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第100階層

 皇子様への変装は自信があると言うサラサフィルさん。


 これまでも入れ替わって行動していた事があるそうだ。

 服装さえあれば、なんとかごまかして見せる。

 などと言うので、衛兵さんに皇子の服を持って来てもらう事にしたのだ。


 素っ裸の皇子の背中を見た衛兵さんは慌てて走り去っていく。


 もう大丈夫かなと思ったオレは、なるべく体を見ない様にしてオレが着ていた上着をかぶせる。

 もともと来ていた女性用の服装は宝物庫の隅に隠しておいて、後で取に来る予定だ。

 後の問題は、変なうわさが立たなければ良いのだが。


 宝物庫を守る、衛兵さんの口が堅い事を祈っておこう。


 しばらくして普通の男性用の服装を持って来た衛兵さんから、宝物庫の入り口でそれを受け取る。

 さすがに、皇子様の服装は持って来れなかった模様。

 そりゃそうだ、一介の兵士が皇子様の部屋に入れないわな。


 それをサラサフィルさんに渡す。


「皇子の服ではありませんが、コレで大丈夫ですかね?」

「大丈夫、大丈夫~、私ほら、胸がうっすいからさ~」


 いや、見せなくて良いですから。


 男性用の服装に着替えたサラサフィルさんと共に宝物庫を出て、皇子様の自室へ向かう。

 常日頃から入れ替わっていたというのは本当の様で、迷うことなく皇宮を進み自室へ辿り着く。

 これでお役御免かなと思って帰ろうとしたところ、部屋の中まで連れ込まれた。


「えっと、その……この件は内密に……」

「そうですね、互いに、今日の事はなかった事にしましょうか」

「え……いや、そうだね……」


 踵を返して部屋から出て行こうとしたところを、またしても袖を引かれる。


「そのさ、私さ、皇子様の影武者みたいになっているじゃない?」


 今後もこの様な事態がずっと続いていくと言う。

 この先、サラサフィルとして過ごす事はたぶんないだろうと言う。

 なので、


「偶にで良いので、サラサフィルとして、私に会ってもらえないかな?」


 などと仰る。

 それぐらいならお安い御用です。

 と笑顔で答える


「ん~……陛下と同じで、その胡散臭い笑顔はデフォルトなんだね」


 …………そんなに胡散臭いだろうか?


 確かに、爽やか系である自信は全くないが、だからと言ってあの皇帝陛下と同列に扱われるほどひどいのか?

 オレは自分の顔に触れてみる。

 そういや、転生してから心の底から笑った事がないような気もする。


「あっ、気にしていたら御免なさい」


 あなたに言われなかったら気にしていませんでしたよ。

 などと言う訳にもいかず、曖昧な笑顔で答える。


「そうそう、そっちの方が人間味があるよ」


 …………人間味、無かったのだろうか?


 実の兄からも、人を木か石ころぐらいにしか思っていないだろって言われたし。

 そりゃ、ダンジョンが化けていると言われても仕方がない、のか?

 あまり普通の人と話す事がなかったから、こんな事を言われることもなかった。


 イースチルドレンの連中はアレだし、ウドゥやファリスさん達はアンダーグラウンドの人間だ、胡散臭い人間だって気にはしない。


 女王様は普通とは言い難いし、その他の王侯貴族からはかなり警戒されていた。

 もしかしてオレが胡散臭いから警戒されていたのか?

 ふむ、サラサフィルさんとお話しするのは新たな気づきがあって良いかもしれない。


「これからもよろしくお願いいたします」


 と言って手を出しだす。


「うん、よろしくねっ!」


 と言って、満面の笑みでその手を取る。

 眩しいな、これが裏表がない人間の笑顔なのか。

 到底、まねができそうにない。


 ニギニギとオレの手の感触を確かめているサラサフィルさん。


 何? まだダンジョン疑惑が残っているの?

 オレがそう問うと、真っ赤な顔をして、手をフルフルと振りながら、そんな事はないよ、と言ってくる。

 ああ、そう言えば、結局クレスフィズ皇子とは話が出来ていないのだが。


「大丈夫、私がちゃんと話しておくから」


 その辺りは、サラサフィルさんから皇子へ話を付けてくれると言う。


 ならお任せしようかな、あんまりあの皇子と話はしたくないし。

 サラサフィルさんが話をしてくれると言うのなら願ったり叶ったりだ。

 これからも話があるときはサラサフィルさんを間に通してほしいぐらい。


「なんで皇子ってそんなにイースさんから嫌われているの」

「嫌っている訳ではないのですがね……まあ、醜い嫉妬とでも言いましょうか」

「へ~…………やっぱり女王様の事を愛している?」


 どうなんだろうな、自分でも良く分からなくなってきた。

 ただ、クレスフィズ皇子に嫉妬しているという事は、そういう事かもしれない。

 最初から女性として出会っていたなら、もっと違った気持ちを持っていただろう。


「ね、イースさんはさ、女王陛下以外とさ、そのさ、…………子作りとかしようと思う?」

「………………」


 つい最近、ヤっちまったんで返す言葉が見つからない。


「ふ~~~ん、そっか~~、ま、男の子だもんね、どうしようもないよね」


 じゃあ、私もそうなるのかな? と小さく呟く。

 イヤイヤ、ヤりませんよ。

 人をそんな、どっかの野獣みたいに言わないでください!

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