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第44階層 いつもの事ですって

「イース様、やりやがりましたよあのバカ!」


 翌日、ファリスさんが怒鳴りながら部屋に駆け込んで来た。


「アクレイシス女王が、宝物庫にあった全23個のダンジョンコア! それらを全て持ち出してダンジョンに向かいました!!」

『なんやて!?』


 オレはすぐに緘口令を敷くようにファリスさんに伝える。

 さらにアイサムとブロスを呼んで、ダンジョンコアの補填を指示する。


「ダンジョンコアを差し出した貴族には税優遇すると伝えてください」


 ダンジョンの攻略には騎士団を持ち出しても構わない、ただし内密にだ。

 少なくとも市民に、王宮にダンジョンコアの予備が無いという事を知られては不味い。

 自分達を守る傘が無くなるという噂が流れるとパニックになる。


 ダンジョンコアのストックがあると言うのは、王都を守ると言う意味だけじゃない。

 市民の心を落ち着かせる安全弁でもある訳だ。


「最悪、ボルヴェイン兄上を持ち出しても構いません。早急にダンジョンコアの奪取に向かってください」


 さすがの緊急事態だ、兄上だって馬鹿じゃない、手加減だってするだろう。


 いや、確かにダンジョンコアを持って行こうって言ったよ。

 言ったけどさ、なんで全部持って行くの?

 馬鹿なの? 死ぬの? 市民が蜂起したらどうする気なんだ……


 オレはすぐにクライセス家の屋敷へ向かう。


 リニアモンスターカーが戻って来る一時間ちょいがもどかしい。

 さすがにコレはやったらアカン奴やろ?

 オレは一緒に付いてきた、女王の執事に目を向ける。


「いつもの事ですよ?」


 そっか~、いつもの事か~、そら弟王子の眉間に青筋が立つ訳だ。


「いやはや、イース様に付いて頂けて実に心強い。さすがの私も一人では心が折れていたかもしれませんわ」


 ワッハッハと笑う。

 いや、笑い事じゃねえから。

 まあ、オレもその、いつもの事、に加担していた側だから強くは言えない。


 特にこの、リニアモンスターカーの時とかな……


 リニアモンスターカーが帰って来るまで1時間、こっちから向こうに付くまで1時間。

 合計2時間。

 一つずつ取り込むなら多少は余っているかもしれないが、まず確実に一気にやるだろう。


 となると、今から慌ててもどうしようもない。


 そう思うと多少は落ち着いてきた。

 むしろ何が出来上がっているか、の方が問題か。

 ハーキャットさんとは意思の疎通が出来ているようで、出来ていない。


 あの女王アホがどうやってハーキャットさんに伝えるかによる。


 両手を広げてバーン! とデカいやつをおくれ。なんてやった日にゃ、天を突きさす巨大な塔が出来ているかも知れん。

 最悪、23個も使って……ん、何やら明るい。

 リニアモンスターカーに乗って1時間ちょい、そろそろ着く時間、ふと見ると車体の窓から光が差し込んでいる。


 リニアモンスターカーの終点は洞窟の中だったはず、なのに光が差しているはずが……あれは…………


「リニアモンスターカー?」


 終点にたどり着いたのか、ゆっくりと停止する。


 そこは地上まで突き抜ける、巨大な円形の縦穴となっていた。

 見上げる空から、太陽の日差しが差し込んでいる。

 壁には幾層にも重なる手すりの様な物が見える。


 さらに、ここ、最下層の壁に幾つもの穴が開いており、その幾つかからはリニアモンスターカーが顔を出している。


 リニアモンスターカーさんが増殖した!?


「いや驚いたッス。急にみんな光ったかと思うと、全員最下層に移動させられてたんスから」


 そこに居合わせたコンビニの店員に状況を聞くと、突然、部屋の中が光ったかと思うと、この場所に全員集められていたそうだ。


「とうとう食べられるのかって思ったッス」


 そりゃ転移した先に、パッカリと口を開けたリニアモンスターカーが多数居たら驚くわな。

 そのうち、落ち着きを取り戻した人達は、すっかり姿変わりしたこの地の探索に向かったらしい。


「あそこに倉庫があるっしょ、あの部屋にボタンみたいなのがあって、それ押すと、各階層に転移するらしいッス」


 転移式のエレベーターかぁ……ほんとゲームみたいな仕様になってきたな。

 そうやって眺めていると、そこに人が転移されて来た。

 やって来た人に詳しい話を聞くと、どうやらここから数えて上に10階、下に1階の階層があるらしい。


 壁には、1から10までの数字と、D1・D2とボタンがある。


「アレ? さっきまでD1だけだったのに?」


 ふむ……もしかして、このDはダンジョンの略? そして増えたという事は、1階層は誰かが攻略したのか?

 とりあえず、1から10までの階層を順番に移動してみる。

 まず1階層、コレはここ、リニアモンスターカーがひしめくステーションエリア。


 2階層は、地上にあった食堂を大きくしたような場所になっており、自販機もココに並んでいる。

 3階層は、コンビニが移動してきたようだが、面積はもはやコンビニとは言えない広さになっている。

 前世のショッピングモールより広いかも知れない。


 4階から9階までは、居住区となっているようで無数の部屋がある。

 内周と外周は通路になっており、外周の壁にはカプセルホテルの様な四角い穴が幾つも空いている。

 王都全部、とはさすがに言えないが、かなりの人数を収容できそうな感じだ。


 地上一つ手前の10階層は、何もない倉庫の様になっており、地上からのリフトもいくつか用意されている。


 ここに今までの様に、狩って来たモンスターを置けって事かな?

 かなり広いよね~。

 …………ダンジョンが広がったって事は当然、燃費も上がっているんだろうなぁ。


 この先の維持費の事を考えると、頭が痛い。


 ついでなのでD1のボタンを押してみる。

 だが、何も反応しない。

 壊れているのか?


「ああソレ、資格がある人だけしか行けないみたいっスよ」

「ふむ……?」

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