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第41階層

「おい、ちょっと待てバクラット」


 アクレイシス姉上と父上が会議室から退去した後、ファミュ兄上が僕を呼び止める。


「お前、私がイース卿と対立しそうになった時に何故黙っていたんだ? 不味いなら教えてくれても良いだろう」

「まあ、どうせ、アクレイシス姉上が王になると思っていましたから」

「えっ、おまっ、私はそんなに頼りないのか……?」


 違うんですよ兄上。


 兄上は立派なお方です。

 文武両道、何をやらしても人並み以上。

 百人が百人とも、王になるのは兄上が一番だと、そう答えるでしょう。


 でもですね、アクレイシス姉上はその上を行くんですよ。


「あの人は、いつも良い所を持って行く。道中どんなに無茶苦茶であろうとも、最終的に一番良いポジションに立っている」


 なんだかんだで、父上から一番可愛がられているのも姉上だ。

 王宮内で最も優秀な人物だって姉上の側近として付いている。

 しかも自分から推挙してだ。


 さらに、王国内で最も重要な人物になりつつあるイース卿。


 その人が唯一、首を垂れているのがアクレイシス姉上なのだ。

 彼は他の誰にも興味を示さない。

 王ですら、唯の背景だと思っている節がある。


 その彼が、アクレイシス姉上にだけには親しく接している。


「良いですか兄上、世の中、バカより怖いものはない」


 リピーズトゥミー。


「馬鹿より怖いものはない……か」


 何せ、何をしでかすか予想もつかない。

 予想がつかないから対策の練りようもない。

 どんなに優秀であろうとも、人と同じ事をしている間は、所詮、人と同じレベルの事しか出来ない。


 だがバカは違う、人の想像を超えたバカな事をしでかすんですよ。


 そしてそんなバカが幸運と権力を手に入れた時、とんでもないパラダイムシフトが生み出される。

 そして姉上はその両方を兼ね添えている。

 そんなバカと上手に付き合う方法は唯一つ、本気で相手にしない事です。


「だって疲れるでしょ?」

「………………確かに」


「ところで兄上、そんなバカを本当に貰ってくれると言ったのですか、彼は」


 ちょっとだけ目を反らす兄上。


「ああ、私は確かに問うた。第一王子アクレイシス・カーラードを支え、生涯尽くすことを誓えるか? と」


 そして彼は言った「誓いましょう」と。

 何か抜けて無いですかねえソレ。

 例えば間に「国に」とか。


 いやいいんですよ僕は、彼が義兄になってくれるなら万々歳です。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「なんでそんな事を言ったんですか?」


 そうは言われてもねえ……生きるか死ぬかの瀬戸際ですよ?

 言うだけならタダ、だと思ったんですがねえ。

 やはり駄目だったか……ただ、そこまでは言っていないはずなんだけどなあ。


 しかし王家はどう思っているんだろうな、ご自慢の御子息が薬で女性になって。


 しかもその結婚相手に男を選ぶなんてさ。

 まあそれが他人の事なら笑い話なんだろうけどさ。

 自分の身に降りかかるとは……トホホ。


 色々と言質を取られたオレは、実は生まれた時から女だった、という事になった、第一王子、もとい第一王女のお婿さんになる事が決定した。


 しかも婚約とかまどろっこしい事はすっ飛ばして、女王就任と同時にだ。

 盛大な、就任&結婚式を行うそうだ。

 今からでも、なんとか逃げられないものか。


「そもそも何故、婚姻するという話になってんですかねえ」

「いや、俺は知らねえよ、その場に居なかったし。どうせ旦那は、その場しのぎで何でも頷いたんじゃね?」

「それかアレですかね、実は中身が女性だと最初から知っていたとか?」


 いや、本当に知らないですよ?


 別に裸の付き合いとかした事が無いし…………本当に元は男だったんだよな?

 王家の宝物庫だし、なんでもあるとは思うが。

 ダンジョンの罠で魂が入れ替わるとか、性別が入れ替わるとか、性格が真逆になるとか……前世の漫画では良くあった話だ。


 いや、漫画と現実を一緒にしたらダメなんだが、ここ、漫画のような世界だし。


 今度ハーキャットさんに、性別が入れ替われる薬とか作れないか聞いてみよう。


「で、真面目な話、どうされますか?」

「…………暫くは、このまま流されてみましょう」


 夫婦になったからと言って、いきなり子供を作れとは言われまい。

 今の王様だって第一王子が生まれたのは、即位して何年も経ってからだ。

 とりあえずは、地下のリニアモンスターカーを国から認知してもらい、日本円ダンジョンを国営にして保護して貰う。


 なんだったら王族パワーで一気に強化、なんてのも有りかも知れない。


「取らぬ狸の皮算用、とならなけば良いんですがね」

「取らぬ狸の皮算用といやあ、なんでも女王即位に際して、他国から偉モンさんが集まるらしいじゃねえか」


 そこで、日本円ダンジョンの米と小麦を振る舞ってはどうかと、アイサムが答える。


「アイサムには似つかない良い発想ですね。そうすれば、この国で何かあっても、別の国で守ってもらえるかも知れない。という事ですかね」


 なるほど、それは良い発想かも知れない。

 女王就任を豪華にする為とか言う理由で国から騎士団を借り……いや兄上はいらないな、それ以外の騎士にしてもらおう。

 そうしてちょっとダンジョンで日本円を稼いで来てもらって、自販機で大量に回収して王宮に持って行こう。


 ダンジョンに騎士団投入とか、ハーキャットさんが少しごねるかもしれないが、そこは我慢してもらうしかない。

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