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第31階層

「いや~、狭い部屋っていうのもなかなか乙なもんだね!」


 ダンジョンの中に別荘が欲しい、と言っていた王子様。

 そなん言うんなら、ダンジョンコア持って来い。って言ったら本当に持って来た。

 それをハーキャットさんの目の前に置いて、お部屋プリーズってやったら、本物のホテルのような多数の個室があるエリアが出来あがった。


 その中でもリフトのある縦穴から一番近い部屋が、かなりの大きさだったので、ここを王子様のお部屋にしましょうか。と言ったのだが。


「カプセルホテル等と君が言ってた物に興味があってね、空くならそっちを貰えないかね?」


 とか言うので、カプセルホテルが並んでいた一室を王子様に献上する事になった。

 全部合わせればこっちの方が広いが、巨大なベッドなどを置ける様なスペースは無い。

 ただ、狭いなら狭いなりに楽しみ方は色々ある。


「ここに一人一部屋、女性を突っ込んで日替わりハーレムだ、等とやったら面白いかもしれないね!」


 いや止めてください、そんなカオスなお部屋。

 それにしても……リニアモンスターカー以来の大型アップデートなんだが。

 もしかして、この王子様が持って来たダンジョンコアって値打ちもんだったんじゃ?


「さあどうかねえ、横取りした、鑑定も済んでいない物だから良く分からないや」


 何やら不穏な事をおっしゃる。

 これは聞かなかった事にしたほうが良いな。

 もうこれ以上、この話題には触れない。良いね?


 ファリスさん達もコクコクと頷く。


「ああ、それとだねえ、君、私に何か隠し事をしていないかね?」


 隠し事? はて、なんの事やら。

 なんでも、キャロウェイ嬢がとても自慢をしていてねえ。などと言う。

 ふむ……


「コメの事ですかね?」

「そう、それだよ! なんで私に献上しないかねえ、新しい食材を見つけたら、真っ先に献上すべきじゃないかね!」


 こないだ小麦を持って行ったじゃん。

 あれじゃ満足出来なかったのかな?


「いや、あれはあれでとても素敵な物だね!」

「そうですか……とりあえず米に関してですが、食べ続けても大丈夫かどうか、現在は身内のみで試しているところですよ」

「米だ! 我はコメを所望するぞ!!」


 話を聞けよ。

 まあ、良いけどさ。

 そんなに食べたいなら、王子様にもサンプルとなってもらおう。


 それならと、途中コンビニに寄ってウドゥも連れて食堂へ向かう。


 米を王宮へ流通させるとなると、毎回オレが出向くより商会を経由させた方が良い。

 その辺りは、王子とウドゥで取り決めてもらうつもりだ。

 問題はだ、ダンジョン攻略組が持ち帰る日本円が全然足りなくて、そんなに大量に米を買えないという所だ。


 米、もっと安くならないかな?


 ダンジョンの野郎も足元見てか、小麦より少しお高めの値段設定にしている。

 小麦は小麦で欲しいんで、米ばかり買う訳にもいかない。

 こういう所でも自由に栽培できない弊害が現れている。


 いい加減、種おくれよ~。


「ふ~ん、これが米かね。随分と硬いが、これが本当においしいのかね?」


 生米を手に取って王子様がそう言ってくる。


 そのまま食べる訳じゃありませんからね。

 オレはすでに焚かれた米釜から少し手に掬い、適度に塩をもみ込んで、お寿司のような長方形に固めて王子様の目の前に置く。

 ただの塩にぎりですがどうぞ。


 これが一番、本来の米の味わえる。


「ただの塩だけ? こんなんで美味しい訳が…………うまっ、えっ、塩だけだよね?」


 数個置くと、パクパクと口に放り込む。


「えっ、なんで? なんか幾らでも食べれそうなんだけど?」


 どうやら、お気に召した模様。

 塩にぎりだって馬鹿に出来ない。

 米自体が甘味とうま味の塊であり、それに塩味を足す事でより一層、それらを感じる事が出来る。


 さらに薄く焼いた卵焼きでそれを包む。


「ひょっ! 卵を巻いただけだよね? 全然味が変わっている気がするよ。うま~」


 これが米の凄い所だと思う。


 米と何かを合わせると、さらに深みが増してくる。

 卵でも肉でもお魚でも、米と混ぜる事により、素材の魅力が最大限に引き出される。

 まさしく、おかずをサポートするために生まれた様な存在だ。


 オレはさらに、焼き肉のタレをハケで塗り、その上に分厚い肉を乗せる。


「おお……素朴な味わいから一気に重厚な味に変わった。しかも、どっちもうまい! こりゃすげえ!!」


 王子様は絶賛でござる。


「調理の手間が少ないのも魅力だよな、水につけて焚くだけってえんだから」


 ウドゥもそう言ってくる。


「本当にたったそれだけ? 小麦みたいに色々手を加えなくても、これだけで美味しいって……」


 御令嬢が料理などをしているって聞いたから驚いたが、これなら簡単なので誰でも出来そうだね。なんて言う。


 調理が簡単、というのは世の主婦の念願ですからね。

 でも、キャロウェイさんはそれだけに飽き足らず、色んな事に挑戦されていますよ。

 バーセルク兄上の胃袋を掴むために必死……ケフンケフン、愛の力って凄いですよね。

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