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第64階層 クレスフィズ・グランサードその2

 はい、私、クレスフィズ・グランサードでございます。

 ほんとは違うけど。

 まあ、そこは置いといて、ただいま絶賛、女王様のお悩み相談室に来ています。


 どうも夫婦仲が上手くいってないらしく、そもそも女性とすら見られてないとか。

 こんな美人の奥さんを捉まえて、そんな文句を言うなんてアタオカじゃね?


 なんでも、薬を使って男から女に変わったんじゃないか、と疑われたそうだ。

 それに思わず、はい、そうです。と答えたらしい。

 そんな発想して問いかける方もおかしいが、そうです、と答える方もおかしいと思う。


 ある意味、似た者夫婦? どうしたらそうなるの~?


 さらにその後の発想がまた意味が分からない。

 なんでも別人に成り代わって、誘惑する事に決まったそう。

 ほんと、どうしてそうなるの? これがイミフ~って奴?


 しかもなんかキャラ付け? とやらで、無口で鉄面皮な人間になりきって別人を演じているそう。

 この国にはアタオカな人しか居ないのかな?

 普通に訂正したらすむ話だと思うけど。


「あっ、父さんめっけ」

「こっ、こら、そう呼んだらイカンと言っただろ。お前はもう、皇子様なんだからな」


 とりあえず、次の目標は成り代わった別人――――オキクさんで、イース様に告白する事に決まった。

 解散となって時間も余ったので、ダンジョン? の中を探索してみる事にした。

 と言うかコレ、本当にダンジョン?


 モンスターは居ないし、迷路でもない。

 部屋だけは無数にあるけど、冷暖房はおろか、温泉もトイレも完備された非常にリッチなお部屋。

 各部屋には登録した人しか出入りできなく、セキュリティーもバッチシ!


 日当たり良好、とはいかないけど、皇都にある宿屋なんて目じゃないぐらい快適。

 正直、王宮よりも暮らしやすいと思うんだ。

 唯一の欠点は娯楽が少ないって事ぐらいかな。


「大丈夫、大丈夫。護衛の騎士様の目を盗んで来てるから、誰も見てないよ~」

「何やっとんだお前は……はぁ~育て方を間違えたかなあ。これじゃ、陛下に顔向けできないよ」


 あの女王様に色々教わったからね!

 男装するときの注意点とか、皇子様らしい立ち振る舞いとか、護衛の目を盗んで遊びに行く方法とか。


「最後のは教わったらアカン奴だろう……」


 父さんが呆れたように呟く。


 私がカーラード王国へ留学するにあたり、父さんと母さんも付いて来てくれる事に決まった。

 なんでも、この国からもたらされた穀物という食べ物の効果を検証する為だそうだ。

 お肉中心で育った人のうち、各年齢層に分かれて、食べ続けるとどういう効果があるか、を調べるそう。


 お貴族様は野菜しか食ってねえらしく、平民から希望者を募ったみたい。


 その希望者に父さんと母さんは立候補した。

 お仕事の方は大丈夫なの? と聞いたら、結構な支度金が出るから、辞表を叩きつけて来たゼ。

 なんて言ってた。


 相変わらず、先の事を考えていない人達である。


 ま、いざとなったら皇子になった私が養ってあげるけどね!

 このままバレなければだけど……

 バレたら連座で首チョンパって事にならなきゃ良いけど。


 それにしても穀物の効果は凄い!


 父さんは地上で採れた普通の小麦を食べているけど、母さんはこのダンジョンで採れた小麦を食べている。

 ダンジョンで食べ物が収穫されるってどういう事? っていう疑問も吹っ飛ばすほど、劇的な効果があった。

 父さんの方はまあ、あまり変わっていないが、母さん方が凄い!


 30歳近くになり、ババアに片足を突っ込んでいたお肌の張りが全然違う。


 目元に出来てた皺が綺麗さっぱり無くなっている。

 急に座ると膝が痛い、と言っていたのも、今じゃ屈伸して筋トレ出来るほど元気になって来た。

 もう自分達はこの国で暮らすので、お前は立派な皇子様になるんだぞ。などと言いだす始末。


 いや、私だってここで暮らしたい!


 ご飯は美味しい! 暮らしは快適! どの国へでも僅か数時間で旅行し放題!

 えっ、なんなのココ?

 天国かな? 私、もしかして皇子じゃないのがバレて、もう首チョンパされた後だったりしな~い?


「ね、父さんの方はどう? 体の調子は良くなった? なんだったら今からでもダンジョン産に換える?」

「いや、ダンジョン産は一時的なモノらしいからな。それに、まだ食べ続けて数日だ、効果のほどは……」


 少しだけ、体力が昔に戻ったような気がする。と言う。


「そこでだな……実は父さん、冒険者になろうと思っているんだ」

「また、馬鹿な事を言いだした!」


 30歳も過ぎたジジイが今から冒険者なんて無理だって~。


 なんでもこのダンジョンシティ、冒険者の数が圧倒的に足りないらしい。

 このダンジョンの地下でしか採れない日本円。

 その日本円がないと、ダンジョン産の小麦が増やせないという。


「母さんの為にも、俺が冒険者になって稼いで来るんだ……」


 それ、死亡フラグだからやめてよ~。


 よし、母さんにチクってやる。

 えっ、イース式スパルタ訓練を受ければ、誰でも冒険者になれるって?

 なにそのパワーワード、絶対怪しい奴だよ~。


「おいっ、居たぞ、クレスフィズ皇子だ!」

「皇子! 昼からは礼儀作法の勉強と言ってましたよね!?」


 やべっ、見つかった。

 つって父さん、なんで腕をつかむの!?


「礼儀作法は大事だと思うんだ、特にお前には」

「この裏切り者~」

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