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ハロウィンに向けて



途切れた言葉の続きがパソコンのモニター画面で書かれ始めた



何もしていないのに、カチャカチャとキーボードの音が鳴る。ちゃんと押し込まれて文字が打たれている



改めて李華さんはここにいるんだ。そう実感させられる



そしてやっぱり……何もないようにしか見えないから少し怖い



そんなことを考えていると、キーボードの音が消えた。触れられる能力の時間制限が来たんだと思う

その時点から、私は設定しておいた5分のアラームを起動した。そして私はモニターの文章を読んだ



「数日後のハロウィンは開けておいてほしい。湊もその日は休みで家にいるはずだから」



ハロウィン……ハロウィンか……



特別思い出もないイベント。お菓子を貰いに行ったこともないし、イタズラしたこともない。仮装もしたことないし、当日にカボチャを食べたこともない



「どうにかして湊と過ごすこと!他の子達に差をつけるには、こういうイベント事はしっかりしておかないと!」



差をつける……初芽さんは言わずもがなだけど、カラオケで会った蘭さんもすごく可愛い人だった。あの2人が湊さんを狙ってる……



こんな取り柄のない私より、他の2人の方が湊さんには魅力的に写ってるはず……

李華さんの言う通り、ちょっとでも湊さんと過ごす時間が増えれば、こんな私でもチャンスはあるのかな……



「……当日はお菓子数点と、手料理少量。あとは……か、過激なこ、コスプレ衣装⁉︎」



予想外の言葉に私は驚きの声をあげてしまった



「湊から襲ってくることは期待出来ないとは思うけど、際どいコスプレで湊を誘惑すること……む、無理ですよぉ‼︎」



私が内気な性格じゃなくても、これは実施出来ないよぉ……



私は少し落ち着くために、コーヒーを入れた

いつもはホットにしているけど、少し熱を持った顔を冷ます為にアイスで飲んだ



そして飲み終わったとほぼ同時に、携帯のアラームが鳴った



「ダメだよ由布子ちゃん‼︎どんどん積極的に仕掛けていかないと‼︎」



クールタイムを終えた李華さんの声が聞こえてきた



「せ、積極的にならないといけないのは分かりますけど……他に方法はーー」

「ない‼︎」

「ないんですか⁉︎」



断言されてしまった……



「湊は草食なの‼︎昔はライオンより肉食だったけど、今は草食なの‼︎だからその由布子さんのいやらしい身体で誘惑しないと‼︎」

「い、いやらしい身体⁉︎」



その前になんかすごいこと聞いちゃった気がしたけど、時間制限がある為、深く散策するのはやめた



「そう‼︎その胸!お尻!くびれ!うなじ!太もも!つむじ!全部いやらしいよ‼︎」

「つ、つむじまで⁉︎」



私はつむじまでいやらしい女だったんだ……



「私のオススメコスはバーー」



また途中で声が途切れてしまった



そしてまた、キーボードのカタカタ音が鳴り始めた



「オススメコスはバニーコス⁉︎」



バニーコスって、あの黒のレオタードに網タイツのアレ⁉︎



「む、無理です!恥ずかしいです!」



さっきとは比べ物にならない速さとキーの押す強さで文字を打つ李華さん



「む、無理じゃない?いや!無理ですって!そもそもそんな格好をして、湊さんに淫乱だって思われたらどうするんですか⁉︎」



私の問いかけに、李華さんは悩んだのか、返答に少しの間が空いて、キーボードを打ち始めた



「笑えば……いいと思うよ」



文の最後にはニコちゃんマークの絵文字が添えられた



「……笑いじゃ済まなくなっちゃうんですよ‼︎手遅れになっちゃいますよ‼︎」



返事がない。まだ少しタイムリミットまで猶予があると思うけど、おそらく返す言葉が見つからないんだと思う



私はまたタイマーを押して5分後に備えた



「この5分間考えたんだよね……淫乱と思われても良くね?って」

「良くないですよ⁉︎」



クールタイムが終わっていきなり李華さんはとんでもないことを言い出した



「でも良く考えてみて?7年間、誰とも付き合ったことがなかったんだよ?きっと性欲が溜まってるけど、草食の湊は誰かを相手として誘うことが出来なかった……じゃあ由布子さんが淫乱として襲えば万事解決するじゃん?」

「全くしませんけど⁉︎」



さっきの悲鳴と同等ぐらいの声で叫んでしまった



「ただでさえそんなに印象良くないのに、そんなことしたら、私への印象は底まで落ちちゃいます!」

「別に印象悪くないと思うけど……むしろ良い方だと思うよ?」

「どこがですか⁉︎私、無意識に湊さんの家押しかけてご飯をご馳走になったりしたんですよ⁉︎」

「あー。私のせいのやつね」

「……え?」

「あーいや!なんでもないから気にしないで!」



慌てふためく李華さん。今の言葉はどういう意味だろう?



「とりあえず、さっき私がバニーコスの注文しておいたから」

「はい⁉︎」



またも声を荒げてしまった。というより荒げる案件だった



「何勝手なことしてくれてるんですか⁉︎」

「大丈夫!リーズナブルなの選んだから」

「そういう話じゃなくて‼︎」



私はパソコンで注文されたバニーコスの注文をキャンセルした



「あー‼︎」

「あー‼︎じゃないですよ!」



教えてもらえてなかったら、知らないうちにバニーコスが配達されるところだった……



「うぅ……お願いだよぉ……当日はコスプレしてよぉ」



なぜそこまで頑なに私にコスプレさせたがるのか……



「……コスプレして本当に効果あるんですか?」

「ある!男は普段見ることのない衣装を着られるとドキッとするものなの‼︎ましてや普段着として着ないコスプレなんて特に‼︎」

「そ、そうなんですね……」



私の中で葛藤がある。コスプレなんて、私には恥ずかしすぎて出来ない。でもすれば湊さんとの距離は縮まる可能性がある……



羞恥と恋心がせめぎ合っていた



「……まだ時間があるので、検討だけはしておきます」



といっても注文するなら、配送日までも考慮しないといけないから、1週間あるかないかぐらいで決めないといけない



「ありがとう!……ですか」



返答はパソコンで返ってきた



とりあえず採寸だけはしておこう……

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