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ショッピングデート



晴天広がる青空。雲一つないおかげで、夏に入りかけの今、少し暑さを帯びていた



そんな日の朝、公園で誰かを待っているのかずっとソワソワ、キョロキョロと誰かを探す美少女がいた



そして、そんな美少女の元に超イケメンがやってきた



「すいません!お待たせしました」

「……遅い!私を待たせるとは良いご身分ね!」



確かに()は待たせてはいたが、今は約束の時間の15分前。ちゃんと先に着いているので遅くはない

ただ単に、待ち合わせの2時間前から待っている()さんが早すぎるだけだ



「ごめんなさい」

「ま、まあいいわ!早く行くわよ!」



湊を先導して先を歩く蘭さん。顔を見ると、もう既に少し泣きそうな顔をしていた



「「だからなんでこんな高圧的になるの……私のバカバカ‼︎」って思ってるんだろうなぁ」



このデートで改善出来れば尚いいのだが……



「そういえばどこに行くんですか?」

「ついてきなさい。すぐ着くから」



♢ ♢ ♢



数分歩いたところで、蘭さんの目的地に到着した



「ここよ」

「ショッピングモールですか」



市内にあるショッピングモール店にやってきた2人。市内では最大規模の大きさを誇っていた



「貴方には、私の買い物に付き合ってほしいの。主に、撮影で使うような服を見たいの」

「撮影で使うような……ですか。そういうのって相手側が用意してくれるものじゃないんですか?」

「用意してもらえるわ。でも、何着も着替えて撮影するから、1つや2つぐらいは、自分の好きな衣装で撮影してもらってるの」

「……その服を見るのに俺は必要ですかね?」

「貴方には美容師からの観点で見てほしいの。私とは違う視点で見てくれると期待してるのよ」

「……なるほど」



なんて口上を述べてはいるが、ただ単に買い物デートに行きたかっただけ。私は蘭さんが、撮影で自分の服なんて全く着たりすることはないことを知っている



「こういう素直じゃないところも可愛いよなぁ」



……それが湊にとっては面倒な人だと捉えられたら終わりなんだけどね



「さてと……」



蘭さんは店に入る直前、カバンからマスクとサングラスを取り出して装備した



「身バレ防止用ですか?」

「そうよ。私はテレビには出ないけど、SNSでは結構有名だから。バレると面倒なのよ」



それでなくともこれだけの可愛さなら、ナンパに遭うことは多いだろう。()()()()()顔が良すぎるのも困りものだ



「とりあえず入るわよ。まずは一階から回るわ」



2人はショッピングモールの中へと入った



♢ ♢ ♢



「はぁ……はぁ……う、迂闊だった……」



なぜかショッピングモール内でお疲れなご様子の蘭さん。今はフードコートの机でぐったりとしながら休憩していた

そしてその理由は湊にあった



入ってまだ最初の店舗に入るまでに、女性からのナンパ……いわゆる逆ナンと言うものに、湊が何回も遭っていた



そして、蘭さんが疲れている理由が、毎回逆ナンしてきた相手が「隣の顔を隠さないといけないようなブスより私の方がいい」との言葉のせいだ



顔を隠しているとはいえ、ブス呼ばわりされることが気に食わない蘭さんは、マスクとサングラスを外して「これでブスなら、貴方の顔はどう形容するの?」と、罵っていた

本来は清楚の蘭さんだが、バカにされた時と湊相手の時は高圧的になるようだ



まあ顔を見せれば相手は黙り込むか、その場を去るか。そして蘭さんのことを知っている人ははしゃぎ出すわで、店に入れていないのに30分は経過してしまった



「だ、大丈夫ですか?」

「誰のせいで……こうなってると……でもまあそうよね。貴方はカッコーー」

「かっこ?」

「な、なんでもないわよ‼︎それより貴方もこれをつけなさい!」



蘭さんは自分のカバンからマスクを取り出した



「ないよりマシになるでしょうから、つけておきなさい」

「あ、ありがとうございます」

「全く……いつもあんな騒ぎになるの?」

「滅多に外出しないので、分からないです」

「……そう」



食べ物系の買い物は大体近くの小さなスーパーに。日用品系は全てネット通販利用の湊

私が死んでからショッピングモールに行ってるところは見たことがない。根っからのインドアタイプだ



「はい休憩終了!お店に行くわよ!」

「は、はい」



湊は蘭さんに連れられ、お店へと歩き出した



♢ ♢ ♢



「コンセプトは、夏の浜辺よ」

「夏の浜辺ですか……」



お店に到着した2人は早速服を物色していた

撮影のコンセプトは夏の浜辺。誰でも想像しやすそうなお題だ



「今の服とかちょうど良さそうですけど」



蘭さんの着ている白のワンピースは、確かに浜辺にいる女性っぽさはあった



「これはありきたりだし、これも候補の一つだもの。別のパターンを考えてほしいの」

「なるほど……ちょっと考えますね」



少しの時間店をぐるっと回り、思考を回す湊。そして自身の頭の中のコーデが出来たようだ



「環凪さんは、露出はどの程度までOKを出されてますか?」

「なに?水着でも着させるの?」

「さすがに違いますよ」

「……お腹出すとか、谷間は出したくない。腕とか脚はいいけど」

「背中はダメですか?」

「背中?背中は……腰辺りまでなら」

「ならこれにしましょうか」



湊は背中が大きく開いた白のTシャツとデニムのズボンを持ってきた



「また白なの?」

「海に白は映えると思います。少し水色っぽいのでも良いとは思いますが、ここには置いてなかったので。あとは何か帽子を被るといいですね」

「ふーん……でも確かに良さげね。私もこの服で砂浜を歩いている想像がついたわ。この服に合わせるのなら……麦わら帽子かしら」



湊の選んだ服は好印象だったようだ



「じゃあこれを買ってくるわね。店の外で待っててくれるかしら?

「はい。待ってますね」



湊は店の外の手すりに腰掛けて、蘭さんのお会計を待つことになった



「今のところは結構良いデート出来てるじゃん!」



蘭さんの態度は変わらないし、トラブルもあった。

でも今のところは成功と言っていい出来だと思う

このまま私の手を借りずに、2人の仲が進展すればいいのだが……



「……あれ?」



現実はそう上手くいかないみたいだ



蘭さんが入っている店の反対側のお店に、友達と3人でワイワイと話しながら服を選ぶ初芽の姿があった



「初芽だ……この場面見られたらマズイな……」



別に初芽と付き合ってるわけじゃないから、浮気現場を見られたような修羅場にはならないだろう

ただ間違いなく拗れるのは目に見えてる。あの子はメラメラと燃える火だ。わざわざ油を注ぎたくない

幸いにもまだこちらに気づいていない



「ここは私の出番ね!」



私は初芽に湊の存在がバレないように、行動を開始した

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