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皺鳥③

「た、確かに肉厚になった。なったんだけど…この違いはなんだ?」


皺鳥がダン芋の砂鉄を吸って少しだけ復活した所まで辿り着いた俺は、そのまま続けてダン芋と皺鳥を水につけ続けていた。


そして今回はさらに研究を進める為に胸肉、内蔵、モモ肉、手羽、ヤゲン軟骨の5種類に分けて行った。


「胸肉、モモ肉、内蔵類はほとんどしわしわのままだ。さっきまではもう少し身が厚かったのに。でも手羽とヤゲン軟骨は結構厚くなってるな、でもまだまだしわしわの部分が目立つ…?これもしかして骨付きの肉じゃないと効果無い?」


5種類の内、切り離された肉は元のしわしわの状態に戻っていた。だが骨付きの手羽やヤゲン軟骨はそのまま順調に肉厚になっておりギリギリ食べれるかな?くらいの所まで来ていた。


「骨付きじゃないと意味ないのかな…。だけど骨付き肉の方も全ての砂鉄を吸ってるわけじゃないし、何がどうなってんだ」


皺鳥の復活にはダン芋の砂鉄が必要だという事が分かったので今回桶には各3つほどダン芋を入れて置いた。


骨付きじゃない方は水につける時間も短かったのでほとんどダン芋の砂鉄も取れておらずしわしわのままなのだが、骨付きの方は砂鉄は全て取れていた。


だが骨や肉が吸収し切れなかったのか桶にはそこそこ黒い砂鉄が沈んでいた。


「骨付き肉が砂鉄を吸うのは分かったけど砂鉄の量が多くても完全復活はしないみたいだな…え何これどうしたらいいの」


結局いくら考えても解決策が浮かばず、もうそろそろ日付を越えてしまう頃だったのでとりあえず全部の肉を纏めてダン芋入り水につけ、今日は皺鳥調理を断念する事にした。


「血…鉄分…骨…。その他にも補充しないといけないとかかなぁ」


偶然ではあるかやっとの思いで辿り着いた砂鉄という答えではあるが現状どうしようもない。

とりあえず明日に持ち越す事にした。



〜〜~


「おはようございま〜す!」


「ソラか、おはよう」


「料理長!おはようございます!」


結局あの後は良い考えも浮かばずぐるぐる考えたまま寝落ちしてしまった。

何がいけなかったんだろうか、血と言うとやはり温度…?いや温度は最初試したしなぁ。


あーでもないこーでもないと答えの出ない迷宮に迷い込んでいると、客席テーブルを拭きながら料理長が話し掛けてきた。


「ソラ、増員の話だが今日から数人忙しい時間帯だけ来る事になった。仕事の方は俺が教えるから仕込みの方はソラが教えてくれ」


「それと別枠で数人、刃草の調達をスラム街の方から雇う事にした。昼前には来ると思うから荷物の受け取り任せたぞ。賃金はこちらで払って置く」


「もう増員!?早いですね!やったあこれであのエンドレス刃草料理から解放される」


これは嬉しい、本当に嬉しい。

ここギルド酒場に空前絶後の刃草ブームが来てからというもの、仕事中はほぼ調理の作業に徹していたのだ。


ステーキを焼き、刃草を焼き、串を焼き、

合間でスープを大量に作り、同時に3つ4つフライパンを動かし何十本も串を焼き、とてつもなく大きい鍋を掻き混ぜ…。


反復横跳びしながら調理する姿はまるで分身の術でも使っているようだっただろう。

こちとら12歳やぞ…!もっと手厚くよちよちせんかい…!


まだまだ甘やかされてよちよちされて居たい現12歳の元18歳、異世界の4年分を合わせると合計22歳の俺は大いにダダをこねたいお年頃なのだ。


などと異世界の厳しさに現実逃避を決めニャンさんから甘やかされてる妄想をしていると表の方から声が聞こえてきた。


「あのー!こんにちはー!だれか居ませんか〜?」

「い、居ませんか〜?」


「お、早かったなもう来たか。スラム街の子だ、賃金を用意してくるからソラ、先に荷物を受け取って来てくれ」


噂によると料理長は子供好きらしい、いや正確には子供好きではなく子供を大切にしているようだ。

俺を拾った事についても馴染みの冒険者達は皆納得しているようで「お前が拾われた坊主か、これからよろしくな」と最初から歓迎ムードだった。


そう言えば俺は自分の事が大変で料理長の事は全然聞いたことが無いな。今度色々聞いてみるか。


「はーい!こんにちは俺はソラ、これからよろ「誰だお前!昨日のデッカイおっさんはどうした!」ひょわぁっ!?」


目の前に立って居たのは俺と同じくらいの男の子と女の子だった。

スラム街の子供達とは今までほとんど面識が無くどのような生活をしているかも全く知らない。


だがスラムの子と言っても普通に配達してくれるだけだろうと思っていたのでものすごい剣幕でこられてつい変な声を上げてしまった。


「ちょっとリク!きっとお店の人だよ、中から出て来たでしょ?リードさんも言ってたじゃない同じくらいの子が居るって」


「え?あれ、そうだっけか?あはは悪い悪い、お前もここで働いているんだな!」


「は、はひ…。は、働いてます…ソラです…!あっ、にに、荷物…!」


呂律が、呂律が全然回らない!

朝から怒鳴られる事なんて今まで無かったから完全に油断してた心臓がはち切れそう!


「どうしたんだ、何か不手際でもあったか?」


大声を聞き付けて料理長が奥から出てきてくれたようだ。

さすが料理長、子供の声にはかなり敏感。


「デッカイおっさん!これ、持ってきたぞ!」


「リク!デッカイおっさんじゃなくてリードさんだよ、ちゃんと名前で呼ばなきゃ」


「はは、君はリク、そっちはレイルーンだったな。配達ご苦労様。報酬の銅貨5枚だ」


どうやらこの子達の名前は男の子がリク、女の子がレイルーンと言うらしい。刃草の配達1回に付き銅貨5枚という契約みたいだ。


相場は分からないがなかなかの量運んで来てくれてるみたいだ。これはかなり助かる。

いつも冒険者達が勝手に持って来てはその辺にポイと投げ置いていたので回収しながら仕込んでの繰り返しだったのだ。


大きめの箱に目一杯刃草が詰まっているのだが3本くらい1束にして長めの草で縛られていた。

ん?あれは草…なのか?所どころに豆みたいなものがついてるような。


「料理長、この刃草に巻き付いている草?豆?これはなんですか?」


「ん?これは粉豆だな。主にダンジョンに居る鎧猪や皺鳥たちが主食にしている物だ」


料理長曰くダンジョンに住むモンスター達はダンジョン内で食事をするらしい。


その昔モンスターが食べれるならとこの粉豆わ食べてみたんだが粉がボソボソするわ石みたいなのがジャリジャリするわで食えたもんじゃなかったみたいだ。

食用では無いがツタがかなり長いからこうやって縛ってくれたんだろう。


料理長の話によるとこの粉豆は食えないとの事だが…。

いや、こいつ食える気がするぞ…?


「料理長!昨日の内にダン芋とか色々仕込みは終わってるのでちょっとこれ使って料理してきますねー!」


「おいソラ!まだこの子たちの紹介が…まぁ明日でもいいか」


料理長が何か言ってるような気がしたが荷物の受け取りも済んだし仕込みもあらかた終わっている(はず)。昨日の調理の続きをしよう!


皺鳥、ようやくお前を調理する時が来た!


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