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第60階層 おさらいです

「お前達には毎回、無理を言ってすまないと思っている」

「そんな……いけませんよ、あなた様が軽々しく頭を下げては……」

「二人がどれほど大切にあの子を育ててくれたかは……知っているつもりだ」


「陛下……」


「勝手に押し付けて、勝手に取り上げて……それでだな、あまりに急な事もあって、少し、間を空けることにした」

「私共も、それに付いて行けばよろしいのですか?」

「うむ、今しばらく頼んで良いか?」


「勿論ですとも!」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 本日の朝食も並べられた物は野菜ばかりであった。


 野菜……あんまり好きじゃないんだけどな。

 肉があまり余っているんだから肉、食えよ。と言いたい所だが、一旦、毒があると思い込むと、いくら、毒も適量であれば薬になると言われても軽々しく口には出来まい。

 まあ、朝食ぐらいならこれでも良いんだろうが、3食、草ばかりだとウンザリしそうだ。


 オレたちゃ一体、何時までココに滞在しないといけないのだろうか?


 食事が終わり暫くすると、街へ連れ出される。

 どうやら街を案内してくれるそうだ。

 まあ、ここでマウント取りたいんだろうな。


 リニアモンスターカーで驚かされた挽回をしているのだろうが……前世日本の記憶がある自分にとっては、さほど驚く場所でもない。


 隣の女王様は大歓喜だが。

 カーラード王国の街並みと比べれば、月とスッポン。

 正直、比べる事自体がおこがましいほど。


 建物はしっかりとした石造りの物だし、地面も平らに舗装されている。


 カーラード王国の、木材の家・土がむきだしの地面、等とは比べ様も無い。

 構造物も2階・3階建ては当たり前だ。

 所々には巨大な建造物もある。


 大きな水路も整備されていて、船で移動も可能。


 昨夜遠くから見えた鉄道も立派な物だ。

 広い道の中央に線路が引かれ、馬も無しに頻繁に列車が動いている。

 そんな街並みに我らの女王様は大興奮。


 アレは何? コレは何? こりゃスゲエヤ、等と言って感心している。


 お付きの兵士さんもそれに気を良くして、彼是と話をしてくれる。

 すっかり仲良くなってお土産まで買って貰っている。

 一国の女王様が一兵士にお土産を強請るって……


 まあ、こういう所がコイツの良い所かもしれん。


 あっという間に、味方に取り込んでいる。

 出発前はかなりギスギスしていたはずなのにな。

 ファミュ王子やオレではこうはいかなかっただろう。


 おかげで色々と話を聞けた。

 昼食――――また草ばかり、を食べた後になにやら会議室の様な場所へ案内される。

 集まった全員が席に着いたのち、皇帝陛下が口を開く。


「まずはそちらの研究とやらを聞かせて貰おうか」


 そう言ってくる。

 随分と上から目線だが、知っておいてもらう事は悪い事じゃない。

 それでは、おさらいだ。


 まず、お肉。


 モンスターから獲れるお肉、これには、一種の毒とも薬とも言いかねる成分が含まれている。

 メリットは、摂取し続ける事により、体力・腕力が付く。

 熊や虎どころでない強敵のモンスターと戦う為には、これを食って力を付けなければならない。


 目の前に居る、野菜しか食ってねえ奴らじゃ、モンスターに襲われたらなんの抵抗も出来ずに全滅するだろう。

 肉を食って成長した奴は、一人で複数のモンスターを相手取っても負けない強さを手に入れている。

 また、腕力だけでなく、魔法を使う奴も、肉を食っている奴の方が魔力が多い。


 だが、デメリットもある。

 まずは成長が遅れる。

 野菜のみを食ってる奴は、早ければ16、遅くとも18歳には成長が止まるだろう。


 しかし、肉のみを食っている人は20歳過ぎまで緩やかに成長する。


 モンスター肉の毒が体に慣れるまでの時間だと思われる。

 そして一番の問題、30歳のピークを過ぎると、急に老化が始まる。

 毒に耐えうる体力が尽きる事により、体に一気に負担がかかる所為だと思われる。


 それでもさらに肉を食い続けると……老化が進み、40歳には寿命を迎える。


「なるほど、よく研究されている。我らの認識もその通りだ、唯、一言付け足すとすれば……」


 その肉には人の知能を低下する作用もある。と言う。


 我らの国も街並みを見たか? そして自分達の国の街並みと比べてみたか? その差が、肉を食っている奴と食っていない奴の差だ。

 記憶力、計算能力、発想力、そのどれもが、肉を食べている奴は著しく欠如している。

 肉のみを食べている諸国は原始時代から何も進歩していない。


 毎日、同じものを作り、毎日、同じ暮らしを繰り返す。


 今日の気づきを、未来に活かし、新たな物を作り出す事が出来ていない。

 それでも知恵を持った生物か?

 知恵があるのなら、今、不便だと思った事をなぜ改善しようとしない?


 明日、必要だと思う物を想像する。


 そして想像した物を作り出そうとする。

 それが肉を食べている奴には発想すら思い浮かばない。

 モンスターを食っている奴は、同じモンスターに成り下がっているのだ。


「そうは思わぬかね?」

「なるほど……しかし、同じモンスターに成り下がっているからこそ、モンスターに対抗できる力を手に出来ているのも事実ですよ」

「ふむ……そういう考え方もあるか」


「ならば、そのモンスターに成り下がった上で、人並みの知能を持たす方法があるとすればどうします?」

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