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恋バナ



「マズッ⁉︎見た目に反してマズッ⁉︎」



私達の実家に湊さんが住み始めて1週間。ただ居候するわけにはいかないからと、掃除と料理の手伝いをするということになっていた



洗濯は私とバカ姉、お母さんのもあるから母が全部担当することになった。そしてお父さんとお母さんに全力で反対されていたから無しになったけど、バイト代の8割を家に入れるって提案も、湊さん自身がしてた



……で、初めて湊さんの手料理を食べた時……びっくりするぐらいにマズかった。甘味。塩味。酸味。苦味。旨味。人間はこの5つの味覚を感じ取れると言われているけど、その料理は5つの味覚以外に82個ぐらい加えられてるんじゃないか?と思うぐらいに酷かった



甘いのか辛いのか苦いのか酸っぱいのか……正直どれにも当てはまらなかった。ただ言えるのはとてつもなくマズかったってことだけ



元々イケメンってところ以外印象が最悪だったけど、さらに私からの評価を悪くした



「……マズいな」



湊さんも自身の料理を酷評した。見た目が美味しそうだからタチが悪い



「えー?私は美味しいと思うけどね?」



この頃はお姉はなんでも食べれて偉いなぁって思ってたけど、今思えばただの舌バカ。多分舌に何か特別な膜が張られてるんじゃないかと思う



「……お姉ちゃんにあげる」

「えー?もうお腹いっぱいなの?」

「私はお姉ちゃんみたいになんでも食べられる人じゃないの。こんなのお腹に入れられないよ」



ましてや私からお姉ちゃんを()()()()の手料理。食べる気になんてなれなかった



湊さんが来てから1週間。私はこの1週間だけで人生の75%分ぐらいのストレスを感じていた



湊さんがお姉ちゃんと同室になってしまったせいで、甘えにいけなくなった。お風呂はまだ一緒に入れたけど、その後にお姉ちゃんの部屋でしてた綿棒での耳掃除もしてくれなくなった



一緒にアニメも見れないし、勉強だって2時間見てもらえてたのに1時間半に減ったし、夜中のトイレにはついてきてくれなくなった



今では黒歴史レベルのことだけど、あの頃の私はそんな日常を急に奪われて本当に辛かった。

ストレスのせいで2.0だった視力が1.7まで落ちた



とにかく苦痛だった……だから私は、湊さんに出て行ってもらおうと作戦を立てた



題して……お姉のことを性的に見てる大作戦!



自分のことを性的に見てると分かれば、お姉ちゃんも追い出してくれるはず



私は思い立ったらすぐ行動の精神で、早速作戦を実行した



状況の確認は大事だということで、置物型の隠しカメラを購入。痛い出費だったけど背に腹はかえられない。それをお姉ちゃんの部屋にセットした



「よし……あとは……」



お姉ちゃんのタンスから下着を取り出し、湊さんの布団の上に置いておいた



「お姉ちゃんのお気に入りのやつだし、これは修羅場になりそうね」



私は自室に戻り、隠しカメラの映像を見て待つ事にした



そしてその3分後、一階から階段の上がる音が聞こえてきた



「お姉ちゃんかな?」



だが残念なことに、上がってきたのは湊さんだった



「やば……直されちゃうかな」



湊さんは部屋に入った途端、足が止まった。どうやらお姉ちゃんの下着が目に入ったようだ



そしてそのタイミングで、また一階から階段の上がる音が聞こえる。親は家にいない。お姉ちゃんで確定だ



「来た!身動き取らないし、決定的な証拠になる!」

「ん?湊。何を立ち惚けてるの?」

「李華の下着落ちてんだよ」

「あらら。多分着替えを下に持っていった時に落としたみたいね。今直すよ。あ、それとも湊が直す?」

「バカか。早よ直してくれ」

「はーい」



………え?たったこれだけ?



お咎めなしで済むどころか、悪いのはお姉ちゃんみたいになっている



「……お姉ちゃん女捨てた?ちょっとぐらい恥じようよ……」



仕方がないから、次の作戦に移行することにした



「よし……これなら」



2つ目の作戦は寝込み襲い作戦!起きたらお姉ちゃんは服がはだけてたら、寝込みを襲われたと勘違いするはずだ



2人が就寝したのを確認した私は、こっそりとお姉ちゃんの部屋に忍び込み、パジャマのボタンを下2つ以外を外し、そしてブラの肩紐をズレ落ちさせ、ズボンも半脱ぎにしておいた



静かに自室に戻った私。あとは私も寝て早めに起きて監視を続けよう



お姉ちゃんはいつも7時にタイマーをセットしてる……一応6時半にしておこう



……3時間しか寝れないじゃん。私



湊さんが中々眠りにつかないせいでこの時間まで起きてしまった……お肌に悪影響だし、目に隈が出来て私の可愛さが0.5割損なわれる



この代償で成果を得られればいいけど……



♢ ♢ ♢



……6時半。タイマーがこんなにもうるさく聞こえたのは初めてだった



「……アダマいだい」



寝不足で目が重い。目やにのせいで目が開かない……頭がグルグルするし、心なしかお肌の調子も悪い気がする……



「お姉ちゃんは……まだ起きてないか」



はだけた服もそのまま。あとは起きるのを待つだけだ



♢ ♢ ♢



「眠い……」



頭をカクンとなり、その度にハッ!となる現象に陥っている。余裕を持ちすぎた……10分前とかにしとけばよかった



そして7時を迎え、お姉ちゃんの部屋のタイマーが鳴った



「……うる……さいよぉ?……あぁぁぁうんにゅ………」



謎の声を上げながらもなんとか身体をむくりと起こすお姉ちゃん。対して湊さんはまだ目を閉じたままだった



「……あ、はだけてる。暑かったからかな?」



お姉ちゃんはパジャマを着直した



「え……それ……だけ……?」



私はここで眠気に勝てず、そのまま二度寝した



♢ ♢ ♢



「私の皆勤賞がぁ……」



あの後、お母さんが私を起こしに来てくれたらしいが、目覚めない私を見て珍しく思ったらしく「たまにはいっか」と学校にお休みの連絡を入れたらしい



目覚めたら11時。絶望で3度寝をして現在14時だ



「この恨み……絶対晴らしてやる!」



私はそう決意して3度目のーー「ちょっと待ったー‼︎」



♢ ♢ ♢



「その話……あと何分するの?」

「まだ10分の1とかだよ?」

「話纏めろって言ったわよね⁉︎由布子さん見てみ⁉︎のぼせてるから!」

「だ、大丈夫で……すぅ〜」



由布子さんはダウンしてしまった



「由布子さん!そこにある椅子で少し休憩いたしましょう!」

「あ、ありがとうございます……」



蘭さんは由布子さんを介護しながら、椅子で身体を涼ませた



「あれ初芽だったんだ」

「そうだよ。気がつかなかったでしょ?」

「てっきり私と同室なせいで処理出来ない湊が手に付けたとばかり……」

「バカね。出すなら若くてピチピチだった私のにしてるわ」

「あの時は私高校生だから十分ピチピチだわ!むしろ全盛期!」

「全盛期って……」

「……ていうか、わざと話長くして誤魔化したでしょ?」

「まあね」

「ズルい女め。お姉ちゃん将来が心配だわ」

「大丈夫。私の将来は湊さんに支えてもらえてるはずだから」

「あらら。それはそれは……まあ頑張りなよ」

「……もう十分頑張ったんだけどなぁ」



そう呟くと、初芽は薄らと涙ぐんでいた……

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