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クリスマスデート 由布子の場合②



2人はショッピングモールに到着した。蘭さんとデートをした時に訪れた場所と同じだ



「ここって……ゲームセンターですか?」

「そうです。入ったことありますか?」

「か、片手で数えられる程度だけ……」



モール内にあるゲームセンター。店内に流れる音楽やゲームの音などが入り混じり、うるさい所が苦手な人には縁がなさそうな場所だ



「とりあえず回ってみましょうか」

「は、はい」



店内を回る2人。すると由布子さんがふと足を止めた



「ん?これが欲しいんですか?」

「き、気になっただけです!」



UFOキャッチャーの商品に興味がある様子。中身は前の旅行の時に2人で熱く語っていた『鉄パイプは舐めるとマズい』の鉄棒 煮貝のフィギュアだ



「久しぶりにUFOキャッチャーしたいと思ってましたし、感覚取り戻す為に頑張って取ってみますね」



湊は100円を入れ、アームを動かした



「フィギュアって取るのに相当お金必要ですよね……大丈夫ですか?」

「取れました」

「早っ⁉︎」



なんと一回でフィギュアを取ってしまった湊



「荷物になるので、今は自分が持っておきますね。帰り際に渡しますから」

「も、貰っていいんですか?」

「同じものを自分の部屋に飾ってるので」



湊にフィギュア収集の趣味はない。この言葉は由布子さんにフィギュアをすんなり受け取ってもらうための嘘だ



「あ、ありがとうございます。た、大切にします」

「喜んでもらえて嬉しいです」



正直、1番不安だった由布子さんのデートだが、今のところ上手くいっている。



だったのだが、ここで不穏な声が聞こえた



「ねえ見て見てあの男の人!おしゃれで超カッコよくない⁉︎」

「……おい普通彼氏に対して他の男の話振るか?……でも確かにカッコいいな。でも女の方はインキャ臭くて釣り合ってなくね?胸はデケェけど」

「だよなー‼︎前髪が長いのも顔に自信ないんだろ!」



男2女1でゲーセンに遊びにきていた高校生らしき3人が遠巻きにバカにしている声が聞こえた



店内がいろんな音でうるさいとは言え、それなりに大きな声で喋っていた為、由布子さんの耳にもその声は届いたようで、明らかに表情が暗くなっている



このガキ達……私の能力で鉄槌を下さないといけなーー



「前髪長くしてお前達に迷惑かけたのか?」



湊が3人の前に立ち、明らかに怒りの感情が混じったドスの効いた声で言い放った



「な、なんだよお前!」

「さっきの言葉聴こえてたんだよ」

「ふ、ふん!だって事実じゃんか!」

「そ、そうよ!あんな女の人と遊んでないで私達と遊びましょうよ!あとから2人私の女友達が遊びに来るし、可愛い子達と遊べる方が貴方もいいでしょう?」



はぁーー……っと大きく溜息を吐く湊。そして後ろで見ていた由布子さんをこっちに来るように手招いた



「すいません由布子さん」

「えっ?」



湊は3人の前で由布子さんの前髪を上げた



「ひっ、ひゃぁぁぁ⁉︎」



由布子さんはてを振り解いて前髪を必死な様子で下ろした



「見て分かっただろ。可愛いから隠してもらってるんだよ。俺が頼み込んでな」

「か、かわっ⁉︎」



男2人の顔が赤くなってるのが見てわかる。アレは惚れたな



「事情も知らないで人をバカにするな。分かったか?」

「「は、はい!すいませんでした!もう迷惑かけません!」」



2人揃って素直に返事を返した。さっきまでの態度とは大違いだ。



「お2人はまだゲームセンターで遊ばれる予定ですか!」

「ん?まあその予定だけど」

「なら自分達が居ては気分を害すると思うので、自分達はゲームセンターから退散します!」

「え?いや別にそこまでする必要は……」

「「失礼しました‼︎あとお2人はお似合いのカップルだと思います‼︎」」



2人はそのまま駆け足でゲームセンターの外へと出ていった



「ちょ⁉︎どこ行くつもりなのよー⁉︎」



女の方もそれを追いかけるようにゲームセンターから出た



「……そこまでしなくて良かったのに。……さて」



湊はしゃがんでうずくまる由布子さんに声をかけた



「すいません。勝手なことして」

「わ、わざわざなんであんなこと……恥ずかしかった……」

「由布子さんの素顔を見たら何も言ってこなくなるだろうなって思って」

「い、意味がわかりません……」



私には大いに分かる。可愛い容姿を見せつけて有無を言わせないようにしたのだ



「……拗ねてる?」

「……若干拗ねてます」

「仕方ない……じゃあ今度、鉄棒煮貝の現存鉄パイプ見せてあげるから」

「えっ⁉︎」



由布子さんは音速並の速さで立ち上がり、湊に詰め寄った



「そ、そそそそれってま、まさか!先着20名だけが貰えた、先生が作品のモデルとして持っていたなぜか青白く光る鉄パイプの破片ですか⁉︎」

「しかもシリアルNo.1だから」

「い、1番⁉︎ということは武器として利用してる方の先っちょですか⁉︎」

「そうそう」



いつだったかすごい厳重な金庫を買って、その中に厳重な梱包をされた袋に入った鉄パイプを閉まっていた所を見たことがあったが、アレはそういう代物だったのか……

あの時はとうとう湊の頭がおかしくなったんだとばかり思っていた



「だから機嫌直してゲームセンターで遊ぼう?な?」

「し、仕方ありませんね。そ、そういうことならいいですよ?」



機嫌が直ったどころか逆に上がっている。作品を追っている2人からすれば、あの鉄の棒は金塊以上の価値があるのだろう



私からすればただの鉄パイプだが……

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