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刃草①

初投稿!

全然誤字脱字あると思いますがご了承くださいm(_ _)m

俺の名前は高坂 空。ここじゃソラって呼ばれている。

4年前、突然異世界に転移した俺は空腹で市民外の路地裏で死にかけていた。

そんな俺を拾い育ててくれたのは冒険者ギルドの酒場を切り盛りしてる料理長リードだった。


料理長は強面であまり喋る人では無い。

だが心は優しく困ってる人にはこっそりと飯を食わせるくらい情の厚い人だ。

俺もこれに助けられ今では酒場で働いている。


情に厚く、身寄りの無い俺を拾い育てるくらいに誠実で、真面目な料理長。だがしかし料理の腕はそこまで優れたものでは無いようだ、元々料理の道に進んでいた訳ではなく昔は冒険者をしていたらしい。


本人はあまり語りたがらないが、冒険者をしていた頃はもうすぐでA級に届くくらいの凄腕で、人望も厚かったようだ。

だがやはり無口と言うのと現役の冒険者では無いからか、料理長はよくゴロツキ共に絡まれる。


表情がいつも真顔に近いからゴロツキ共からすると睨まれてるように見えるんだとか。

本人曰く「俺はあいつらの装備などを心配しているだけだ」とのこと。

顔が怖い自覚は無いらしい。


そんな人がなぜ今ギルド酒場の料理長をしているかと言うと、冒険者時代に食あたりが多すぎたのが理由だそうだ。


この世界の食事事情ははっきり言ってレベルが低い、ただ焼いて食えればいいと思っているんじゃないかと思うほどだ。


衛生観念もほとんど無いに等しい、森やダンジョンから帰って来たままの手で食事をしたり、見た限りほぼ毎日野菜を食ってないような人もいる。なのでよく腹を壊したり多くの人が結構な頻度で体調を崩している。


しかしこの世界の人にとってはそれも当然なのだろう。現代人が当たり前に活用している電気や水道、文明の発達していない世の中ではその日を生きる事に精一杯なのだ、医療なども発展しているはずもない。


さすがに貴族辺りになってくると専属の料理人や回復術師などがいて、衣食住はかなり清潔に保たれているみたいだ。だがそれでも元の世界の日本と比べたら雲泥の差がある。

これはぶっちゃけしんどい。


無口で強面の料理長、そして捨て子で腰の低い俺。

凸凹コンビだがそれが幸いしてかギルドの酒場は案外上手いこと回っていた。

そして4年も経てば少しずつ異世界と仕事に慣れて来て、余裕も出来てきた。


「ふぅ…、ダンジョン芋の仕込み終わりっと」


ギルド酒場は基本的に朝食のサービスはやっていない、営業開始は昼頃からだ。

冒険者達はほとんどが宿生活。低ランクの駆け出しなんかは物置や小屋などで寝泊まりする人も居たりするが基本的には宿だ。


大体の宿では朝食が出る、パンや干し肉、サラダなどだが朝に食べる分には申し分ないだろう。

冒険者は体が資本の職業ではあるがさすがに朝からガッツリ肉などは食べない。

朝食は軽く済ませ宿近くの弁当屋や露店などで昼飯、携帯食などを買い、ギルドでクエストを受注し森やダンジョンに向かう。


ちなみに最近の人気弁当はナンみたいな薄いパンにベーコンとかさ増し用のダンジョン芋(略してダン芋)のマッシュポテトを挟んだものらしい。

肉の旨味と塩辛さが芋とパンと相性が良く、とても活力が出るのだとか。

野菜?もちろん入っていない。


「ソラ、仕込みは終わったか?」


「料理長おはようございます!仕込みバッチリ終わってますよ」


「そうか、じゃあそろそろ開けるぞ」


今日は外壁工事をしていた駆け出し冒険者達の仕事がそこまで多くないらしく、早目に休憩になるとの事だ。

開ける時間も閉める時間もその日の流れ次第。これがこの世の常識。

なんならサボって奴は昼飯抜きも普通にありうる。


「おっとそうだった、夜の為にダン芋水につけとかないとだ、危ない危ない。」


日本の常識と異世界の常識は似ているようで全然違う。衛生観念や食事レベルなどもそうだがこのダン芋、なんと3時間以上水につけて置かなければ皮が一切向けないのだ。

まるで鉱山にある鉄鉱石のようで、全然刃が通らない。

いや無理に剥こうとすれば何とかなるのだが「ギャリン!ギギギギ」と言う音と共に火花が散って刃こぼれをしてしまう…。

これぞThe異世界クオリティ。


元の世界の常識と全く違っている為、働き始めた頃はダン芋を水につけておくのを忘れ料理長によく怒られた。

だっておかしくないか?芋だぞ…?

ただの皮がなぜ鉄の硬度を誇っているのやら。


だけどそれ故に興味が沸いた、普通に面白い。

ただの芋が鉄並の硬度を持つこの異世界、他にはどんな食材があるのだろうか。

聞いた話によるとめちゃくちゃ切れ味の鋭い雑草、釣ったら石の紙みたいになる魚、火を通すと凍る果実、元の世界じゃ考えられないようなものばかりだ。


実物を見てみたい所だがこの世界じゃ無価値食材と判断されておりほとんど流通してこない。

実際酒場で出してるメニューも牛や豚など家畜の肉だしな、無価値食材1歩手前のこのダン芋が食べられてる事が奇跡に近い。

…でも、何となく思う。

多分それらは食べられる…ような気がする。

何故だか分からないけどそんな気がしてやまないんだよなあ。


「こんにちは〜!誰か居ますか〜!今日の野菜持って来ました〜」


「はーい今行きまーす!」


ここギルド酒場では料理長自ら食材を選びに行く事は無く、大体のものを街の農家から配達してもらっている。

ギルドはこの世界ではいわゆる市役所のようなものであり、様々な人が出入りする関係上品物は常に一定品質の物が求められる。

奥の方にあるギルドが運営する武器屋や薬屋なども一定品質のものが揃っている。


物の価値は流通量や時価によって変動するが大体はギルドが相場だろう、間違えたくなければここを使うのが1番だ。

だけど露店には露店の良さもある、ある意味ギルドでは一定の物しか仕入れない為、流通量によっては街全体に物が多く余る事もあるのだ。


そういうものを露店商達は大量に安く買い保存しており、流通量が少ない時にギルドよりちょっと低い値段で出してくる。


するとギルドでは買われずに露店で買う人が増えてくるわけだ。

みんなよく考えるよなぁ。


「今日は丸葉類と香草ですね、間違いないですか?」


丸葉と言うのはいわゆるキャベツである。

これは特に元の世界の物と特に変わらず普通に調理する事が出来る。

香草はハーブやスパイスなどだ。


「はい、大丈夫です。あれ、これは?」


「ん?あれ、どうして刃草がこんな所に。すみませんこれこっちで捨てちゃいますね〜」


ん?刃草?刃草って言ったか?

もしかしてあの無価値食材のめちゃくちゃ切れ味の良い草の…?いや、あれはどう考えてもネギだ、根っこの部分が長ネギだ…。


「ちょ、ちょちょちょっと待ってください!それ捨てちゃうんですか?良かったら買い取れませんか!?」


「ええ?刃草ですよ、これを買い取るんですか?お金にするほどでも無いですし危ないんで捨てちゃいますよ〜。じゃ〜今日はこれで」


「待って待って!待ってください!!欲しい!どうしてもその刃草が欲しいんです!」


「うおぉっ!?ほ、欲しいって…変わってるなぁ、まぁお金を取るほどでも無いですし、どうぞ」


「こ、これが…刃草…!」


無価値食材とされほとんど流通されなかった刃草、何らかの手違いで荷物に紛れ込んでいたらしい。

配達のお兄さんはちょっと引いていたみたいだか、異世界に来てはや4年。初の無価値食材とのご対面…!


「いや…どう見てもネギだよな、葉っぱの部分は確かに硬いし切れ味良さそうだけど、この根っこネギだ。そんな匂いもする」


「どうしてネギが無価値食材って言われるんだ?元の世界じゃ焼いても薬味にしても美味かったはずだ、いやもしかしてダン芋と同じで調理方法が難しいとかか?それとも実はネギじゃないとか…!」


初の無価値食材との邂逅でテンションが上がりつい調理方について考え出してしまっていた。

見た目はまんまネギとは言え無価値食材と言われているくらいだ、葉はともかくこのネギの部分ももしかしたら食えない理由があるのかもしれない。

味なのか、調理方なのか、何故なんだろうか。

でもやっぱり…食える気がするんだよなぁ。


「何してるんだソラ、もうすぐ駆け出し共が来るぞ」


刃草、改めてネギについて色々考えて居たら思いの外時間が経ってしまっていたみたいで料理長が呼びに来た。


「ん?それは刃草か、そんなもの発注した覚えはないが」


「あぁこれはたまたま野菜の中に混じってたみたいで、捨てるようでしたから貰っちゃいました、何せ初めて見たので」


「そうかソラは以前の記憶が無いんだったな、ダンジョンでは大して珍しいものでもない」


突然異世界に飛ばされたものだからもちろんこの世界の知識は無い、しかも年齢が10歳ほど若返って居るのだ。

立ち振る舞いや知識などで変に思われてあらぬ疑いをかけられても嫌なので記憶喪失と言う事にしている。ちなみに何故か言葉は通じる。


「料理長、この刃草ってなんで無価値って言われてるんですか?見たとこ根っこの部分とか食べられそうな気はしますけど」


「その刃草はダンジョンの割と浅い所に生えてるんだが、気付かずに歩くと靴が削れるんだよ。鉄の足具なら大丈夫だがな。まだ鉄の足具を買えない駆け出しの奴にとっちゃ邪魔でしかない、だから中堅以降の奴らがダンジョンに潜る時は踏み倒しながら行くんだ」


確かにまだ金に困る駆け出しにとっちゃ足具ひとつにしても決して軽くない金がかかる。

葉っぱは尖ってるから食えないし、駆け出しの足具を傷つける。なるほど無価値認定も頷ける。

だけどこれがもしネギだとしたら…!


「あの、この根っこの部分食えそうな気がして…後でちょっと調理してもいいですか?」


「…お前の直感は良く当たるからな、好きにしろ、だが仕事が終わってからだ」


「はい!」


10歳若返って、今の俺はちょうど12歳くらいの年齢だ。

ギルドってのもあり未成年は大体21時頃からは働けないらしい。

さて、こいつはほんとにネギなのか?終わるのが待ち遠しいな。

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