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予想に反して



私が桑名に怒鳴り散らかしてから1週間。私の予想に反して、桑名はスッパリと湊に絡むことをやめた



「……意外だったなぁ」

「そうですか?あれだけ脅してたんですから、当然だと思いますけど」



相手は幽霊で、こちらに実害を与えられることが分かっている。その上で殺害予告。並の人間なら辞めて当然だ



……なんだけども。普通じゃないから恐れていた。悪い意味で怖い物知らずだから



たまに偵察しに行くが、相変わらずたまに出掛けてはナンパして撃沈しての日々を過ごす桑名。不穏な行動を見せる様子もない



「一安心……でいいのかな?」

「いいんじゃないですか?もしこれで手を出したりしたら、見えないものからずーっと怯えながら過ごさないといけなくなるんですから」

「そう……よね」



私はとりあえずこの事態で悩むことはやめることにした。もし湊の身に何かあれば、私が咄嗟に身体を乗っ取るなり、触る能力で妨害や酔わせる能力を使えばいい



「さてと、それじゃあやりますか」

「やりますかって……何をですか?」

「ん?決まってるじゃーん!」



1週間と少しもあんな男に消費したせいで、もう10月も真ん中辺りまできてしまった。クリスマスまで時間がない。今のままでは、初芽が湊の家に無理矢理押しかけて一緒に過ごすという毎年恒例の景色がまた広がってしまう



その前にハロウィンもある……こっちは重要視してないけど、仲を深めるのにはうってつけではある



とりあえず当面はハロウィンに向けて動くことに決めた



♢ ♢ ♢



というわけで私はとある場所へとやってきた。といっても移動時間はたった5秒。壁一枚すり抜けるだけで到着する場所だ



私はベッドで可愛い寝息をたてながら、ぐっすりと眠る由布子さんの顔をじーっと見ていた



「可愛えぇ……この子絶対、前世は天使やで?」

「なぜ急に関西弁……まあ可愛いのは間違いありませんけど」



私に負けず劣らずの美少女。顔を覆う髪がなければ間違いなく芸能界からオファーが殺到するレベルだ



「ずっと眺められる……」

「……それで?何するんですか?」

「ん?ああ。由布子さんに用件はあるんだけどー。さすがに寝てるところを無理矢理起こして話す内容じゃないから、起きるまではこのままステイかなー」

「もう12時回るんですが……」



もう陽は真上にある。ただ、窓のシャッターを閉めているので、部屋はほぼ真っ暗。私の能力で光らせないと見えないぐらいには暗い



そんな環境と、徹夜での執筆作業。由布子さんがこの時間まで目を覚まさないのも無理はない



「まあいいじゃん。どうせこの時間はやることないんだから」

「それはそうですが……」



湊は家でずっと本を読んでいる。訪問者もいない。居ても宅配業者ぐらいだ



「あと2時間はこの寝顔眺めていたいしー」

「はぁ……仕方ないですね。私はちょっと出かけてきますね」

「いつものところ?」

「まあ……はい」

「そっか。気をつけてねー」

「……」



そのまま樹里はどこかへと向かった



「……いつか話してくれる時がくるのかな?」



未だに樹里はなぜ幽霊になって、どこに行って何をしているのかは分からない



もし私の能力が必要になった時、樹里は頼ってくれるのだろうか?それとも……



「なんて……こればっかりは考えても仕方ないか」



頼ってくれるのなら……私はちゃんと力になりたいと思う



「さてと……目を覚ました時用に、準備しておきますか」



♢ ♢ ♢



「……んっ?うむぅ……」



暗い……今は……何時だろ?



寝起きで回転の遅い脳を使って、私は充電器に繋いだ携帯の電源を入れた



「……14時。いつもよりは早起き……」



私はまだ眠気の取れていない身体を起こして、洗面台へと向かった



♢ ♢ ♢



顔を洗って目を覚ます。そして鏡を見る。寝癖で横に髪が跳ねている



「……いっか。出かける用事もないし」



人と会う予定もないから、わざわざ髪を整えるのも億劫だ



そして起きた時に絶対にするモーニングコーヒーを飲むため、キッチンへと向かう。……モーニングじゃなくてアフタヌーンだけど



「……あれ?」



私はリビングに置いてある、パソコンに目を向けた



「おかしいな……電源切り忘れちゃってたかな?」



なぜかメッセージアプリを開いた状態でモニターが付いていた



「こんなアプリ入れたっけ……」

「私が入れたんだー」

「あひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」



突然どこからか聞こえてきた女性の声に、思わず変な声をあげてしまった



「り、李華さんですか⁉︎」

「ごめんねー。脅かさないように話しかけたいんだけど、どう頑張っても不意をつく形でしか話しかけられないから許してね」



やはり声の主は李華さんだった。その他の人だったら逆に怖い……



「ど、どうしたんですか?」

「ちょっと用件があってねー。時間制限が来るまでは声で話して、制限迎えたら、このメッセージアプリの方に続き書き込んでいくから!で、また制限迎えたら5分後に話しかけるからよろしくー」

「わ、わかりました」



私はパソコンの前へ座り、携帯で5分後にアラームが鳴るように設定した



「おお……用意がいいね!」

「あ、ありがとうございます」



久しぶりに褒められた気がする



「さて、じゃあ早速本題から言わせてもらうね」

「はい」

「今日聞いてもらうのは、ハローー」



……声がプツンとそこで途切れた。タイムリミットになっちゃったのかな?

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