多分GかH
「どうしたの?早く脱いだら?」
私が恥ずかしがってモジモジしているのに対して、初芽さんは全く抵抗がないように服を脱いでいく
「湊さんが言ってたでしょ?早くしないと風邪ひくって」
「わ、私は後でいいので初芽さんから……」
「はぁ……ちょっと後ろ向きなさい」
「へっ?」
「いいから早く」
「は、はい……」
服の裾を掴まれ、上に引っ張り上げて、そのまま綺麗に脱がされてしまった
「ひゃぁぁぁぁ⁉︎」
「はいそのまま下も脱がすよ」
「わ、分かりましたから!下は自分で脱ぎますから!」
は、恥ずかしすぎる……家族以外に裸なんて見られたことなかったのに……
でももう抵抗は出来ない。無理矢理脱がされちゃうし。このまま大人しくお風呂に入ろう……
「お、お待たせしました」
初芽さんの視線が私の顔よりやや低めの位置に向いてる
「……大きいわね」
「そ、そんなことは……」
「私も結構大きい方だけど、一回りぐらい小さく見えるもん……ねえ。何カップなの?」
「わ、わからないです……測らないので」
「じゃあ1番直近に測ったやつでいいから」
「ちょ、直近でですか?」
いつだろう?私は胸の大きさ測ったりしないから……あ、でも大学で一回測ったことがあった気がする。理由は忘れちゃったけど
「た、確か2年前にFでした」
「F……私でEあるし、このサイズ差で1つ分しか離れてないなんてことないだろうから多分GかH辺りかな……」
初芽さんに、舐められるようにじーっと胸を観察されている
「あ、あの……恥ずかしいんであまり見ないでもらっても……」
「あぁごめん。早く入ろって言っといて私が時間使っちゃって。私が先に洗うから、由布子さん先に浸かってていいよ」
「は、はい」
お湯の張られた浴槽に身体を浸からせた。お風呂に入った時のポカポカした状態は、夏でも全然嫌じゃない。気持ち良くてつい「ふぅ」と息を吐いてしまうほどだ
「ねえ」
「は、はい!」
初芽さんは髪を洗いながら、私に話しかけてきた
「由布子さんっていつから隣に住んでるの?」
「え、えっと……高校3年生の途中で引っ越してきたのでもうすぐ6年ですね」
「高3で引っ越し⁉︎それ学校通えてたの?」
「い、いえ。高校は退学になっちゃって……」
「な、何したの?」
「出席日数足りなくて……」
高校は行った回数よりも休んだ回数の方が2倍ぐらい多いと思う
「理由聞いていい?」
「……作家としての活動が忙しくて」
「作家してるんだ!すごいじゃん!」
「そ、そうでもないですよ」
ほ、褒められた。すごい嬉しい……
「なんて作品書いてるの?」
「は、恥ずかしいのであんまり教えたくないです」
自分の作品を見られるのは嬉しいけど、知ってる人に作品を知られるのは恥ずかしい。これって私だけの感性なのかな?
「えーっ。気になるのに……」
「ご、ごめんなさい」
「まあいいけど。私終わったから交代ね」
サラサラな髪を括りながら、浴槽に足をつける初芽さん
「湊さんの家のお湯って熱いんだよねー。そう思わない?」
「わ、私はいつもこれぐらいの温度なので」
「マジ?……湊さんはもう入ったし、私的にちょっと下げたいから水足していい?」
「は、はい」
「ありがとー」
初芽さんと入れ替わりで、私はバスチェアに座った
髪をしっかり濡らして、シャンプーを手につけて頭を洗った
「由布子さん」
「はい?」
「それボディーソープだよ」
「ええっ⁉︎」
そんなはずは……前に入った時と同じボトルから出したはずだけど……
「ウソウソ。合ってるよ」
「な、なんでそんなウソを……」
「からかいたかったのと、迷わずにシャンプー使ってたから」
「……あっ!」
湊さんの家では、赤色のボトルと青色のボトルと黒のボトルの3種類があり、そこに詰め替え用のシャンプーやボディーソープ、コンディショナーが入っている
教えてもらわないと何が入っているのか分からない。この前お泊まりさせてもらった時に聞いたから、私は迷うことなく使ってた
「まあお泊まりしてたんだもんね。3日も」
「そ、そうですね……」
やっぱり根に持たれてた……でも仕方ないよね。自分の好きな人が他の異性の人を泊めたなんて知ったら、私でも不安になる
……まあ私じゃ何も起こりはしないんだけど。湊さんも全く私に女性としての興味なんてないだろうし……
心の中で大きな溜息が出た
「別に責めてないからね!ただ湊さんがここまで1人の女の人と親密になるっていうのは今までなかったから」
「えっ……そ、そうなんですか?」
「意外だと思ったでしょ?あの顔で優しいんだもん。モテモテだよ。でも決まったライン以上に仲良くなったりしない。連絡先だって私の家族全員分と仕事の人しか入ってないらしいし」
意外だけど、話を聞いて理解出来た。
湊さんはまだ李華さんのことを忘れられないから、距離を取ってるんだ
「……私には教えてもらえそうですか?」
「さぁ?由布子さんと湊さんがどれぐらい親密か知らないし」
湊さんと付き合いたいと考えてるなら、連絡先を持ってないのは論外だと思う
断られたら脈なし。数日どころか数年寝込むレベルだけど、怖がってちゃ何も始まらない!李華さんの期待に応えるためにも!
「が、頑張って聞き出します!」
「そ、そう。頑張ってね」
(意外なんだよねぇ。前に会った時の印象は控えめで弱気な性格だと思ってたんだけど。ここぞと言うときは肝が座ってるというか)
「でもその前に、私と連絡先交換しとこっか?」
「は、初芽さんとですか⁉︎」
「嫌?」
「い、嫌じゃないです!こ、交換させてください!」
♢ ♢ ♢
「これでよし。交換ありがとね」
「こ、こちらこそありがとうございます。実は私も湊さんと同じで家族と仕事相手の人の連絡先しか知らなかったので、これが初めてのと、友達って言っていいんですかね?」
「そりゃ友達でいいでしょ。てか由布子さんも交友関係は縛るタイプだったんだ」
「いえ……あの……私は単純に友達がいないだけです……」
「あっ……ご、ごめん……」
心にグサリと深い傷が……それよりも私のせいで暗い雰囲気になってしまったのが申し訳ない
「み、湊さんにれ、連絡先教えてもらえるか聞いてきますね!」
「う、うん!が、頑張って!」
携帯を忘れずに持ってリビングに戻った
「み、湊さん!」
湊さんはキッチンでコーヒー豆を挽いていた
「あ、由布子さんもお風呂上がりにコーヒー一杯どうですか?」
「い、頂きます」
「ミルクと砂糖はいります?」
「あ、ミルクだけお願いします」
「分かりました。もう少しだけ時間かかるので座って待っててください」
「は、はい」
湊さんの指示通りに座って待つことにしーー
「って違うんです!その前にお話があるんです!」
ちゃだめだった。危うく流されるところだった
「れ、連絡先をお、教えてもらえませんか⁉︎」
「いいですよ」
「へっ⁉︎」
「どうしました?」
「な、なんでもないです!」
あっさりokが出たから変な反応しちゃった……
「これで交換出来ましたね」
連絡先の欄に湊さんの名前が追加される日が来るなんて……引っ越してきてすぐの頃からは考えられなかったなぁ
「あ、あの……初芽さんから、あまり人と連絡先を交換しないって聞いたんですけど」
「そうですよ。でも由布子さんとはお隣で仲良くさせてもらってますから」
仲良くしてもらってるのはこっちの方なのに……
「また美容室にいらっしゃったりする時は連絡下さい。空いてる時間とか教えられると思うので」
「は、はい。その時はよろしくお願いします」
李華さん。私は湊さんにとって、少しでも特別な人間になれてると思いますか……?




