プレゼント
「ふぅー美味しかったです!」
あれだけ大量にあった餃子は4人のお腹の中へと消えていった
「お粗末さま。喜んでもらえて嬉しいよ」
「ほ、本当に美味しかったです!今まで食べた餃子の中で1番でした」
「さすがにそれは言い過ぎだと思うけど……」
「これにまだ自作で皮を作ることまでするんですのよ?これより更にワンランク上の餃子があるってことですのよ?」
「か、皮までですか⁉︎そ、それはすごい凝ってますね」
「また今度作ってあげるよ」
「い、いいんですか⁉︎嬉しいです」
湊の餃子の虜になった3人。暖かい部屋で幸せそうな表情を浮かべている
「ところでだけど、チーズケーキ食べるか?」
蘭さんとスーパーに行ったタイミングで貰ったチーズケーキが残っていた
「えっ⁉︎そんなの買ってきたんですか⁉︎」
「いや貰ったんだ」
「も、貰ったというのは……?」
「蘭さんのお付きの人?みたいな人から貰った」
「お付きの人⁉︎さ、さすが金持ちね」
「お付きの人ぐらいどの家にもいるでしょう」
「いないわ‼︎」
蘭さんのお金持ち常識がここで炸裂した
「え?いませんの?」
「……私の家にそんな人いないでしょ?」
「いるじゃありませんか。あの男の人が」
「……まさかお父さんのこと言ってる?」
「あ……お父様でしたのね」
蘭さんの目には、夫婦ではなく初芽のお母さんとそのお付きの人に見えてたらしい
「……まあ確かに私のお母さんは若く見えるし、周りからあの2人で歩いてる時に親子って勘違いされたこともあるけどさ」
私の母はアンチエイジングの神様ってレベルで若く見える。私も姉妹だと勘違いされたことがある
「とりあえずお父さん帰ってきたら謝罪すること」
「はい……でも初芽のせいでもありますわ」
「なんでよ?」
「お母様のことは『お母さん』と呼ぶのに、お父様のことは『おい』とか『ハゲ』って呼ぶから……ハゲてらっしゃらないのに」
初芽は父のことがあまり好きじゃない。というのも、むりやり朝一から釣りに連れて行ったりするからだ
起きたら車の中。海から朝日が昇る瞬間の眩しさで目が覚めるなんてことは月1ペースだった
「そ、それは……」
「まだ親父さんのことそんな呼び方してたのか?」
「ち、違うんです湊さん‼︎えっと……ずっとその呼び方してたからその……馴染んじゃったというか。いまさらお父さんとか親父って言うのもなんか……ねぇ?って感じで」
「2人とも親父さんが帰ってきたら謝るように」
「「……はい」」
こりゃあ帰ったら父喜ぶぞぉ。呼ばれ方酷すぎて凹んでたから
「あ、あの……結局チーズケーキは?」
「うーん……正直お腹はいっぱいだけど、ケーキ食べないとクリスマスって感じがしないし、一切れもらおうかな」
「そうですわね。私も一切れ貰いますわ」
「由布子さんはどうする?」
「じゃあ……私も頂きます」
湊は冷蔵庫に入ったチーズケーキを4等分にした
「み、湊さん?」
「ん?」
「確かに一切れですよ?でもまさか4分の1サイズで来るとは思わないじゃないですか!」
ホールケーキを余らせることなく、4人で分けた結果、普通のケーキよりも大きいサイズが全員に行き渡った
「もしかして食べられない?」
「……多分」
「私もキツいかもしれませんわ」
「わ、私は全然……」
「「えっ⁉︎」」
由布子さんの発言に2人は驚きを隠せない。餃子を食べた量が少ないわけでもないが、ケーキを前にしても平気な様子
ここにきて由布子さんは意外と食いしん坊という新たな属性を見せた
「ちなみに俺から全員にプレゼント用意してるんだけど、食べきれなかった人は無しになるから」
「そ、そんなぁ‼︎」
「ゆ、由布子さん?半分食べていただけます?」
「あ!ずるいって蘭‼︎湊さん!自分の分は自分で食べないと無効ですよね⁉︎」
「まあそうだな」
「くっ!私が食べた分全部初芽の胃に入っていく魔法とかないかな」
「そんな局所的な魔法あってたまるか!」
♢ ♢ ♢
「も、もう入らない……お腹破裂する……」
「あ、あと3日は何も食べなくても生きていける気がしますわ」
無理して胃の中に詰め込んだことが、服の上からでも分かるほどぽっこりと膨らんだお腹が示していた
「俺もさすがにお腹いっぱいだな。でも、由布子さんはなんか余裕そうですね」
「そ、そうですね。まだもう少しぐらいなら……はっ!も、もしかしていっぱい食べるじょ、女性は苦手ですか?」
人によっては少食好きの人もあるし、大食い好きの人もいる
「いえ?よく食べる人は好きです」
私もそれなりに大食いだったし、湊はこういうことを気にするタイプじゃない
「あ、私実はまだお腹余裕なんですよねー」
「私まだもう1セットいけますわ」
湊の発言を聞いて取り繕う2人。由布子さんがいる限り、そっち方面での好感度上げは難しいというのに……
「そっか。まだ材料残ってたし餃子作るか」
「「え?」」
「50枚は焼けると思うし、2人で25枚ずつ食べれるぞ」
「「ちょっ……」」
湊は立ち上がって冷蔵庫から餃子の材料を取り出し始めた
「す、ストップです湊さん‼︎」
たまらず初芽は湊の手を止めた
「なに?あ、手伝いはいらないからゆっくりしてて」
「もう限界なんで!」
「え?」
「ほ、本当はもう一口も入らないんで‼︎」
「私も入りません!」
湊に良く見られたいがためのウソを貫けないほどキャパオーバーしているということ。変に無理しなくてもいいのに……
「分かってるよ。変な意地張るからさ」
「「すいませんでした……」」
湊は出したものを冷蔵庫にしまった
「ちゃんと謝れたことだし、俺からプレゼントをあげよう」
湊は隣の部屋から3つの袋を持ってきた
「喜んでもらえるといいんだけど」
「わぁぁ‼︎あ、開けてもいいですか?」
「うん。いいよ」
「ねえ2人とも!順番に開けない?私のから見ようよ!」
「いいですわね」
「な、なんか全員すごい高そうな箱なんですけど……」
黒に金色の文字でお店のロゴが入った箱。これだけで高いものだと伝わるほどの高級感がある
「た、確かに高そう……。湊さん。プレゼントは嬉しいですけどあまり高い物は……」
「……今回のはプレゼントもだけどさ、お礼も兼ねてるんだ」
「お礼?私達何かしましたっけ?」
「ハロウィンの後、俺を元気づけようと色々してくれただろ?正直な話、アレがなかったらまだ家で塞ぎ込んでだと思うから」
……私のせいで全員に迷惑をかけた。私からだってみんなにお礼したいけど、幽霊の私に出来ることなんてほとんどない
「そ、そういうことなら……まあ」
「にしてもアレは結局どういうことだったんでしょう?」
「さあ……なんだったんだろうな」
なんだかんだあの音声については有耶無耶なまま。由布子さんと初芽は事情を知っているからか、目が泳いでいる
「ま、まあもう終わったことですし!深く考えても結論なんて出ませんよ!」
「……そうだな。化けて出てきたとでも考えておくよ」
化けて出てきたんです。7年前からずっと
「話が逸れちゃったな。とりあえず開けてみてくれ」
「は、はい!」
まずは初芽の箱から開いた
「えっ⁉︎へっ⁉︎腕時計だ‼︎」
ピンク色の可愛らしくて装飾にもこだわりを感じるデザインの腕時計が入っていた
「初芽ってかっこいい系の腕時計はたくさん持ってるけど、可愛い系はそんなに持ってないだろ?だから1つくらいはと思ってな」
私にとって忌まわしきミサンガの反対の手に腕時計を常につけている初芽。といっても安くてデザインの気に入ったものしか買っていなかった
「嬉しいです!私もうこれ以外の腕時計つけません‼︎」
「今まで買ったやつ全部無駄になるから、他のもちゃんとつけてやってくれ……」
初芽は早速腕に巻いてみせた
「どうですか?」
「……いつも銀か黒のやつばっかり見てたから、ちょっと新鮮だな。でも似合ってるよ」
「えへへ……ありがとうございます」
腕を掲げて時計をじっくりと見る初芽。その嬉しそうな表情に姉としてこちらまで少し嬉しくなってしまった
「私の方もいいですの?」
「いいですよー」
箱を開けると、そこにはイヤリングが入っていた
「あ……これもしかして?」
「以前ショッピングモールを回った時に気にしてましたよね?だから欲しいのかなぁって」
「結構前のことですのに……本当に嬉しいですわ!」
連絡先を交換してすぐのことだったので、もう半年近く経っている。何気ない動作を見逃さず、そしてそのことをちゃんと覚えていてプレゼントとして用意する……
何年経っても私の元夫は良い男のままだ
「じゃあ最後は由布子ね」
「き、緊張します……」
「正直由布子さんのが1番悩んだな」
「確かに……わたくしでも由布子さんにあげると喜ぶものが思い浮かびませんわ」
蘭さんと湊と同様に、私も全然思い浮かばない。アニメのグッズ系なら間違いないとは思うけど……
「あ、開けていいですか?」
「どうぞどうぞ」
由布子さんは恐る恐る箱を開けた
「わっ!ね、ネックレスだ!」
中にはシンプルな銀色のネックレスが入っていた
「ネックレスとは意外なチョイスですわね」
「実は時雨さんから聞いたんだよ」
「た、担当さんからですか?」
「「欲しいものは正直分かりませんが、でもネックレス辺りは必要です」って」
「あ……そういえば買うようにとは言われてました」
「「作品のアニメ化などで挨拶に回らないといけない機会が多くなるから、少しでも身だしなみの方をビシッとしてもらいたい」と」
「……それも言われました」
由布子さんはオシャレに対して無頓着だ。外用の服は3着程度しかないし、アクセサリーに至っては湊が今くれたこのネックレスが初めての物になる
「これから入り用になるし、かといってゴチャゴチャしたやつは好きそうじゃないので、シンプルで尚且つ似合いそうなものを選んできたつもりです」
「う、嬉しいです!あ、あの……付けてもいいですか?」
「そりゃもちろん」
由布子さんは頭の上からネックレスを服を着るかのようにつけようとした
「な、何してるの⁉︎」
「つ、付けようとおもって……すいません。私の頭が大きすぎるせいで入りません……」
「初芽……これ本気でやってると思います?」
「あざとい……でも絶対ワザとじゃないって言えるのが由布子さんのすごいところね……」
この行動だけで、由布子さんが今までアクセサリー類に手を出してこなかったことが分かる
「……俺が付けてあげますから、後ろ向いてください」
「す、すいません……」
湊は手際よく由布子さんにネックレスをつけた
「に、似合いますか?」
「うん。似合ってると思う」
「やっぱり胸が大きいですわね……」
「今見るとこそこじゃないから」
着飾った由布子さんはやっぱり可愛い。ただネックレス1つ付けただけで大人の女性という印象にもガラッと変わった
「ありがとうございます湊さん。大切に使わせて頂きます」
「うん」
私としては、今日は湊とこの3人の誰かが2人きりでクリスマスを過ごして……
関係を深めて結婚までまっしぐら……が理想だった
でも、これはこれで悪くないクリスマスだった‼︎




