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第13階層 ダンジョンでとれるビンと言えば

「今日も今日とて、また変わったもんこしらえてんな」


 ただの焼き肉が変わった物とはこれ如何に。


「いや、料理の事じゃねえよ、なんだこのホットプレートってんの」


 焼き肉には必須だろ?

 なんで、うちが贔屓にしている工房に作って貰った。

 電気じゃなくて、炎の魔石を使った、魔石ホットプレートだが。


 本日はこの焼き肉のタレ、売り物にならないかなあと、例の元マフィアの商会長を王都の自宅へご招待して、このタレを使った料理をサンプルとして提供している。


「うんまあ……悪くはねえが、流行らねえだろうな」


 商会長が言うには、肉そのものをそまま焼いて食べるというのは安っぽい食い方として忌避されがちとのこと。

 前世で言うと、ご飯にフリカケ、あるいはお茶漬け、みたいな立ち位置。

 フリカケご飯やお茶漬け、卵かけごはんなど、確かに美味しいがそれを主食で済ませるというのはあまり無い。


 肉料理が主食であるこの世界では、そういう意味でも焼いてただ食べると言うには、たとえどんなに美味しくても流行らないだろうと。


 仕方ない、やはりもっと寄付を……


「ああ、それなんだけどな、俺さあ、商会の代表を辞める事になったんだわ」

「え、なぜ急にお辞めになるのですか?」

「俺もさあ、もう歳だしな。商会の形もだいぶ変わって外国まで取引が出て来た。俺のようなロートルじゃついていけねえんだわ」


 そこでだな、と話を続ける商会長のウドゥ。


「おめえさんとこ、何やらおかしげな事を始めたって話じゃねえか。どうだ、俺にも一枚噛ましてくれよ」


 どうやらうちの領地に支店を作りたいらしい。

 そしてその支店に転勤して来るつもりのようだ。

 今のうちの領地は完全なブルーオーシャン。


 全て公営な上、生活必需品しか無いのでライバル企業は存在しない。


 今までは進出しても領民が貧しい上に少なかったんだが、ダンジョンが出来たという事で今後の発展性が見込める様になった。

 しかもあの、イース・クライセスが運営するダンジョンだ。

 何をやらかすか傍で見てみたいじゃねえか。


 みたいな事を言う。


 うちの領地に支店を出してくれるのはかなり助かる。

 そろそろ領地の運営方法を見直す時期だと思っていたんだ。

 今は完全共産主義となっている。


 共産主義は全員が右へ倣えでなければ生きていけない厳しい環境なら良いんだが、下手に余裕が出来ると不満がたまり不正が慢性しやすい。


 人はどうしても競い合う生き物だ。

 共産主義では競い合う場面が限られてしまう。

 前世ではそのせいか、社会主義国家ではスポーツに力を入れている所が多かった。


 スポーツなら健全に競い合うことが出来るからな。


 オレもそれを取り入れて、毎週全員参加のスポーツ大会などをやっている訳だが、それでは仕事に対するモチベーションには繋がらない。

 そうなるとどうなるか。

 いかに楽に仕事をするかを考える。


 共産主義社会みたいな、ルールが確定されているとこで楽をするにはどうするか。


 そう不正をするしかない。

 そして一度不正をすればもう後戻りはできない。

 さらに不正をした人物が優位になり、その優位性を利用して要職を固める。


 不正の蔓延する国家の誕生である。


 とまあ、これは言い過ぎだが、うちの領地もそうならないとも限らない。

 ダンジョンさんのおかげでだいぶ安全が確保されつつある。

 不便だった地下室生活も、カプセルホテルのおかげでかなり解消した。


 村人達にも余裕が出てきたので、そろそろ、次の段階に移るのも良いだろう。


 労働の種類によって対価を――――なんてやったら、それこそ官僚不正が多発しそうなんでやらないが、全員に一律の資金を提供し、好きなモノに使わせるのはアリだ。

 金銭の元となる貨幣(日本円)もダンジョンからだいぶ回収できている。

 最近は札束だけでなく、10円玉や100円玉などのコイン類も落ちる様になってきた。


 自領内でしか使えない様にすれば、他への影響も少ない

 今の収監施設の様な状態から少しずつ普通の町へ変えていく必要もあるだろう。

 それには金銭を消費する場所も必要となる。


 ただ与えただけだと、それこそ賭博だらけになりそうだし。


「良いですね、こちらからもお願いしたいほどです」

「おっ、そうと決まれば準備にかからねえとな。何、心配すんなって、辺境なら辺境なりの品物もある」

「ああ、それなんですが……」


 リニアモンスターカー、先にこっちを取り込むか。

 あの危険な辺境に巡回で商品を持ち込むのには苦労するだろう。

 それに引き換え、地下で一直線、馬車数台分の荷物を一時間足らずで持ち運べる。


 …………ダンジョンで採れた物もこっちで売れれば良かったんだが。


「ところでコレ、ダンジョンで落ちるんだよな?」


 ふと見ると、商会長のウドゥが焼き肉のタレが入っていたビンをジッと観察している。

 と、何を思ったか、自分の指をフォークで少し傷を付ける。

 そして、そこへ焼き肉のタレを……

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