珍しい。パパはまどろっこしいのが嫌いだから、国ごと消すって言いそうなのに。



「国ごと消すってパパなら言いそうなのに調査するなんて珍しいね」

「……確かに、国ごと消した方が早いな。消すか?」



 パパ二号だ、パパ二号がいる…!!そう皆も思ったのか、遠い目でクラウスを見ていた。


 まさか、パパと思考がそっくりなんて頭が痛くなりそう。思ったことを口に出したことに後悔した。


 思考が物騒な人のそばに同じく思考が物騒な人を置いちゃったら、大惨事にしかならないのに。補佐官さんがこれからもっと大変そうになったな。心の底から同情する。胃に穴が空いたりしないといいけど。



「国交問題になるからダメだよ」

「お前の誘拐計画企ててる時点でもうなってるだろ」

「そうだけど……関係ない人まで巻き込むのはよくないよ」

「それは運が悪かったで済む話。恨むなら国交問題になるようなことを企てた自国の王族や貴族を恨むことだ」



 凄い。ここまでパパにそっくりだなんて、ある意味感心してしまう。全く関係のない平民に対して運が悪かったで済まそうとするところなんて、まさにパパと同じ思考だ。


 騎士達は頭を抱えて、メイド達はドン引きしている。そんな皆の様子を見ても、クラウス本人は全く気にした様子はない。



「さて…話すことは話したし、今日はこれでお暇させてもらうぞ」

「あ、うん」

「最後に、メイドのお前」

「わ、私ですか…?」

「この食器一式を次の食事から使え。毒を検知できる」

「…!分かりました。ありがとうございます」

「また明日な、レイシア」



 一番私の近くにいたソフィアにクラウスは食器一式を手渡した後、ヒラヒラと手を振って部屋から出て行った。そして、毒を検知してくれる食器らしいけど、これも魔道具なんだろうかと食器をジッと観察していると、オリビアが魔道具だと教えてくれた。



「しかも、大魔法使い様が作った魔道具でしょうね」

「クラウスが作った魔道具ってそんなに凄いの?」

「陛下が使っている魔道具がまさに昔、大魔法使い様が作った物です」



 それはめちゃくちゃ凄い物だ。そんな凄い物を、貰っちゃってよかったのか心配になってきた。本当に使っていいのかな。


 でも、誰かが毒味をしなくて済むのは助かる。もし、私を殺すために毒が盛られていた場合、毒味役の人は死んでしまう可能性が高いから、そんなことを考えるだけで精神的が殺られそうだった。


 だから、この魔道具をくれたクラウスに、何かお礼をしようと決めた。

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