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クリスマスデート 蘭の場合②



「食材の準備は?」

「出来ましたわ!」

「調理器具は?」

「準備万端ですわ!」

「手は洗ったか?」

「ピカピカですわ!」

「よし!じゃあ作り始めるか!」



買い物から帰ってきた2人は早速調理に取り掛かった



「まずは野菜を細かく切る。キャベツとニラと青ネギを同じぐらいのサイズで切ってくれ」

「了解しましたわ」



蘭さんは包丁を両手に持った



「何してるんですか⁉︎」

「え?細かく切るんですわよね?なら2丁使って素早く切ったほうが早く済むってとある漫画でやってましたわ」

「それは参考にしてはいけないものだよ!」

「……冗談ですわ。さすがに」



蘭さんは左手に持った包丁を戻した



「……ちゃんと普通に切れてるな」

「居候させてもらっている身ですもの。初芽に料理の仕方は教えてもらいましたわ」



手際が良いとは言えないが、蘭さんは湊の注文通りに野菜を切り進めた



「切れましたわ」

「じゃあ全部このボウルの中にいれて、その上から塩を振ってくれ」

「どれぐらいですの?」

「少々。適当でいいよ」

「それが1番困りますのに……」



蘭さんは塩を4振りした



「次は別のボウルに鶏ガラ、酒、みりん、醤油、ニンニクと生姜を入れてください」

「これを混ぜればいいんですの?」

「そうそう。完全に混ざるまでしなくていいですよ。後で挽肉に混ぜるので」



蘭さんはスプーンで調味料同士を混ぜた



「で、もう一個ボウル出して、その中に挽肉を入れる。塩胡椒を振って今作った合わせ調味料を入れて、最後に野菜を全部入れる」

「わっ⁉︎や、野菜からすごい量のお水が出てますわよ⁉︎」

「さっき塩振って水抜きしたからな。なるべく水を切りつつ挽肉に合わせて混ぜる」

「洗い物が多く出る料理ですわね」

「確かにな。でもそれを差し引いても作りたくなる美味しさなんだよ」

「本当に餃子がお好きですのね」

「まあね」



♢ ♢ ♢



餃子の餡と呼ばれる部分が完成し、いよいよ皮に餡を詰める作業に入った



「餡を真ん中に入れて、皮の端部分に水を手につけて塗る。両側から餡を包むようにする。あとは取れないように餃子特有の型を付けて止める。これで完成だ」



中華料理店顔負けな綺麗な形をしていた



「……これでどうですの‼︎」



歪な形をしつつも、餡自体はしっかりと中に封じ込むことができている



「おお。初めてにしては上出来だよ。この調子で餡がなくなるまで作り続けるぞ」

「了解しましたわ」



お互い新たな皮を手に取り、餡を詰めた



「そういえばなぜ餃子がここまで好きですの?」



それは私も聞いたことがなかった



「……初めて餃子を食べたのがさ。高校2年生になった時なんだよ」

「結構遅めのデビューだったんですのね」

「その時に初めて作ってもらった餃子がすっごい美味くてさ。そっからハマったんだよ」



高校2年……既に私の家で暮らし始めている時期……てことは、私が湊相手に初めて振る舞った料理が餃子だった。あれがキッカケだったってこと?



「こだわるぐらいハマったんですのね」

「好きになった物には凝りたい派らしい。俺も餃子を食べてからその性に気がついたよ」

「……で、これはちゃんと美味しく作れるんですわよね?」

「不味かったら訴訟起こしてもいいぞ」

「そこまでは絶対にしないですが、それだけ自信があるということに期待しておきますわ」



食べたことのある私が断言する。訴訟されることは絶対にない。美味しすぎて文句なんて出ない



「……にしてもよかったのか?外食とかでも良かったんだぞ?」

「私は元からこの時間が取れたらこうしようと考えていたのです。私の実家はアレなので、おうちデートというものに興味があったんですわ」



確かにあの豪邸では一般的に言われるおうちデートとは全然別物になってしまう

庶民がお金持ちの暮らしに憧れを抱くように、お金持ちもまた庶民の暮らしに憧れを持つのもおかしな話じゃないと思う



「それに、初芽のお姉さんの李華さんが絶賛する餃子というものにも興味があったんですわ」

「初芽から聞いたのか?」

「ええ。本当に初芽と瓜二つですわね。年が離れてるというのが嘘に感じるぐらいに。双子にしか見えませんもの」



5つ下の妹と年が離れてるようには見えないと言われると嬉しいものがある。まあ私の方がさらに可愛いが



「昔はまあ姉妹だなぁって思うくらいだったけど、大人になるにつれて李華にすごい似てきたんだよな」

「性格も初芽と似ているんですの?」

「そうでもないよ。真逆ってわけじゃないけど、またタイプが違うかな」



好きな物。嫌いな物。趣味。色んなものが私と妹は全然違った。一緒だったものは、見た目と声。あとは好きな人だけだ



「お姉さんはどんな感じでしたの?」

「男勝りで強引。猪突猛進がモットーのような人だったよ」



湊は私のことをそんな風に感じていたのか……ちょっとショック……でもない。事実だから



「湊さんとは反対の性格してますわね」

「かもね。だからこそ引っ張ってくれる李華が好きだったんだけどな」



本当急にこんなことを言われると、顔が赤く熱くなってしまう……嫌がられていたわけではなくて良かった



「……惚気を聞くつもりはなかったんですが?」

「あ……ごめんごめん。惚気たつもりじゃなかったんだ」

「まあ許してあげますわ。それよりこの形見てくださいまし。小籠包みたいに仕上げてみたのですがどうでしょうか?」

「シュウマイにしか見えないな」

「言われてみればシュウマイに見えますわね……あ、そう指摘されたせいでそうにしか見えなくなりましたわ」



お互いにちょっと形の変えた餃子を作りつつ、どんどんと数を作っていく。会話も途切れない。悪態(ツン)も出ていない。話した量なら今日が1番だ



「よし出来たな。量が多いからテーブルにカセットコンロを置いて逐一焼きながら食べようか」

「了解ですわ。じゃあ上で待ってる2人を呼んできますわね」

「あ、やっぱり一緒に食べるためだったんだ」

「2人きりのご飯というのも魅力的ではありましたが、私は4人で食べるご飯も好きなんですわ」



蘭さんは2階に2人を呼びに上がった



ただの良い子すぎて私の蘭さんへの評価はグッと高まった

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