第69階層 屋根を付けましょう
そう、ダンジョン中央のでっかい縦穴だが、お日様の光が入って来るのは良いのだけども、雨の日になると一階のステーションが水浸しになる。
幌でもかぶせようと思ったが、強風が吹けば飛んで行きそうで、結局付けていない。
もうすぐ、台風シーズン。
今のうちになんとか蓋が出来ないモノかと。
そこでアクレイシス女王がやったように、ドーム状の屋根を付けた模型を作ってハーキャットさんの前に置き、ダンジョンコアを1個差し出してみたのだが。
何故だか首を左右に振られる。
ダンジョンコアの数が足りないのかな、と思って、ダンジョンコアを指さして、指を2本立てる。
しかし首を振られる。
最終的に両手の指を開いたところで、ようやく頷く。
ちょっと欲張りすぎじゃね?
たかが屋根に10個?
足元見るのもいい加減にしろよ!
等と言いたくはなったが、向こうは大家、こっちは店子。
店子は大家に逆らえないんですわ。
それに、リニアモンスターカーの運輸業でかなりの儲けが発生している。
マージンをかなり少なく見積もっても、量が多い分、大量の外貨が手に入る。
それをそのまま手元に置いておく訳にもいかないから、他国からダンジョンコアを買い漁る。
今、うちの宝物庫には30個ほどのダンジョンコアが保管されている。
10個ぐらい安いものだ。
と、思ってダンジョンコアを取りに来た所だ。
「ずるいぞ! なんで私も混ぜてくれないのだ!!」
いや、悪乗りしそうだったので……と、ホントの事を言う訳にもいかず。
「もうすぐ、女王陛下の誕生日でしょう。サプライズとしてお見せしたかったのです」
等と言ってみる。
すると、ちょっと顔を赤らめる女王様。
そういうとこだぞ。
なんで日に日に女性らしさが増していくんだよ。
コイツ、本当に元は男だったんだよな?
偶に生まれた時から女性で……いや、止めよう、変な想像はコイツにも失礼だ。
と、言う事で、供えてみました、ダンジョンコア10個!
コレで雨の日も大丈夫!
巨大なドーム状の屋根がダンジョンの縦穴を塞ぐ。
ただ、10個ものダンジョンコアを使った所為か、かなりハイテクな屋根が出来上がっていた。
外側はまあ、ドーム球場のような普通の屋根なんだが……内側が少々、いや、かなり特殊な出来になっていた。
内側から空を見上げてみると、なんと、太陽がそこにあるじゃありませんか!
普通の太陽と同じ動きに合わせて、太陽と同じような光源が移動し、ダンジョン内部をくっきりと照らす。
夜にはプラネタリウムのように星のような光源が無数に瞬き、ダンジョン内部を淡く照らす。
さらにだ、サプライズまであった。
なんと、内側の壁から地面がせり出し、サッカー場と野球場が現れた。
そして夜間、その球場等を出している間、スポットライトのような明かりが屋根裏から差し込める。
ナイターだって出来る。
ちょうど他所から来た人と、ここで育った人とで、スポーツ競技の実力に差が開きすぎて困っていたんだよな。
このままプロスポーツクラブを作ろう。
ただまあ、観客席が無いんだよな。
内側の通路だけでは見られる人も限られる。
上の方の階じゃ遠すぎて見えないだろうし。
球場の数も一個じゃ少なすぎる。
出来れば、ビジョンなども設置したい。
どうせなら、各部屋にテレビみたいな中継が見られるようにもしたい。
ハイそこで、ペッペケペ~、ダンジョンコア~。
残ってた宝物庫のダンジョンコアや、果てや借金までして各国から買い付け、せっせせっせとハーキャットさんに貢ぐ。
「すっかり貢君になっていますね~」
「ほんと、ダンジョンは恐ろしいよな、あの旦那があ~なるって」
「いい加減、止めた方がよろしいのでは?」
さすがにコレはやりすぎじゃない? と女王が部屋の壁に映るモニターを指さす。
えっ、コイツからやりすぎって言われるぐらい無茶してた?
そう言われてふと正気に戻る。
スタジアムの数はすでに10を超えている。
階層状になっているので、スタジアムの裏にもスポットライトが付いている。
各部屋には、その数だけチャンネルが変わる映像が壁に映し出されている。
確かに……スタジアムは10個も要らないよな?
まあ、別にスタジアムだからと言ってスポーツをしなければならないという訳でもない。
スポーツ以外のニュースやイベントをそこで行えば、前世のテレビの様に使えない事もない。
「やりすぎましたかね?」
「宝物庫のダンジョンコアの残数を知っている? 人の事は言えないじゃな~い」
仰る通りでございます。
女王様はポチポチとチャンネルを切り替えながらそう言ってくる。
なお、チャンネルの切り替えは、画面の左右をタップする事で切り替わる。
リモコンは無いんだよな。
さすがにそこまでは無理か。
いや、ダンジョンコアをもっと貢げば…………
「イース様……?」
いやいや、やりませんヨ?




