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大魔法使い様

 謁見の間へ案内する執事長の後を騎士達と一緒について行くと、パパの執務室に近い場所に謁見の間があった。


 扉を開けて中に入ればパパが奥で座っていて、横には補佐官の人がいた。パパの前には腰まである真っ赤な髪に、同じく赤い瞳の若い男の人が立っていた。



「魔力量が凄いな。お前よりあるじゃないか」

「えっ……」



 パパに向かってお前なんて呼び方、首が飛んじゃうんじゃ…!?と驚いてパパを見ると、全く気にしている様子じゃなかった。あれ??と不思議に思っていると、パパが「帝国一多いからな」と赤髪のお兄さんに教えていて、お友達かなと結論付けてパパの元へと近づいた。



「大魔法使いのことは知っているか?」

「知らない」

「初代皇帝の親友で、代々この帝国の皇帝を支えていた奴だ。全属性の魔法が使えて魔道具も作れるから好きに使うといい」

「えっ」

「おいおい、帰って来て早々に俺を扱き使う気か?」

「当たり前だろ。二百年も失踪していたんだから詫びに働け」

「にひゃくねん……??」



 このお兄さん、人じゃないの?二百年も失踪って何?どういうこと??と意味が分からなさすぎて思考停止していると、お兄さんが目の前にやって来てジッと見つめてきた。


 見つめてくる距離が近すぎて居心地の悪い思いをしていると、お兄さんはニッっと笑って「こいつは属性魔法をどれぐらい使いこなせるんだ?」とパパに聞いた。



「使ったことがないから知らん」

「は?」

「シア、部屋に戻っていい。そろそろ昼食の時間だろ」

「?…うん」



 パパの元から離れてオリビアと手を繋いだ。部屋から出る前に、お兄さんに視線を向けるとヒラヒラと手を振られたから、控え目に振り返して部屋から出て自分の部屋へ戻った。



◇◆◇



 レイシア達が部屋から出て気配が遠くなると、部屋の空気が変わった。それに気づいたブラントは嫌な予感がして、自分も一緒に出ればよかったと後悔した。

 

 

「あの子どもの前で話せねぇことってことは面倒事か?」

「俺には皇后と皇妃が一人いる。皇后との子どもが今会ったレイシア、皇妃との子どもは男でディアンという名前だ」

「その皇后と皇妃、子どもらの属性魔法と魔力量は?」

「皇后が光で魔力は俺に劣るが多い。レイシアは光と氷で魔力量は見て分かった通り帝国一だ。皇妃と皇子は風で魔力はカスレベル」

「娘の方はいいとこ取りしたな。あちこちから力や命を狙われる可能性が高いが」



 流石は大魔法使い様だ。もう大体を察している。ブラントは大魔法使いの頭の回転の速さに賞賛した。帝国の皇帝達の助けを長年していただけある。


 困り果てていた現状に、大魔法使い様が戻って来てくれて本当によかった。これで胃痛とおさらばできて、胃薬を常備しなくて済むと、ブラントは心の中で涙を流した。



「皇妃は皇子を皇帝にさせたいらしく先月、レイシアが襲われた」

「ああ、もうされた後だったんだな。何で殺さなかったんだ?」



 前言撤回。変わらず胃痛に悩まされ、胃薬を常備薬として持ち歩く日々は続きそうだ。レイビスがもう一人増えてしまった……とブラントは胃を押えて、絶望した。



「確実な証拠がない。その状態で殺したら元老院がここぞとばかりに突いてくるのが目に見えている」

「証拠がねぇなら確かに無理だな。で?何でそれとお前の娘が魔法を使ったことがないに繋がるんだ?」

「魔力調整や属性魔法の使い方を教える奴がことごとく皇妃と関係がある」

「ああ…なら、俺が教えてやろうか?」

「そ、それは本当ですか…!?」



 同盟国から魔法士を派遣させるのは手続きが面倒くさく、人格が問題ありの者ばかりで講師を見つけるのに難航していた。プライドが高い魔法士ばかりで、レイシアに失礼なことや物言いをした日には、レイビスが首を飛ばしてしまう可能性があった。


 もしそんなことになったら、国交関係にヒビが入る。だから、見つかるまでに一体どのくらいの時間がかかるんだろうと、ブラントは気が遠くなっていた。


 そんな時に、大魔法使い様がレイシアに魔力操作と属性魔法の使い方を教えてくれると言うから食いついてしまった。



「陛下、お願いしましょう!これ以上の適任者はいません!」

「……お前、帝王学は知っているのか?」

「二百年前と変わってなければ知っているな」

「今の帝王学の本を貸してやる。それを見てレイシアに教えろ」

「帝王学の講師は国に一人だけしかないのに、その一人まで皇妃の手先の可能性があったのか?」

「その…皇妃様が勝手に皇子に教えるよう命令していたんです……」

「……何でお前らはそんな奴を皇妃に迎え入れたんだ」



 ドン引いた顔をした大魔法使い様だったが、すぐに切り替えてレイシアと話す許可と、帝王学の本を持ってくるように言ってきた。


 レイビスはあっさりとレイシアの部屋へ行くことを許可して、ちょうど戻ってきたフレッドに隠してある帝王学の本を持ってくるよう命令した。



「あ、そうだ。ここに帰る時にヴェザリア国を通って帰ってきたが、きな臭い動きをしていた。気をつけろよ」

「具体的にはどんな動きだ?」

「ウォーカー帝国皇女誘拐計画」

「なっ…!?」

「やっぱりバカが漏らしたな。ブラント、誰が漏洩させたか調査しろ。バーネット公爵の連中は特に念入りにな」

「かしこまりました」



 頭が痛くなることが次々と湧いて流石のレイビスも疲れたのか、眉間を押えていた。問題が一つ解決したと思ったら、とんでもない問題が湧いてしまったから無理もない。


 ブラントも、ただでさえ多忙なのに、更に忙しくなることを想像するだけで胃に穴が空いて吐血しそうになった。


 そんな中で、呑気にしているのは大魔法使い様だった。



「お待たせ致しました。こちらが帝王学の本にございます」

「どうも。じゃ、俺はこれを今から読みたいんだが…どこで読めばいい?」

「……適当な部屋を用意してやれ」

「かしこまりました」



 眉間を押えたまま、レイビスはフレッドにそう命令して二人を退室させた。部屋に残ったレイビスとブラントは、しばらく現実逃避をした後、深いため息を吐いて執務室へと足を進めた。

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