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第51階層

 アクレイシス王子、もとい王女が女王に即位するにあたり、ファミュ王子は将軍職に、バクラット王子は大統領に、それぞれ役職が変わった。


 ファミュ将軍は軍事の全てを統括し、バクラット大統領は、前国王が行っていた事をそのまま引き継ぐ。

 だとしたら、我らが女王様は何をしているか?

 何もしていないのである。


 毎日、自由にあっちフラフラ、こっちフラフラと歩きまわっては、遊び惚けている。

 オレも、王様になっても好きにして良いよ、と言った手前、強くは言えない。

 そんな女王様がまたしても、何かやらかしたんだろうかと、ビクビクしながら王宮へ向かったのだが。


「なんかどっか遠くの方の国が吠えているらしいぞ」


 等と言われる。


 なんでも我が国こそが世界で最も進んだ国であり、他国はすべからく我が国の言う事を聞かなければならない。等と思っている国が遠くにあるらしい。

 実はこの世界、国同士の戦争はめったに起こらない。

 何故かと言うとだ、一歩、町の外へ出るとモンスターがウヨウヨ居るからだ。


 モンスターの皆さん、何故だか分からないが人間を見ると必ずと言って良いほど襲い掛かって来る。


 圧倒的な戦力差があろうとも平気で襲って来る。

 何千何万と言う軍隊に対し、たったの一体であっても襲って来る。

 前世の旧日本軍でもそこまでしないぞと思うほどの、クソ勇気の持ち主なのだ。


 必然、行列を引き連れて歩いていたら遠くからも丸見えで、どっかのクソゲー並みのエンカウント率でモンスターが襲ってくる。


 進軍どろこの騒ぎじゃないんですよ。

 しかも、行きで掃除しているから帰りは大丈夫、ともならない。

 モンスターを一掃したはずなのに、数日後にはまたモンスターが存在している。


 ホント、どんな繁殖したらこうなるんだってぐらい湧いて来る。


 さらに、さらにだ、うっかり、ドラゴンクラスのちょっとヤバめなモンスターの縄張りに入ってしまうと、どんな大軍だろうが全滅だってあり得る。

 しかも、軍どころか勢い余って国ごと消滅とかしかねない。

 なので、滅多に戦争は起こらない。


 ただまあ、何時の世でも頭のおかしい人物は湧いてくる訳で……


 帰る事も考えず、モンスターの襲撃も全部無視して、被害上等でひたすら他国を攻め入って国を広げようとした人物が居た。

 周りの国も戦争は起きないモノという考えでいた訳だ。

 何の準備もなく、急な襲撃に耐えられる国など存在しない。


 襲った国で兵を集め、また別の場所を襲う。


 その繰り返しでどんどん大きくはなったが、問題も大きくなる。

 何事においても一方通行なので、征服した後の統治がまともに出来ていない。

 国自体は確かに大きくなっただろう、だが、その後の事を考えていない。


 脳筋が戦争を始めたらこうなるんだ、と言う、典型的なパターンである。


 そうなると、なんであんな奴らの言う事を聞かなければいけないんだ。みたいな事にもなる。

 帰る事を考えてないんで、戻って躾のし直しという訳にもいかない。

 気が付いたら、あちこちで独立が始まっている。


 ただまあ、そんな頭のおかしい人物にはどこの国も関わり合いたくない。


 最終的には、言う事は聞くのでどうか治まりくださいと、まるで荒ぶる神的な位置付けになって、周辺国の盟主的な立場になった訳だ。


「頭が変わったのに、世界の盟主たる我が国に報告も無いとは何事だ。って事らしいぞ」


 頭おかしいんじゃね、その国。


 その戦争があったのも数百年も前の話、しかも、うちの国とはまったく関係ない。

 こんな辺境まで攻めて来れた訳じゃないし、今まで、王が変わってもそんな事は言ってこなかった。

 あと、単純に遠い。


 馬車で3か月とかかかるらしい。


 往復半年だぜ? 誰が行くんだよ、って話だ。

 しかも挨拶に来いってだけじゃなく、穀物の生産・販売を止めろ、リニアモンスターカーを引き渡せ、等という無茶難題も記載されていると聞く。

 もう、無視しとこうぜ、そんなの。


 まさか、ここまで攻めて来るって訳でもないだろう。


「そうだな、それが良い。ところで……アクレイシス女王は何をしている?」


 ……何をしているのでしょうねえ。


「何やら例の商会に入り浸っているようだが」


 なんかあの二人が揃っていると怖いんだよ。

 変な事しないように、きちんと見張っとけ。

 等と言われる。


 あなたもそう思われますか、私もです。ウドゥさんもそう仰っていましたよ。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ガー様、ちょっと相談があるんだけど」


 私ことアクレイシス・カーラードは、とある商会長の執務室に訪れ、そこで机に向かって只管、書類を書き留めていた少女に声をかける。


「ガー様とは誰のことかしら?」


 そう言って、ジロッと私の方を睨み付けるその少女。

 なお、まだ手は止まっていない。

 凄いよね、その仕事に向ける執念。


 こりゃもう尊敬の念を込めてガー様と呼ぶしかないわ。


 そんなガー様に私は悩みを打ち明ける。

 最近の私は明けても暮れても、この事ばかりを考えている。

 彼の周りに新しい女性が増える度に危機感も増していく。


「不満だ! 不満なんだよ!! イース君が、何時まで経っても私の事を女性として扱わない! なんとかならないだろうか!?」


 ガー様ならきっとなんとかしてくれる! だってこの子、普通じゃないもの。

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